CYBERNET

解析事例

電磁界解析

電子銃内部の空間電荷効果の評価

Ansys Charge Plusを用いた電子銃内の電子温度、電子密度を可視化

電子銃内部の空間電荷効果の評価の概要

こんな方におすすめ

  • 電子銃や電子ビーム装置の設計・評価に携わる方
  • 電子の放出現象やビーム挙動の可視化・解析を行いたい方
  • 真空デバイス、加速器などの分野に関わる方

解析概要

本解析では、電子銃内部の真空領域を対象に、電子を放出し空間電荷効果の影響を評価しております。フィラメントからの熱電子放出に対し、ウェーネルトおよびレンズ電極に電圧を印加し、電子の加速挙動を再現しています。解析では、電子温度の時間変化や空間分布、電子密度の分布を可視化し、放出電子に伴う空間電荷の形成とその影響を定量的に評価しております。これにより、電子の加速状態やビームの収束性、空間電荷の安定性を把握することが可能です。

使用ソフトウェア

Ansys Charge Plus

背景/課題

電子銃の性能は、放出電流の制御とそれに伴う空間電荷効果の影響を正確に把握することが重要です。放出電流が増加すると、電子間の反発により電場分布が歪み、電子の加速挙動に影響を及ぼします。このとき、電子温度や電子密度の分布も変化し、ビームの収束性や安定性に直結します。特に高電流密度条件では、空間電荷による局所的な密度上昇や温度上昇が発生し、設計通りのビーム特性が得られない場合があります。

 

したがって、放出電流の変化に伴う電子温度や電子密度の空間的・時間的な分布を把握し、それらの相互関係を通じてビーム特性への影響を評価することが、最適な電子銃設計に求められます。

解析対象および解析手法

解析対象

本解析では、下記の電子銃内部の真空領域を対象に解析しております。

図1 解析モデル

解析条件

真空のモデルに対し電極電圧と電子放出条件を設定します。
電極電圧:各部位に対し以下の値を設定

 

  • フィラメント    :−500 V
  • ウェーネルト    :−550 V
  • レンズ         :−450 V

図2 印可電圧

図3 電子放出設定

放出条件:フィラメントに対し以下を設定
 
  • 仕事関数 :4eV
  • 温度 :2500K

解析結果

図4は、電子銃内で放出された電子の温度が時間とともにどのように変化するかを示しています。シミュレーションの結果、電子温度は初期の変動を経て、時間の経過とともに約300eVで安定していることが確認されました。この収束傾向は、電子が加速電場によって一定の運動エネルギーを獲得し、系全体が定常状態に達していることがわかります。温度の時間的安定性は、電子の加速挙動が安定していることを示しております。

図4 電子温度の時系列データ

図5は、電子温度の空間分布を示しており、電子銃中心部に高温領域が形成されていることが確認されます。これは、電子が電極間の電位差によって効率的に加速され、運動エネルギーが軸方向に集中していることを示しています。温度分布は軸対称であり、加速領域が空間的に安定していることがわかります。また、周辺部に比べて中心部の温度が高いことから、ビームが軸方向に収束している様子が確認できます。

図5 電子銃内の電子温度

図6は、電子密度の空間分布を示しており、電子が電子銃の中心軸に沿って高密度に分布していることが確認されます。これは、放出された電子が軸方向に収束し、ビームが直進性を保ちながら形成されていることを示しています。また、密度の偏りや局所的な過密領域が見られないことから、空間電荷効果が適切に制御されており、電子の分布が安定していることがわかります。

図6 電子銃内の電子密度

本解析の効果

本解析により、電子放出と空間電荷効果の関係を定量的に評価できました。これにより、電極配置や電圧印加条件の最適化に活用でき、設計段階での信頼性向上に寄与します。例えば、フィラメント電圧を変更した場合のプラズマ温度の収束挙動や、ウェーネルト電極の形状変更による電子密度分布の変化を事前にシミュレーションすることで、ビーム品質を維持しながら放出電流を最大化する設計検証が可能です。このような形で、加速器や電子ビーム装置の性能向上に直接貢献することができます。

関連する解析事例

MORE

関連する資料ダウンロード

MORE

関連する解析講座・辞典

MORE

Ansys、ならびにANSYS, Inc. のすべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、ロゴ、標語は、米国およびその他の国におけるANSYS, Inc. またはその子会社の商標または登録商標です。その他すべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、または商標は、それぞれの所有者に帰属します。本ウェブサイトに記載されているシステム名、製品名等には、必ずしも商標表示((R)、TM)を付記していません。 CFX is a trademark of Sony Corporation in Japan. ICEM CFD is a trademark used by Ansys under license. LS-DYNA is a registered trademark of Livermore Software Technology Corporation. nCode is a trademark of HBM nCode.