ソリューション
光通信ソリューション
光通信の新時代を支えるCAE活用法
光通信業界のトレンド

光通信とは、電気信号を光信号に変換し、光ファイバーなどの媒体で伝送する通信方式です。光ファイバーは電気のケーブルに比べて信号の減衰が小さく、一度に送れる情報量が非常に大きいため、インターネットの基幹回線や長距離通信のバックボーンで広く利用されています。
近年ではデータセンター内部やコンピュータ間の接続にも光通信技術が応用され、通信インフラの高速化・大容量化を支える重要な技術となっています。
光通信業界の最新トレンドと技術進化
高精細動画配信やVRに加え、AIが牽引するデータトラフィックは、ハイパースケールデータセンターやクラウドを中心に爆発的に増加しています。その一方で電力消費も比例して膨らみ、従来型データセンターでは、帯域拡張を限られた電力枠内で調整するか、巨額のインフラ改修を強いられるという課題が顕在化しています。メトロ・長距離・アクセスの各層でも帯域拡張に向けた新方式が提案から実装へ移行し、ネットワーク設計が更新局面にあります。
こうした事情を背景に、光通信は一斉に転換点を迎えています(Beyond 5G、IOWNの取り組みも参照)。データセンター内では800Gbpsの大量展開と1.6Tbps世代への移行が進み、電力と発熱を抑える“低消費電力インターコネクト”として、シリコンフォトニクスやスイッチASICと光を近接統合するCPO(Co-Packaged Optics)・光電融合が次世代の光通信技術として注目されています。

デバイスの小型化・高速化を支えるシリコンフォトニクス
光通信の中で軸となる技術がシリコンフォトニクスです。光通信の中核的な機能を1つのチップに集積することで、通信の高速化のほか、デバイスの小型化も支えています。回路には主に以下の機能を集約しています。
- レーザー(光源):光を発生させる素子で、チップに光を供給します。
- 光導波路:光を損失なく運ぶ部分で、電子回路における配線に相当します。
- 変調器:光の強度や位相を制御してデジタル情報を乗せる素子で、電気信号を光信号に変換します。
- 波長フィルタ:特定の波長だけを選び出す機能。データ通信で複数波長を使う場合に不可欠です。
- 光検出器:フォトディテクタによって光信号を再び電気信号に変換する部分。光の受信側で必須の機能です。
- ファイバ結合器:光ファイバーとPIC(Photonic Integrated Circuit)チップ上の導波路をつなぐ部品で、光ファイバーから送電された光をチップ内に取り込み、チップ内で処理した光をファイバーに戻す役割を担います。
シリコンフォトニクスは、次世代のAI データセンターネットワークを支える技術として注目されています。
主要デバイス・光トランシーバの機能と、応用形のデジタルコヒーレント光トランシーバ
光通信技術の中でも特に主要なデバイスが光トランシーバです。光トランシーバは、コンピュータの中を流れる「電気の信号」を「光の信号」に変えて光ファイバへ送り出し、逆に戻ってきた光信号を電気に戻す装置です。送信側ではチップから来た電気信号をドライバ回路で整えて、レーザ光の強さや位相を変える変調器に渡します。ここで情報が刻まれた光がコネクタから光ファイバへ出ていきます。受信側では、ファイバから入ってきた微弱な光をフォトダイオードで電気信号に変え、増幅器(TIA)で増幅・整形された後、コンピュータのメインのチップの受信口に入力されます。
中でも、デジタルコヒーレント光トランシーバは、位相情報や分散補償がDSPで処理できるため、光ファイバにおける色分散や波形歪みの影響を受けにくく、長距離通信が可能なデバイスです。以下のようなメリットがあります。
- 高いスペクトル効率(伝送容量が大きい)
- 偏波多重・位相多重
- イコライザ、位相リカバリ、リタイマー、FEC(誤り訂正)など、柔軟で高機能な処理が可能
- DWDMと組み合わせて超大容量化可能
- DSP技術の進化に伴い、400Gbps、800Gbps、1.6Tbpsへと拡張可能
下図はデジタルコヒーレント光トランシーバの基本構成を示したもので、左側が送信(トランスミッター)、右側が受信(レシーバー)の図解です。
送信側では、DSPで処理された電気信号をDACを通してアナログ信号に変換し、光変調器によって光の位相や振幅に情報を載せて光ファイバに出力します。 一方、受信側では光ファイバから入ってきた微弱な光信号を局部発振器(LO)の光と干渉させて復調し、フォトダイオードで電気信号に変換した後、ADCとDSPで補正・復号して元のデータとして出力します。

