製品
Ansys 2024 R1リリース情報
Ansys 2024 R1のハイライト
AIソリューション
Ansys AI+™アドオンにより、AI対応のソリューションが拡大
構造解析
Mechanicalの構造製品における2024 R1アップデート
2024 R1では、Ansysソフトウェアのルック&フィールが再定義され、すべてのAnsysアプリケーションを使った解析業務の生産性が向上しました。例えば、GUIには視認性を重視した「ライト」と、長時間利用時の目の疲れを軽減する「ダーク」の2つのテーマが新たに追加され、従来の「クラシック」を含む3つのテーマから選択することができます。
MechanicalはWorkbenchを介さずに単独で起動できるようになりました。これにより、複雑な解析にはWorkbenchを通し、単一モデル解析にはMechanicalを単独で開くといった柔軟な使い方が可能になりました。メッシング機能も強化され、共有トポロジーを持つボディのメッシュコピーにおいて、節点共有の許容範囲を設定できるようになり、より高品質なメッシュが作成できるようになりました。破壊解析においては、いくつかの初期亀裂形状を作成する機能が新たに追加されました。ボディの複数面を跨るコーナー亀裂や貫通亀裂などの複雑な亀裂をより簡単に作成できるようになりました。
さらに構造最適化解析は、周波数応答解析と部分構造法に対応するようになりました。これまでモーダル解析による評価に留まっていた振動問題に対して強制振動状態の考慮が可能となり、より実稼働に近い条件を考慮した構造最適化が可能となりました。近年は、対象モデルの複雑化により計算コストが増大する傾向にありますが、部分構造法に対応したことで計算コストの削減も期待できます。さらに直接法ソルバーの機能強化により、極めて大規模なモデルを複数コアを用いて解析したケースにおいて、短時間で計算が完了できることが確認され、強化された直接法ソルバーの計算速度とロバスト性が実証されました。
Ansys Sound – Analysis & Specification (SAS) がMechanical Enterpriseライセンスで使用可能に
今回のリリースではAnsys Sound ProがAnsys Mechanical Enterpriseライセンスに含まれるようになり、Ansys Mechanical Enterprise をお持ちのお客様はAnsys Sound – Analysis & Specification(SAS)が使用可能となりました。SASでは構造や音響の周波数応答解析などの結果に対してMechanicalでは困難であったデータ処理や解析結果の可聴化などが容易となり、また実測データの取り込みや合成とあわせて、音の評価やターゲット設定が可能となります。
Mechanical以外の構造製品における2024 R1アップデート
Ansys LS-DYNAでは、Workbenchで構造-熱連成解析が行えるようになりました。さらに、キーワードマネージャ機能が導入され、これまでWorkbenchで扱えなかった設定を呼び出して定義できるようになり、様々な解析が可能になりました。
Ansys Motionでは、Pythonモジュールを使用して複雑な動作や出力の定義ができるようになりました。また、Drivetrainの歯の剛性、歯接触圧(TCP)、変形(TCD)の計算が改善され、より正確で現実的な分析が可能になりました。
Ansys Additiveでは、Workbench環境のレーザー粉末床溶融結合(LPBF)プロセスシミュレーションにおいて、従来の溶融温度の入力方法に加えて、レーザーパワーでの入力が可能になりました。これにより、ビルド中の温度をより正確に求められ、ホットスポットが精度良く検出できるようになりました。
Ansys Sherlockでは、PySherlockが導入され、Pythonとの連携が可能になりました。また、Linux環境にも対応しました。さらに、メカニカルモデルシステムへの接続が可能になり、下流の様々なシステムへモデルの転送が可能になりました。
3D設計製品
Ansys Discoveryでシミュレーション機能と結果処理の強化
Exploreステージ(リアルタイムシミュレーション)において、パラメータスタディをローカルのGPUではなく、クラウド環境のGPUで計算するバースト計算機能が利用可能になりました。これにより、10分間で1000ケース以上の莫大な設計案をまとめて評価することができます。さらに、プロセス自動化・設計最適化ソリューション「Ansys optiSLang」の最適化解析を活用すれば、短時間で最適な設計案まで導き出すことが可能です。
また、Exploreステージの構造解析でボディ毎に要素サイズを設定できるようになりました。例えば、全体の要素サイズは比較的大きくなるように設定し、小さな部品や薄い部品には個別に適切な要素サイズを設定することで、ビデオメモリを効率的に使用しつつ精度の向上を見込むことができます。
ボディ毎の要素サイズ設定
Ansys Discoveryでモデリング機能とユーザービリティの強化
モデリング機能として、ハイブリッドモデルがサポートされるようになり、1つのボディ内においてサブディビジョンサーフェスと平面や円筒面といった理論的な面の両方を混在させることができるようになりました。柔軟で自由な形状に編集したい領域にはサブディビジョンサーフェスを使用し、正確なトポロジーが必要な領域には従来の手法により面を作成することができます。
