解析事例
粘弾性数値材料試験
代表的な高分子系複合材料である、樹脂を繊維束で織ったクロス材で強化したモデルを想定して粘弾性数値材料試験を行いました。
クロス材の粘弾性試験を行なうことが最終的な目的ですが、クロス材を構成する縦糸と横糸(ストランド)は、モノフィラメントが一方向に配向したミクロ構造を持っているため、等方性の特性に置き換えることはできません。( 参考イメージ図:CAEのあるものづくり(Vol.6 2007)図8 )
解析モデル
数値材料試験
縦糸と横糸の繊維束のミクロモデルに対して、事前に線形均質化解析を実行しておき、ここで得られた物性値をクロス材のモデルに適用し、粘弾性数値材料試験を行いました。正確にはこれらの繊維束にも樹脂が含浸されているため、異方性の粘弾性特性が表れるはずですが、クロス材のマクロ応答を評価する上では、クロス材を構成するマトリクスの粘弾性特性の影響が支配的であると想定して線形材料に置き換えました(図1参照)。
ミクロモデルを構成する材料は、マトリクスとしてエポキシ樹脂、フィラメントとしてカーボン繊維を使用しました。クロス材のエポキシ樹脂にはプローニ級数で表現された応力緩和特性が定義されています。WLF式で表現されたシフト関数を定義することで温度依存性も考慮しております。

図1 数値材料試験モデルの概要
解析結果
応力緩和試験
Multiscale.Simで行った応力緩和試験の結果を図2に示しました。
6方向の数値材料試験に対して、それぞれ300Kと350Kの二つの温度環境下で行った結果を示しています。このようにMultiscale.Simでは、ミクロスケールの幾何学的な形状と、各領域の物性値を既知量として与えることで、実材料試験を行うことなく、理想的な環境下における材料挙動を予測することができます。

今後のバージョンアップで、これらの応力緩和試験のデータから異方性粘弾性の材料物性値を同定し、マクロモデルへと展開するための機能が追加される予定です。
※この事例では、Ansysに加えて以下のライセンスが必要です。
マルチスケール解析ツール Multiscale.Sim®
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