送信(トランスミッター)部分

受信(レシーバー)部分
※素子構成に応じて適宜必要なツールを選択する必要があり、以下は一例です。
| 種別 | 構成要素 | 主な機能 | 対応するANSYSツール |
| 電子回路(信号処理・インタフェース) | DSP(Tx、Rx) | 信号変調 / 復調 / 等化 / CD補償 | ✕ ANSYS非対応 |
| DAC / ADC | デジタル⇔アナログ変換 | ✕(一部熱設計ならIcepak) | |
| ドライバ回路 / TIA | 光変調器の駆動 / 信号の電圧増幅 | ✔ Icepak(熱)、HFSS(パッケージのSI/EM) | |
| アクティブ光デバイス | 光変調器 | 電気信号→光信号変換 | ✔ Lumerical(FEEM/MODE/CHARGE/MQW)、HFSS |
| Laser | CW光の供給 | ✔ Lumerical(FEEM/MODE/CHARGE/MQW) | |
| フォトダイオード(PD) | 光電変換 | ✔ Lumerical(FEEM/MODE/CHARGE/MQW)、HFSS | |
| パッシブ光デバイス | PBRS(Polarization Rotator splitter) | 偏波回転分離素子 | ✔ Lumerical(FDTD) |
| PBS(偏波ビームスプリッタ) | 偏波の分離 | ✔ Lumerical(FDTD/MODE/VarFDTD) | |
| 90°ハイブリッド | IQ信号の干渉混合 | ✔ Lumerical(FDTD/MODE/VarFDTD) | |
| その他(グレーティングカプラなど) | 光結合など | ✔ Lumerical(FDTD/MODE/VarFDTD)、Zemax | |
| システム | 光集積回路全体解析 | PIC全体のシステム挙動 | ✔ Lumerical(INTERCONNECT) |
高速化・小型化の限界と「光電融合」への展開
コンピュータ同士がやり取りするデータ量が急増するなか、電子回路そのものは高性能化しても、チップの外と内をつなぐ“出入口(I/O)”の面積と電力損失がボトルネックになりつつあります。
そこで注目されているのが光電融合です。これは光で信号を運ぶシリコンフォトニクスを電子回路のすぐそばに配置し、同じパッケージの中に組み込む技術です。導波路・変調器・受光器・レーザといった光部品をチップ上にまとめて作ることができるため、小型・大量生産に向き、必要な電力を大きく抑えつつ帯域を広げられる利点があり、今後のAIデータセンターネットワークを支える次世代の光通信技術として注目されています。
光電融合技術は、例えば以下のような業界でメリットがあると考えられています。

光通信機器の設計で直面する主な技術課題
これからの光通信デバイスや光電融合機器の設計においては、以下のような課題が挙げられます。
1.小型化・高集積化に伴う設計の複雑化
単位体積あたりのデータ通信量を増やすために、機器や基板の小型化・高密度実装が求められています。その結果、内部に組み込まれる光デバイスもナノ・マイクロメートルサイズへと微細化しますが、そうした微細構造内での光の振る舞いは直感的な予測が難しいのが実情です。さらに多数の微細デバイスを高密度に集積すると、機器全体やシステムレベルでの性能予測は一層困難となり、設計の難易度を押し上げています。
2.多数の設計パラメータと動作条件への対応
光通信機器の性能には、波長、コア径、温度、材料特性、電気駆動条件など非常に多くのパラメータが影響を及ぼします。各パラメータは相互に影響し合うため、一つひとつを試行錯誤で調整していては最適解を見つけるのに膨大な時間がかかります。また、異なる動作条件(例えば温度変化や入力光強度の変動)でも性能を維持する必要があり、その検証にも手間がかかります。従来の経験則やプロトタイプ試作に頼った開発手法では、パラメータ空間を網羅的に探索することが難しく、開発サイクルの長期化につながることが課題です。
3.マルチフィジックス(多物理)な現象の考慮
光通信・光電融合デバイスの動作には純粋な光学現象だけでなく、電気的な効果や半導体中のキャリア動作、さらには発熱や熱膨張などの熱的影響も無視できません。例えば高速光変調器では、電圧印加による屈折率変化(電気光学効果)やデバイスのジュール熱による特性変化などが同時に発生します。このように複数の物理現象が複雑に絡み合うため、単一分野の解析のみでは正確な設計が困難です。光・電気・熱といったマルチフィジックス現象を統合的に考慮できる解析環境を整えない限り、設計の精度向上は頭打ちになってしまいます。