ハイブリッドモデルは、Discovery Simulation においてそのまま解析用モデルとして使用したり、Mechanical や Fluent に転送してその解析モデルとして使用できます。また、材料を定義したモデルに対して、環境への負荷(CO2排出量、作成時の使用エネルギー量、リサイクル可能な材料割合)を環境特性として取得できるようになりました。さらに、従来の Workbench、Mechanical、Fluent に加えて、AEDT へパラメータを含むジオメトリ転送が可能になりました。これにより電磁界解析製品のジオメトリエディターとして Discovery が使い易くなります。
流体解析
Ansys Fluent WorkspaceでGPUソルバーの適用範囲が拡大
Ansys 2024 R1のGPUソルバーはCoupledソルバーやスライディングメッシュ等にも対応することになり、計算負荷の高い解析をより高速に実行できるようになりました。
車体周り流れ解析における、CPU利用時とGPU利用時のスピードを比較した例。
同じ問題を計算した結果、GPU利用では11倍(左)もしくは9倍(右)のスピードアップが確認できた。
Ansys Fluent UI・メッシングの改善
Ansys 2024 R1では、Ansys Fluentにウェブブラウザからアクセスし解析プロセスの改善を実現するFluent Web Interfaceやマルチゾーンメッシングの利便性向上による高品質メッシュ生成の実現、Pythonの柔軟性と強力なデータ処理機能を利用しながらAnsys Fluentの機能を活用するPyFluentの強化など、流体解析の可能性と利便性をさらに高める機能が多数実装されています。
Ansys Fluent ソルバーの強化
Ansys 2024 R1では、混相流・自由表面・燃焼など様々な解析モデルが改善され、より高度なソリューションを実現することができます。また、アダプティブタイムステップの改善など、幅広いユーザーにベネフィットをもたらすエンハンスメントも実装されています。
電磁界解析
高周波電磁界解析 (HF) に関する新機能
Ansys HFSSではFinite arrayに関するデータ出力や各種設定機能が追加され、SBR+ソルバーにおいてBlockage機能も改善されています。また、Ansys HFSS 3D Layoutでは、SIwave Near Field解析ができるようになり、基板設計の利便性が高くなっています。Ansys Q3D Extractorでは、ACRL解析とDCRL解析の間の遷移周波数帯のRLを精度良く計算する機能が正式リリースされています。
Ansysエレクトロニクス製品の共通のGUIであるAnsys Electronics Desktop(AEDT)においてもダーク/ライトテーマ表示変更を含むユーザインタフェースが機能拡張されています。
Ansys HFSS 3D LayoutにおけるSIwave Near Field 解析
低周波電磁界解析 (LF) および熱解析に関する新機能
Ansys Maxwellでは、薄膜導体モデル向けの境界条件をサポートし、リッツ線モデリング機能や2Dのメッシュ生成が強化されており、さらに効率性の高い低周波磁場解析を実現しています。Ansys Motor-CADでは、アダプティブテンプレート機能により、設計の柔軟性とテンプレート形状の容易さがさらに向上しています。また、Ansys Icepakにおいても、メッシュ領域設定で新たにSubRegionを用いた領域作成方法が導入されるほか、Fields Summaryの表示/選択機能が強化されています。
薄膜導体モデル向けシェル要素
Ansys EMC PlusおよびAnsys Charge Plusに関する新機能
Ansys Charge Plusは大規模なプラットフォームで効率的なEMC評価を実現するAnsys EMC Plusおよび放電・帯電現象を対象とした解析ツールです。2024 R1ではケーブルモデリングのアップデートやポスト処理機能等が機能拡張されました。
光学解析
Ansys Lumerical 2024 R1新機能
フォトニクス解析に関する様々なソルバー機能が拡張されました。FDTDソルバーがマルチGPUに対応し、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)環境における計算のスケーラビリティが大幅に向上しました。
RCWAソルバーでは面内異方性をサポートし、FDEソルバーではオートスケールPMLを導入しました。EMEソルバーには、導波路の湾曲を直感的に視覚化する新機能が追加されています。また、KlayoutとMultiphysicソルバー間の動的連携により、レイアウトモデルツールとの連携がさらに強化されました。
FDTDによる微粒子散乱解析の計算時間の比較。CPUを1倍としたとき、GPUでは最大28倍高速化される
Ansys Zemax OpticStudio 2024 R1 新機能
回折光学系の解析機能が向上しました。この強化により、光線追跡時の回折次数情報の取得や位相勾配の確認が可能になりました。これにより、設計者は解析と製造の両面で回折光学系をより深く、より正確に理解できるようになりました。さらに、Ansysの幅広い製品群との連携機能も強化され、マルチフィジックス解析が容易になりました。これらの機能は、結像光学製品開発をより高度にいたします。
Ansys Speos 2024 R1新機能
