コンクリート中を伝搬する超音波の可視化
愛媛大学大学院理工学研究科 准教授 中畑和之

社会インフラ等の大型構造物の多くはコンクリートが使われており、近年ではトンネル内部でコンクリートが剥落するという事故が起こっています。インフラを安全に使用するために、超音波による非破壊検査は重要なメンテナンス技術の一つです。検査の信頼性を高めるためにも、超音波の伝搬挙動をあらかじめ把握しておくことは重要です。 ここでは、波動方程式を数値的に解くことによって波動場を計算し、これを MicroAVS で可視化した例を紹介します。
コンクリートはセメント、骨材、気泡等を含む非均質材料であり、コンクリート中を伝搬する超音波を数値計算するのは、これまで膨大な計算コストがかかっていました。しかしながら、パラレルコンピューティングの普及、大容量メモリの実装により、以前に比べて平易に計算することが可能となりました。解析では、コンクリート断面の写真をスキャンし、これを画像処理した後、数値解析にインプットすることにより、実際のコンクリート片の超音波の伝搬過程をシミュレーションしています。

中心周波数0.2MHzのパルスを送信した場合のコンクリート中の超音波伝搬の可視化

コンクリート片の上部に超音波探触子を置き、SH波モードで内部に超音波を送信した場合の可視化結果を示しています。超音波が通過すると、骨材同士の多重反射によって散乱波があちこちで発生し、この散乱波が次第に拡散していく様子がわかります。この散乱減衰と材料による散逸効果(今回の解析中では散逸は考慮していません)の相乗作用によって、実際の超音波はコンクリート中で強い減衰を示すものと予想されます。また、骨材のランダムな分布によって超音波の波面が局所的に崩れていくのがわかります。


コンクリート中を伝搬する超音波の可視化 (クリックで動画再生)

※本結果は東京工業大学大学院情報理工学研究科 廣瀬壮一教授、木本和志助教との共同研究によって得られたものです。

参照:構造工学研究室のホームページ
http://www.cee.ehime-u.ac.jp/shoukai/kouzou.html