「ノンフォトと可視化」について 〜活用の幅を広げよう!〜
東京農工大学大学院 共生科学技術研究院先端生物システム学部門 斉藤 隆文 教授

今回は、ノンフォトを中心とした可視化について、東京農工大学の斎藤教授、宮村先生、古谷先生にインタビューいたしました。


東京農工大学大学院 共生科学技術研究院先端生物システム学部門 斉藤 隆文 教授(左)
東京農工大学大学院 共生科学技術研究院先端生物システム学部門 宮村 浩子 助教(右)

斉藤先生から研究室全体のお話を伺いました

この研究室では、コンピュータグラフィックスを中心に可視化技術、映像処理、形状処理など画像に関係のある研究をしています。CGの新しい利用形態を開拓して分野を広げたり、今までCGを使っていなかった領域にも使っていただけるよう、いろいろなこと試しています。

まずは、非写実的画像生成(ノンフォト)のお話をしましょう。これは、リアルにそのものを伝えるのではなく、ビジュアルな情報の特徴を誇張したり、いらないところを省略して情報を分かり易く伝えるために使えます。例えば、今Webでいろんな情報を掲示するのは簡単ですが、顔画像などは個人情報なので出しづらい、という時に写真を加工して絵画調やイラスト調にすることで、そのバリアを弱める事ができます。チャットに付けたり、携帯で撮った写真をイラストとして送ることもできるしょう。TV会議でも、必ずしもリアルな画像は必要ないので、ある程度個人識別ができて表情が伝われるのなら、少し情報を落としてやった方が恥ずかしさもなくなるかもしれません。


斉藤先生のオリジナルプログラムで作った顔画像を写真から作成したもの。
名刺にも印刷しているそうです。

顔画像認識は、結構カメラにも組み込まれていますけど、われわれは完全な画像としての取り扱いで、認識を一切使ってないものですから、例えば横顔になったり、半分隠れちゃったりしても問題ないです。光源の状況が悪くても一応それなりに見えるというのが一つのメリットです。

次に、動画像からの情報抽出について、稲の発芽の例をお話しましょう。試験管の中に種を蒔き、発芽して1〜2週間くらいの成長過程を約10分間隔で撮影した場合、何千枚もの画像になります。そこで1枚の画像で成長の概要を捉えてみました(図1)。

ここでは時空間画像処理でXYTの3次元情報として扱います(図2)。縦が高さ(Y)、横が時間軸(T)として投影し、その成長をグラフのようにみせるものです。普通、葉っぱや根の先端を認識して、それらの追跡処理をしますが、ノイズがある場合見失うこががあります。しかし、我々の方法は認識処理を一切使わず、結果画像を人間が見て認識します。これにより、どのタイミングでどういう成長過程をとっているかが一目瞭然です。


(図1)

(図2)

参考文献:
宮村(中村) 浩子,七夕 高也,斎藤 隆文,篠村 知子:「時系列画像解析によるイネの根の成長特性の解析と可視化」,画像電子学会誌,Vol.36,No.4,pp.520-529,2007年4月

古谷先生から監視カメラの例を紹介していただきました

監視カメラで1秒間に1枚撮影すると、1日あたりのデータ量は膨大になります。それを全部チェックするのは時間もかかり難しいので、これらを集約画像で見られるようにしました。

まず、1時間単位に集約して見ると朝6時台に人が通ったことが確認できます。(図1)
更に10分単位の階層をみると、50分台に人が歩いていることが確認できます。(図3)
更に詳細をみると、ちょうど6時50分に警備員さんが歩いていることが分かります。(図4)
動画の頭から見ると数万コマ目に当たる情報を、この方法ではわずか7クリック位で確認できます。


(研究協力:東京農工大学総合情報メディアセンター)

ここでも、システムで不審者を認識するのではなく、認識は人間がやる、そのためのツールを提供するという考え方です。「集約画像」というのは我々が付けた名前で、このように監視カメラに応用して階層的にそれを管理することで検索を容易にするというような事はオリジナルになると思います。