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EMC対策ってどうするの? ~現場で使えるノウハウと考え方~

Yコンデンサのばらつきを考える

EMC対策ってどうするの? ―現場で使えるノウハウと考え方― :第1回

はじめに

第1回目は、「Yコンデンサのばらつきを考える」です。
EMCのエミッション試験って、毎回同じように作ったはずなのに結果がバラつくこと、ありませんか?
「なんで?」って思うこと、技術者なら一度はあるはず。
実はその原因、Yコンデンサが関係しているかもしれません。  
Yコンデンサとはノイズを筐体などグランドに逃がすための部品ですが、容量のちょっとした違いでノイズの流れ方が変わっちゃうんです。しかも、同じ型番でもロットが違うと微妙に特性が違うことも。
だから、試験結果にばらつきが出るのは、ある意味当然とも言えるかもしれません。
今回はYコンデンサのばらつきに関して考えていきます。

そもそもYコンデンサってなに?

Yコンデンサは製品が発生するコモンモードノイズを製品内部で吸収するために使用するコンデンサです。
高周波数でインピーダンスが低くなる特長を利用し、十分低いインピーダンスでノイズをグランドに流しやすくします。
結線の構造がYの形に似ているためYコンデンサと呼ばれております。
また、コモンモードノイズとはノイズ源から伝送線路に対して同相で出力され、浮遊容量などを介してノイズ源に戻るノイズです。
コモンモードノイズのイメージを下記画像に示します。
このコモンモードノイズは経路の長さが長くなるほど放射ノイズが強くなります。
ノイズ源から近い位置 にYコンデンサを配置することで、下図のようにノイズを筐体に逃がし、製品内で吸収することでノイズ経路の長さを短くします。
また、コンデンサなので寄生成分(ESL、ESR)により自己共振が発生し 、共振周波数を境にインピーダンスが増加していきます。筐体内でノイズを吸収するためにもインピーダンスは製品外に接続される線路のインピーダンスより十分小さいことが重要です。
したがって、Yコンデンサを使用する場合は、抑制したい周波数を インピーダンスの低い共振周波数付近でそろえて使用すると効果的です。
Yコンデンサのインピーダンスが高い範囲では、筐体グランドに逃がしにくくなり、製品の外側にノイズが漏れるため対策の効果を十分に発揮できなくなります。
使用上の注意点としては、配置する部分の寄生成分を無視できない場合があります。
蛇足ですが、高い電圧が印可される場所に配置する場合は絶縁性能や漏洩電流を考慮する必要があります 。

Yコンデンサのばらつきは?

コンデンサの自己共振ですが静電容量に許容差があるため自己共振周波数が変動します。
共振周波数の変動によってノイズの減衰量についてもばらつきが生じます。
例えば100MHzのノイズを低減させるために、以下のような特性のコンデンサを検討しましょう。
今回は許容差が比較的大きめのコンデンサで考えています。

  • 容量:2.2nF±20%
  • ESL: 0.6nH
  • ESR:100mΩ

このコンデンサの場合、許容差の最小値、公称値、最大値で下記のようなインピーダンス特性を持ち、抑制したい周波数のインピーダンスも異なってきます。

100MHzの公称値と最小値でインピーダンスを比較してみると1.47倍(0.53/0.36)で、dB換算すると約3dBとなり、なかなか無視することが難しいです。

結論

今回検討したようにYコンデンサを配置 してもコンデンサの許容差が大きいと無視できないようなばらつきがあることがわかりました。
ノイズレベルが変動すると、ぎりぎり判定基準を満足する設計では規格に不適合になる場合があります。
今回はYコンデンサを例に素子特性のばらつきを検討しましたが、そのほかのEMC対策部品でもばらつきを持っています。
最初は大変だと思いますがEMCに影響がある項目を抽出してばらつきを考慮し、設計品質を高めていきましょう!

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