Ansys Zemax OpticStudioモデルのインポート機能が高度に刷新され、シームレスな迷光解析フローを簡単に実現できるようになりました。また、Live Previewの直感的な新インターフェースは操作性を格段に向上させ、デザインレビュープロセスを加速します。さらに、VR Labの進化によりHMDトラッキングが可能となり、リアルなVR体験を実現できます。
Pro、Premium、Enterpriseの各パッケージも全面的に刷新されました。コストパフォーマンス高く、かつ様々なニーズに応える柔軟性と機能性を備えています。
材料選定・材料データベース製品
Ansys Granta Selectorで各種材料データベースの更新
下記のように各種材料データベースが更新されました。
- MaterialUniverse™は、2750以上の材料情報とオプションの値、価格を更新しました。
- Additive Manufacturingでは、Siemens Energy社の新しいデータセットとしてニッケルとチタン合金の生の引張試験データを含む詳細な物理的・機械的(温度依存性)特性が更新されました。また、Senvolデータベースの350以上の材料が追加/更新され、110以上の新規AMマシンが更新されました。
- ESDUデータベースでは、バージョン47からバージョン50に更新されました。
- 電磁材料データベースでは、マグネティックス、ポリマー、PCBについて1750件以上の新規レコードが追加されました。また、いくつかの材料については周波数範囲が10GHz以上に拡張されています。
- ポリマーデータベースでは、最新のULデータ(合計107,000件以上)が更新されました。またシミュレーションに対応しているクラレの材料データが追加されています。
- その他では、航空材料データMMPDSが2023年版へ更新されました。高温合金材料において新しい疲労&疲労き裂進展速度パラメータが追加されました。ASME-BPVCも2023年版へ更新されています。医療MMDの最新デバイス、生産者、ガイダンス、リコールが追加されました。
Ansys Grantaで持続可能な設計を支援する新規アドオンをリリース
今回のリリースでは主に、Granta MIコア、Granta MIインテグレーションがアップデートされ、Granta MI Sustainabilityアドオンが新しくリリ―スされました。
- Granta MI Sustainabilityアドオンは、設計の初期段階から持続可能な選択を行うためのデータとツールが提供され、製品の環境フットプリントを削減するための実用的な手段をエンジニアに提供します。このアドオンは、持続可能な材料に関する信頼できる情報のソースとして機能し、業務フロー全体で共有されることで、環境負荷の低減を目指した製品開発をサポートします。
MBD/MBSE/デジタルツイン
Ansys medini analyze™でWebアプリケーションでの利用が可能に
安全分析ツール「Ansys medini analyze™」においてデジタル安全管理機能「Ansys Digital Safety Manager」が提供され、複数の安全およびサイバーセキュリティのためのプロジェクトの進捗を同時進行で管理できるようになりました。
Ansys Twin Builderでデジタルツインの為の機能を強化
今回のリリースでは、デジタルツインのためのパラメータ・キャリブレーション機能の強化(シンプルな最適化アルゴリズムの採用)やフュージョンアナリティクスのユーザビリティの向上がなされています。さらにROM機能の拡張も行われ、静的なパラメータに対する過渡応答のROM化がStatic ROM Builderでも可能になりました。さらにLS-DYNA等の構造解析ツールによるシミュレーション結果からROM化するための学習データの出力などがサポートされるようになりました。
Ansys Licensing
Ansys Licensingの改善
Ansys が提供するライセンス形態は、オンプレミスのライセンスマネージャーで管理する Desktop Licensing、従量課金制の Elastic Licensing、 Ansys社の Web クラウドサーバー上でライセンスを管理を行う Shared Web Licensing の3つがあります。各ライセンス形態において、2024 R1 で機能改善が行われました。
Desktop Licensing においては、従来のライセンスマネージャーで運用されていた Ansys Licensing Interconnect が廃止され、3ポートでの通信から2ポートでの通信となりました。
Elastic Licensing では、Zemax や Speos といった光学製品に対応しました。
Shared Web Licensing は、2023 R2 で登場した新しいライセンス形態です。2023 R2では、構造、流体、エレクトロニクスの中の Enterprise 製品や Discovery Simulation などの製品に限定して使用できる機能でしたが、2024 R1 では新たに Pro や Premium 製品に対応するとともに、光学製品やRocky、LS-DYNA、Discovery Modeling など多数の製品に対応しました。
3つのライセンス形態が混同しないように、Ansys Licensing Portal の機能強化がされました。具体的には、契約している製品がどのライセンス形態なのかを確認する項目が追加されたり、使用履歴にどのライセンス形態を使用した履歴なのかを確認できる項目が追加されたりしました。