今回は、医療現場の見えない部分を、可視化技術を通して支援することを研究されている、岩手県立大学の土井章男教授にインタビューいたしました。
「Volume Extractor 3.0」は、研究開発中の「人工関節術前計画支援システム」のベースとなるソフトです。これは、医用画像のほか、工業用CT、数値計算一般の可視化に使われています。複数のスライス(2次元)画像を読込み、3次元のボリューム画像として表示し、スライス画像では見え難かった骨や血管、内臓等の形状を分かり易く表示することができます。
今まで、お医者さんは、たくさんのスライス画像を並べて見ることで、頭の中で3次元的な構造をイメージしていましたが、それには経験と勘が必要で、経験の浅いお医者さんや技師には難しいものでした。こういった部分を3次元でちゃんと可視化することによって、誰でも同じように正確な認識ができるようになりました。
私が代表をしている 株式会社 アイプランツ・システムズ(i-Plants Systems) で、昨年(平成19年10月)から販売をはじめました。誰にでも簡単に使えるソフトを目指していて、価格もかなり抑えています。バージョンアップを重ね、完成度もかなり高くなってきて、使い易くなりました。あとは、もう少し売れれば良いですが(笑)。
コマーシャルしないとやっぱり売れませんね。Real INTAGE (リアルインテージ) のようなパワーや機能、パフォーマンスがあれば、強気で販売したいところですが・・・
このソフトは、どういうふうにインプラントを配置するかという配置の支援をし、その配置情報のレポートを出します。そのレポートを見ることで、骨を切る角度とか骨切り線とかがわかるようになっていて、手術計画に役立てることができます。
特に、骨軸の自動抽出機能(特許出願中)は、独自の機能で、医師の負担を軽減します。現状、お医者さんは、レントゲン写真の紙面上に分度器を置き、鉛筆を使って作図するんですね。この方法では、データとして蓄積されません。それをコンピュータ上でやることで、作図の時間が短縮できるだけでなく、保存して、後から有効利用できます。
人工関節の支援システムは、イスラエルとか、カナダで製品化が進んでいますね。でも、全部まだ2Dです。日本でも、有名なインプラントメーカーさんが何社かあって、自分たちでシステムを開発して、お客様に提供するビジネスをされていますが、3次元で配置できるソフトは完成していません。3次元の方が、正確で使い勝手も良いし、サポートにも役立つというと思うのですが、まだまだ3次元的な配置作業はソフトウエアの上でも手間がかかります。そのため、臨床医の先生は、面倒な操作が必要ならば鉛筆での作図で充分だよという話になりがちですね。
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