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繊維配向解析に基づく材料の異方性を考慮した非線形構造解析事例

こんな方におすすめ

  • 繊維強化プラスチック製品の設計にシミュレーションを活用したい
  • 繊維配向に依存する非線形物性を考慮することで構造解析の精度を向上したい

背景と目的

繊維強化プラスチック(FRP)は、一般的に金属材料より比強度が大きく、金属材料の代替材料として注目されています。近年では自動車部品、電子機器部品、スポーツ用品など様々な分野で使用されています。

 

FRPは繊維の配向状態によって材料物性に異方性が生じます。そのため、FRPの変形や応力などを高精度にシミュレーションする場合には、繊維配向状態に依存する異方性物性の考慮が必要です。

 

弊社ではこれまでに、PlanetsⅩとAnsysを連携することで、繊維配向に依存する異方性物性を考慮した構造解析に取り組んできました。

 

繊維配向を原因とする異方性物性を考慮したそり解析|CAE・Ansysの活用推進、解析に関するご相談なら:サイバネット

 

しかしながら、上記事例は線形材料(弾性体)のみが対象です。非線形材料(弾塑性・クリープなど)の異方性物性を考慮する場合には、Multiscale.Simを使用して材料試験のシミュレーション(数値材料試験)を実施し、非線形の異方性物性を同定することが考えられます。

 

本事例では、FRP製の電子機器カバーが外力によって塑性変形することを想定し、繊維配向に依存する異方性物性を考慮した弾塑性解析を実施します。PlanetsⅩで計算した繊維配向状態と、Multiscale.Simで同定した弾塑性物性を、Ansysの構造解析に引き継ぎます。

PlanetsX・Multiscale.Sim・Ansysの連携

PlanetsX・Multiscale.Sim・Ansysの連携フローは以下の通りです。

 

  1. PlanetsXによって樹脂流動解析を実施し、繊維配向状態を予測
  2. Multiscale.Simによって数値材料試験を実施し、代表的な繊維配向状態の非線形材料物性を同定
  3. Ansys DesignXplorer によって、2.で同定した物性をもとに応答曲面を作成(様々な繊維配向状態の物性を評価するため)
  4. Ansys Mechanicalによって、1.で計算した繊維配向情報と、3.で同定した非線形異方性物性をマッピングし、構造解析を実施

PlanesX・Multiscale.Sim・Ansysの連携フロー

なお、PlanetsXとの連携において、Multiscale.Simで同定が可能な非線形物性は、弾塑性、クリープ、粘弾性の3種類です。

解析対象

解析対象とする電子機器カバーを以下に示します。ここでは、ゲート位置を2通り用意し、ゲート位置がカバーの変形におよぼす影響を検討します。

電子機器カバーの形状

解析手順

PlanetsXにおける樹脂流動解析の結果

PlanetsXで樹脂流動解析を実施し、繊維配向状態を予測します。
メルトフロントの到達時刻を以下に示します。ゲート位置によって流動パターンが異なることが見て取れます。

メルトフロント到達時刻

また、繊維配向分布を以下に示します。ゲート案①では繊維が放射状に配向しているのに対して、ゲート案②では繊維が横方向に配向しています。この繊維配向分布を構造解析へ引き継ぎます。

繊維配向分布

Multiscale.Simにおける数値材料試験の結果

Multiscale.Simで数値材料試験を行い、繊維配向に依存する非線形材料物性を同定します。ここでは、繊維配向が異なるミクロモデルを数パターン作成し、各モデルに対して数値材料試験(引張方向3成分、せん断方向3成分)を実施します。

(左)短繊維ミクロモデルの例 (右)引張方向の数値材料試験

数値材料試験の結果から、Ansys DesignXplorerによって各パラメータ(ヤング率、降伏応力など)の応答曲面を取得します。

以上の手順で同定された物性を構造解析へ引き継ぎます。

繊維配向に依存する各物性値の応答曲面

材料物性値のマッピング(非線形構造解析)

繊維配向分布と応答曲面をもとに材料物性をマッピングします。例として、降伏応力のマッピング結果を以下に示します。

降伏応力のマッピング

解析条件

荷重条件と固定条件を設定し、弾塑性解析を実施します。ここでは、表面の一部に対して荷重を設定します。また、裏面のボスは他の部品を締結することを想定して、固定条件を設定します。

荷重条件(左)と固定条件(右)

非線形構造解析の結果

相当塑性ひずみの結果を以下に示します。どちらのゲート案も、裏面のボス付近で相当塑性ひずみが大きくなっていることが確認できます。また、2つのゲート案同士を比較すると、ゲート案②の方が、相当塑性ひずみが大きくなっています。

 

結果の詳細につきましては、ダウンロード資料でご確認いただくことが可能です。

相当塑性ひずみ

まとめ

FRP製の電子機器カバーを対象として、繊維配向に依存する異方性物性を考慮した弾塑性解析を行いました。PlanetsXで繊維配向分布を予測、Multiscale.Simで異方性の弾塑性物性を同定し、構造解析に引き継ぎました。2つのゲート案で解析を実施し、塑性ひずみの結果を比較しました。

ライセンス構成

本解析を実施するのに必要なライセンスは以下の通りです。

 

  • Ansys Mechanical Enterprise
  • Ansys Discovery Pro
  • Multiscale.Sim 非線形版
  • PlanetsX 基幹プログラム
  • PlanetsX 繊維配向解析オプション

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