Ansysによる解析・設計アプローチとソリューション紹介
このような課題を効率よく克服するためには、シミュレーション技術(CAE)の活用が不可欠です。
サイバネットシステムでは、フォトニクス解析ツールAnsys Lumericalを中心とした光通信向けソリューションを提供しており、これらを活用することで光通信デバイス・機器の設計プロセスを大幅に効率化できます。
Ansys Lumericalは、ナノ・マイクロスケールの微細構造内での光の振る舞いを高精度に解析できるほか、光デバイスと電子回路の連成解析や、個々のデバイスモデルを組み込んだシステムレベルのシミュレーションも可能です。さらに、これら光学系ツールとAnsysの他の電磁界解析(高周波電磁界、回路シミュレータ等)や最適設計プラットフォーム(OptiSLangなど)を連携させることで、光と電気が融合した複雑な課題にも対応できる包括的な解析環境を構築できます。
光通信に関わる無料オンデマンドセミナー動画のご紹介
ここでは過去に開催したウェビナーのオンデマンド動画をご紹介します。すべて無料で視聴可能ですので、ご興味のある方は是非ご活用ください。
光通信業界におけるCAE活用最新事例① ~パッシブデバイス解析とAIアプローチで工数大幅削減~

こちらの第1回では、光通信業界の最新トレンドや設計上の課題の概説に加え、シリコンフォトニクスの光回路解析や光ファイバ・導波路のモード解析、グレーティングカプラの結合効率解析などパッシブデバイス解析の事例、さらにY分岐導波路を題材としたAI活用による高度最適化事例をご紹介しています。
光通信業界におけるCAE活用最新事例② ~マルチフィジックス/システム解析で創る次世代光通信~

高速光通信デバイス設計のための光電連成シミュレーション

Pythonスクリプトを用いた自動化・最適化により、複数ツール間のデータやパラメータの整合性を保ちつつ、設計検証プロセスの高速化と利便性の向上を実現します。
技術支援・導入サポート体制
ご安心ください。光通信・光電融合への挑戦は、私たちが伴走します。
これまで光通信や光電融合の領域に関わってこなかった設計者・技術者の方にとって、新しい分野への挑戦は大きな一歩です。
「専門知識が足りない」「ツールを導入しても使いこなせるか不安」「環境を立ち上げる時間や人手がない」――そんなお悩みを抱えるお客様はたくさんいらっしゃいます。
サイバネットは、そのような不安を解消するために、単なるCAEツールの販売にとどまらず、環境構築から運用定着までワンパッケージでサポートが可能です。

- 環境立ち上げ支援
お客様の業務フローや製品分野に合わせた解析環境をゼロから設計・構築。
初期設定やライセンス管理、ツール間の連携設定までお任せください。 - 技術トレーニングと伴走支援
光学・電気・熱など複合分野にまたがる解析手法を、
段階的なトレーニングと実務に直結した課題解決型のサポートで習得いただけます。 - 継続的な活用サポート
導入後も、解析精度向上のためのアドバイスや、最新バージョンでの機能活用支援を継続。
サポートセンターでの問い合わせ対応も充実しております。
新しい分野への挑戦に必要なのは、一歩を踏み出す決断と、それを支えるパートナーです。
光通信・光電融合分野でのCAE活用は、サイバネットにお任せください。
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また、一部製品では無償トライアル版のご用意がございます。その他当社サービスについてはサービスページよりご確認ください。
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