スキャニング・ステレオPIVによる軸対称噴流の三次元速度計測
筑波大学大学院 システム情報工学研究科
構造エネルギー工学専攻 榊原潤 様

PIV(粒子画像流速測定法)は、流体の瞬時速度場の計測法として広く用いられている。最も普及している二次元二成分PIVに加えて、近年では速度三成分の二次元分布を計測可能なステレオPIVも製品化されている。著者らは、このステレオPIVをさらに発展させたスキャニング・ステレオPIVシステムを構築し、軸対称噴流における速度三成分を三次元的に計測することに成功した(文献 [1])。ここでは、それにより得られたデータのAVSによる可視化結果を紹介する。


図1 計測システム

計測システムを図1に示す。計測対象の軸対称噴流は、直径約400mmの八角形アクリル製水槽の下部に備えられた直径D=5mmのノズルから水を噴出することで形成される。ノズル出口速度とDに基づくレイノルズ数はRe=1000である。高繰り返しのNd:YLFレーザー(Coherent, Evolution 30)から発せられた光ビームは、シリンドリカルレンズによって紙面垂直方向にシート状に広げられたのち、光学スキャナ(GSI Lumonics、VM2000)によって水槽内を走査される。水槽の水にはトレーサ粒子が懸濁されており、レーザーシート内の粒子の前方散乱を二台の高速度C-MOSカメラ(フォトロン、FastCam MAX)によってステレオ撮影する。測定領域(約100x100x100 mm3)の中心は噴流ノズル出口下流45Dに位置する。これにより、測定領域内における50断面の速度分布を約0.2秒で計測した。


図2 速度ベクトル分布

図2は軸対称噴流の速度ベクトルの三次元分布である。速度ベクトルは領域内全体積に渡って計測されているが、直交する2断面のみを表示してある。ベクトルの色は速度ベクトルの大きさに対応している。領域中心付近の高速領域(赤い部分)が噴流コア部分に相当する。この速度ベクトル分布から渦度ベクトルを求め、その絶対値の等値面および渦線を図3および図4に示す。


図3 渦度絶対値の等値面

図3において、噴流外縁部において斜め下方に垂れ下がるような形をなしたヘアピン状の渦(図中赤線)がいくつも観察される。軸対称噴流におけるヘアピン渦は2次元3成分ステレオPIVによる計測結果からも報告されている(文献 [2])。ヘアピン渦は図4に示す渦線分布においてさらに明瞭に観察される。多くの箇所において渦線がヘアピン状にループを描き、噴流中心付近に接続している。


図4 渦線
参考文献:
[1] Toshio Hori, Jun Sakakibara, 2004, High speed scanning stereoscopic PIV for 3D vorticity measurement in liquids, Measurement Science and Technology, Vol.15, No.6, pp.1067-1078.
[2] Tadashi Matsuda, Jun Sakakibara, 2005, "On the vortical structure in a round jet", Physics of Fluids, Vol.17, No.2.