EMC対策ってどうするの? ~現場で使えるノウハウと考え方~
ノイズ対策用の磁性体部品(コア)ってどう使う?
はじめに
第2回目は、「ノイズ対策用の磁性体部品(コア)ってどう使う?」です。
EMC試験でノイズが規格を超えてしまったとき、設計者が頼るのが磁気部品(コア)。
ケーブルに通すだけでノイズが減る…そんな便利な部品だけど、原理や種類を知らずに使うと、効果を十分発揮できません。
今回はノイズを抑制してくれるコアについて考えていきます。
ノイズ抑制用のコアってどんなもの?
ノイズ抑制コアがノイズを除去できる原理としては2つあります。
1. 高インピーダンスによる電流制限
ノイズ抑制コアに導線を通し電流を流すとその周辺に磁束が発生します。透磁率が高いフェライトは磁束を閉じ込めるため導線とコアがインダクタのように機能します。
これにより周波数が高くなるほどインピーダンスが上昇し、高周波ノイズ電流が通りにくくなります。
2. 磁気損失によるエネルギー吸収
電流が流れるとコア内部で磁束が変動し、その一部が磁気損失として熱に変換されることで、外部へのノイズ漏洩が低減されます。
コアの種類ってどんなものがあるの?
ノイズ抑制用のコアは主にフェライト材やナノクリスタル材等で構成されており、下記の表に各材質の詳細を、図に対応周波数範囲のイメージを示します。
表 1 ノイズ抑制用で使用されるコア
| 材質 | 特長 | 用途 | |
| アモルファスコア | Fe系アモルファス合金 | 高透磁率・中損失 | インバータ、車載機器、通信機器などの高周波ノイズ対策 |
| フェライトコア | Mn-Zn、Ni-Znなど | 広帯域対応・低損失・安価 | USB、HDMI、電源ケーブルなど |
| ナノクリスタルコア | Fe系ナノ結晶合金 | 高透磁率・高飽和磁束密度・低損失・広帯域対応 | 車載機器、産業機器など高性能が求められる場面 |

図1 材料ごとの対応周波数範囲
設計者が考慮するべき点は?
コアを効果的に使うには、ケーブルをコアに1回巻くよりも、2回、3回と巻いた方がノイズ除去効果を高めることができます。これは、巻数が増えることで磁束の変動が大きくなり、インピーダンスが増加するためです。
インピーダンスと巻数の関係は下記のように表されます。
●インダクタンスによるインピーダンス
Z=jωL
- Z:インピーダンス(Ω)
- j:虚数単位
- ω:角周波数(ω=2πf)
- L:インダクタンス(H)
●インダクタンスとターン数の関係
L=AL×N2
- AL:コアのインダクタンス係数(H/turn²)
- N :巻数(ターン数)
この式からわかるように、理想的には巻数が2倍になるとインダクタンスは4倍、インピーダンスも4倍になります。
ただし注意しなければならないのは巻数を増やすと浮遊容量が増えてしまい、インダクタンスとキャパシタンスが並列に見えるため高周波数範囲ではインピーダンスが低下します。インピーダンスが確保できない範囲ではノイズ抑制効果を十分に発揮できません。下図に浮遊容量の発生イメージとインピーダンスの周波数特性を示します。

図2 浮遊容量のイメージ

図3 巻数とインピーダンスのイメージ
結論
設計段階からノイズ対策を意識し、コアの特性を理解しておくことで、試験通過率の向上や設計変更のリスク低減につなげていきましょう!
EMCのことならサイバネットにお任せください
サイバネットは、お客様のEMCに関するお悩みをトータルで解決いたします。
「なにから始めればよいかわからない」
そんなときこそ、まずはサイバネットに相談してみませんか?
ご相談・お見積りは無料です。
関連記事
関連情報
関連する解析事例
MORE関連する資料ダウンロード
MORE-
非線形解析の壁を突破するシミュレーション技術
~Ansys LS-DYNAで解決!最大荷重評価のボトルネック~
-
事例でご紹介!流体解析分野のエンジニアリングサービス ~解析業務の委託・立ち上げ支援・カスタマイズによる効率化など~
-
はんだ濡れ上がり形状予測解析
~Ansys LS-DYNAで電子機器の信頼性向上に貢献~
-
Ansys ユーザーのための PyAnsys 完全ガイド
Pythonで加速するCAEワークフロー
-
共振回避だけで終わらせない実レベルの振動解析
~Ansys Mechanicalで実現する高度な製品開発~
-
吸入器内の粒子挙動を可視化する
~薬剤送達効率向上に向けた解析~
-
医薬品バイアルの温度挙動解析
~保管環境の影響把握と品質維持に向けた可視化アプローチ~
-
そのFDTD計算、もっと速くできる!Lumerical+GPUでフォトニクス解析に革命を

