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構造解析

ジャーナル軸受設計におけるフロントローディング

Tribo-X inside Ansysの活用

公開日2021年11月

目次

  1. はじめに
  2. Tribo-X inside Ansysの概要
  3. 理論的背景
  4. 弾性流体力学(EHD)アプローチ
  5. 混合潤滑モデル
  6. 線形ローターダイナミクス機能
  7. パラメトリック軸受解析
  8. まとめ

はじめに

設計初期段階において、より俯瞰的な視点で問題点や課題を発見して設計後工程での手戻りを少なくするために3D-CADやCAEを取り入れたフロントローディングと呼ばれる手法があり、製造業の多くの企業が取り入れています。その背景には、製品の高機能化、高効率化、軽量化が要求される中で、製品自体が多くの機能部品の組み合わせによって成り立っていることが要因として考えられます。そこにある技術課題は単一部品の構造強度問題に留まらず、部品間相互連成運動による振動や騒音問題に広がっており、複雑な連成物理現象を設計の上流工程において、ある程度は捉えなければならなくなってきています。“ある程度” と記した理由は、連成物理現象を捉える詳細度によってその理論式のかたちは様々で、一般的に詳細度が高ければそこに必要な評価リソースも大きくなることに依存します。設計の上流工程で利用することを考えた場合は大局的に見て適度な評価が行えるような仮定と制限を加えた理論式の利用が有効である場合が多いです。“ジャーナル軸受” は各種回転機械における回転軸の支持に広く利用されており、機械の小型・軽量化や電動モータの高速回転化にともない、その高性能化が要求されています。その上、回転軸にとってはその動特性を決定する重要な機能部品であるために設計の上流工程でその特性を評価できれば設計効率向上に寄与することは容易に予測できます。本稿ではジャーナル軸受の特性を設計の上流工程にて効果的に評価することができる設計ツールとして、意匠設計時に活用する3D-CADシステムと連携して設計のフロントローディングを実現するCAEツール:Tribo-X insideAnsysについて紹介し、それが持つ解析・評価機能が設計のどのようなシーンで活かされるかについて解説します。

Tribo-X inside Ansysの概要

Tribo-X inside Ansysは、Ansys社のマルチフィジックス解析ツールAnsys Workbenchの環境下で流体力学的なジャーナル軸受解析を行うことができる、CADFEM社開発のAnsysアドオンツールです。Tribo-X inside Ansysの基本的な動作構成としては、軸受解析のプリポスト処理を構造解析アプリケーションAnsys Mechanicalで行い、軸受の計算をTribo Technologies社開発のベアリングソルバーTribo-Xを用いて行います。Tribo-Xは、後述する拡張されたReynolds方程式を用いることでジャーナル軸受解析を高速に行うことができるソルバーであり、Ansys Mechanicalのアドオン機能として連携させています。Tribo-XソルバーをAnsys Workbench環境に統合することで、Ansys Workbenchの持つ様々なプロダクトと連携することが可能となります。AnsysのCADインターフェースは幅広い形式のCADデータをスムーズに取り込んで解析に利用することができます。また、Ansys Workbench環境下においては他の解析とのデータ授受が容易に可能であるため、AnsysMechanicalによる構造解析のデータをTribo-X inside Ansysに取り込んだり、逆にTribo-X inside Ansysの解析結果をAnsys Mechanicalの構造解析に利用したりすることができます。さらに、Ansys Workbench環境下で行った解析に対しては、最適化ツールAnsys DesignXplorerやAnsys optiSLang等を用いてパラメトリック解析を行うことができます。Tribo-X inside Ansysでは、上記のようなツール連携によって、単体のジャーナル軸受解析に加えて、下記に示す特徴的な検証を行うことが可能となっています。

  • 弾性流体力学(EHD)アプローチ
  • 混合潤滑モデル
  • 線形ローターダイナミクス機能
  • パラメトリック軸受解析

理論的背景

本節では、Tribo-X inside Ansysが解析対象とするジャーナル軸受に関する基礎的な理論や背景知識について簡単に説明します。軸受とは回転する軸を支持して固定するとともに、摺動面における摩擦を低減して滑らかに回転させるための機械要素です。軸受は主に転がり軸受とすべり軸受に大別され、支持する荷重の方向に応じてジャーナル軸受(半径方向)とスラスト軸受(軸方向)に分類されます。Tribo-X inside Ansysは「ジャーナル油膜すべり軸受」(以降、単に「ジャーナル軸受」と表記)、すなわち、潤滑剤となる油膜の動圧によって半径方向荷重を支持する軸受を解析対象としています(図1)。

図1 Tribo-X inside Ansysの解析対象 図1 Tribo-X inside Ansysの解析対象

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