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電磁界解析

Ansys HFSS によるレーダー反射断面積(RCS)の解析

Ansys HFSS によるレーダー反射断面積(RCS)の解析:CAE・Ansysの解析事例/技術資料を無料公開中

CAEのあるものづくり |公開日:2020年06月

目次

  1. はじめに
  2. RCSの定義
  3. モノスタティックRCS
  4. バイスタティックRCS
  5. RCSの適用例
  6. まとめ

はじめに

Radar(レーダー)とは、Radio detection and rangingの略のことで、自動車の衝突防止、船舶や航空機の航法、気象観測など、様々な分野に応用されています。その原理はマイクロ波帯やミリ波帯の電波を目標物(ターゲット)に対して照射し、その反射波を受信してターゲットの方向、位置および速度を推定します。ターゲットに照射された電波はあらゆる方向に散乱されますが、その反射させる能力は、レーダー反射断面積(RCS:Radar Cross Section)と呼ばれる指標で評価されます。RCSはターゲットの形状、大きさ、材質、レーダーで使用される電波の周波数によって大きく変わり、主に自動車、船舶および航空機をターゲットとする場合、RCSの解析は形状が複雑になることから、電磁界解析ツールが用いられます。また、ターゲットのサイズがレーダーの電波の波長λに対して大きい(電気サイズが大きい)場合、RCS解析の計算規模が大きくなるため、RCSの基本原理を理解し、適切な電磁界解析の手法を選択することが重要となります。本記事では、RCSの基本原理を3 次元フルウェーブ電磁界解析が可能なAnsys ® HFSS TM を使って解説します。Ansys ® HFSS TM は複数の解析エンジン(ソルバー)をサポートしており、ターゲットの電気サイズに応じて適切にソルバーを選択することで、高精度かつ効率よく解析できるのが特長です。本記事では、最も簡易な形状である完全導体球のRCSをAnsys ® HFSS TM を使って解析し、理論値と比較することでRCSの基本原理を理解するとともに、各種ソルバーの有効性を示します。加えて、RCSの適用例として、航空機に対するRCSについて説明いたします。

RCSの定義

均質な媒質中に置かれた媒質定数の異なる物体に平面波が入射する場合の散乱波について考えます。そのターゲットが導体の場合には、導電電流が誘起され、誘電体の場合は分極電流が誘起されます。これらの電流が二次的な波源となり、電磁波が再放射されます。図1にRCSの基本原理を示します。自由空間中のターゲットへ入射する平面波の電力密度をp[i W/m2]とし、 物体から距離d[m]の受信点Rにおける散乱波の電力密度をp[s W/m2]とすると、ターゲットの散乱断面積σは次の式で定義されます。

図1 RCSの基本原理
図1 RCSの基本原理

d→∞と極限をとることで、受信点Rにおける散乱波を入射波と同様に平面波として扱っています。ここで、式(1)は、受信点Rにおける散乱電力が、入射平面波の到来方向に垂直な断面積σ内に含まれる入射電力を全方向に無指向性で散乱する仮想的な等方性散乱体の散乱電力に等しいことを意味しています。散乱方向が入射波の方向と一致する場合のσをレーダー断面積または後方散乱断面積といいます。一般に、レーダーの送受信アンテナの位置が同じ場合をモノスタティックRCSといい、後方散乱とモノスタティックは同じ意味合いで使われます。一方、レーダーの送受信アンテナの位置が異なる場合をバイスタティックRCSといいます。図2 にモノスタティックRCSおよびバイスタティックRCSを示します。

図2 モノスタティックRCS(左)およびバイスタティックRCS(右)
図2 モノスタティックRCS(左)およびバイスタティックRCS(右)

参考文献

[1] N. Swathi, K. S. R. Rao, G. S. Rao, N. U. Rani andN. Sharma, “Radar RCS estimation of a perfectly conductingSphere obtained from a spherical polar scatteringgeometry,” 2015 International Conference on Electrical,Electronics, Signals, Communication and Optimization(EESCO), Visakhapatnam, 2015, pp. 1-7.

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