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解析事例

宮城県 / 宮城県産業技術総合センター

産業振興のキーポイントは「人材」〜宮城県の人材育成事業に、Ansysのセミナーが採用

鹿野田由美子様、渥美英夫様、久田哲弥様

今回は宮城県産業人材・雇用対策課様と、宮城産業技術総合センター様にご協力いただきました。
自動車関連メーカーをはじめとした大規模な企業立地が相次ぎ、県外からも注目を集めている宮城県。産業振興においては「人材」を重要なキーポイントと捉え、県を挙げての大規模な人材育成プロジェクトを展開しています。
本インタビューでは、宮城県の人材育成事業の概要と、企業立地における「人材」の重要性、そして人材育成事業の一環として実施されている、「ITものづくり研修」についてお話を伺いました。
(以降、お客様の敬称は省略させていたただきます。)

まず、皆様のお仕事の内容をご紹介ください。

鹿野田

私は、県庁の産業人材・雇用対策課の企画班に所属しています。
課全体の業務内容は、雇用対策、労働組合関係の調整、人材育成や職業訓練などがあります。企画班は、渥美人材育成政策専門監の下、私を含め3名で構成されており、宮城県内企業の人材育成や確保に関する事業を担当しています。
具体的には各種施策・事業の企画や、実施に伴って必要となる関連機関との調整などを行っています。

久田

私は宮城県産業技術総合センターに所属しています。
ここは県内の企業に対して技術的な支援を行う部署で、食品から電気電子分野まで、幅広い分野の技術者が64名在籍しています。私の担当は機械系分野、特にCAEに関する相談窓口として、企業からの製品設計やトラブルシューティングといった相談・依頼に、Ansysを使った解析でお応えしています。

宮城県では、人材育成事業が盛んだと聞いておりますが。

鹿野田

宮城県では、平成19年3月に策定した「宮城の将来ビジョン」の中で「富県宮城の実現」を掲げ、特に産業振興に力を入れていますが、キーポイントはやはり「人」だと考えています。
最近、宮城県には自動車メーカーをはじめとした企業立地が相次いで決定していますが、この理由の一つとして、関東や東海地区での人材確保が難しくなってきている点が挙げられます。
そこで宮城県では良質な人材の「育成・供給拠点」になることを目指し、様々な人材育成事業を行っています。

昨年採択された、宮城県の人材育成事業についてご紹介ください。

鹿野田

平成19年に、企業立地促進法に基づいて地域産業活性化基本計画を策定し、国から同意が得られました。これにより国からの補助金を活用した人材養成等支援事業に着手できることになり、同年9月頃から具体的な事業の企画に着手しました。

渥美

ほとんどの県では地域単位で基本計画を作っていますが、宮城県は「自動車関連産業」と「高度電子機械産業」という2つの分野で、県全体としてのプランを立てています。そのため宮城県内であれば、地域に限定されることなく活動することができます。

鹿野田

自動車関連産業については、今後さらに発展が期待されるカーエレクトロニクス分野に照準を絞り、産学官で構成するコンソーシアムとして、昨年「みやぎカーインテリジェントセンター」というカーエレクトロニクス技術者養成機関を設立しました。センターでは、県内の大学・高専の学生を対象に、組み込み、CAE、計測評価といった、カーエレクトロニクス分野で欠かせない3分野の研修講座を実施しています。

渥美

これは学生や就職したばかりの若手を対象としています。
従来、大学の工学部でもCAEの授業を扱っていない場合が多かったのですが、採用する企業側はCAEを使っており、新卒でもCAEについてある程度は知っておいて欲しいと考えています。
「みやぎカーインテリジェントセンター」の設立には、こうした教育機関と企業の間のギャップを埋めるという目的もありました。

鹿野田

昨年度は、3月にガイダンス的な研修を実施したのですが、今年からは規模も拡充し、自動車の機能・構造などの基礎知識から、電子制御技術、CAEによるシミュレーション、そして計測評価までをトータルに受講できるようなコース設計をしています。
高度電子機械産業では、「IT活用ものづくり研修」を柱としています。本県にも多数の電子機器や半導体関連企業が立地していますが、昨今の製品の小型化・高密度化、そして製品ライフサイクルの短縮化などを背景に、CADやCAEなどのIT活用と、それらの技術を習得した人材のニーズが急増しています。そこで、これらの一連の技術をカバーした研修を実施することになりました。産業技術総合センターでは、CAE技術者の養成を目標に、構造解析や電磁場、電子回路、ソフトウェアのモデル検査などの講座を、県内の技術者を対象に実施しています。昨年度は構造解析と電磁場解析の2講座だけだったのですが、とても人気が高く定員を上回る申込みがありましたので、今年からは講座も10コース、定員も合計で100名と、大幅に拡大しました。
この他、品質工学の基礎を学ぶ研修や、ものづくりへのIT活用のメリットを啓蒙することを目的とした経営者向けのセミナー等も実施しています。

CAEのニーズはかなり高いようですね。参加者は、CAE利用者が多いのですか?

久田

未経験の方が多いです。参加者のお話を聞くと、これまで自社のノウハウで設計してきた企業の技術者が、設計にCAEを活用することを目的に受講されるケースが目立ちます。最近では、CAEは設計した製品の安全性を証明するために欠かせないようですし、製品やその製造工程のトラブルシューティングにも有効です。また私自身、Ansysを使って色々な企業の技術支援をしてきた経験からも、企業にとってCAEは重要だと実感してきました。
そこで、今回のITものづくり研修では、まずCAEのメリットを広く知ってもらうことを目的にしました。実際に自分の手で操作してみて、どのようにCAEを自分たちの業務に適用できるか、考えるきっかけにしてもらえればと考えています。
CAEの技術相談でも言えることですが、初めてCAEの解析結果を見る方は、まずカラーコンター図に感動されます。
解析結果があれば、設計上の問題点が一目瞭然で解りますので、顧客に説明するのにも便利なようです。

ところで、現在構造解析セミナーの教材としてAnsysを採用し、また講師も当社から派遣させていただいていますが、Ansysを選ばれた理由は何でしょうか?

久田

最大の理由は、私が産業技術総合センターでAnsysを利用していたことです。研修で習得したことを実務に結び付けるには、やはり技術者によるアフターサポートが重要なのですが、Ansysなら私がサポートすることができます。
また、当センターでAnsysを導入したのは約10年前になりますが、当時Ansysを選んだ理由はAnsysが様々な解析分野に対応していたことです。県内企業の多種多様な技術相談にお応えするには、構造だけでなく磁場や流体など、様々な分野の解析が必要になります。解析分野別に複数のソフトを導入するのは非常に大変ですが、Ansysなら全て対応することができます。また当時、Ansysの他にも色々な解析ができるツールもあったのですが、解析結果などを総合的に判断した結果、Ansysのほうが優れていると判断しました。

受講者の方の反応いかがですか?

久田

昨年度はAnsys Workbenchの体験セミナーを1 日、Ansys Classicの初級、中級セミナーをそれぞれ2日ずつ実施したのですが、Classicのセミナーは初心者には難しすぎたようです。そこで今年は「設計者向け」と「解析技術者向け」の2つに対象を分け、前者ではAnsysWorkbench、後者はAnsys Classicのセミナーを展開しています。
この8月に設計者向けのセミナーを実施しましたが、解りやすかったとか、解析がどういうものかイメージが掴めたなど、概ね高評価をいただいています。次は9月に解析専任者向けのセミナーを予定しており、ぜひ多くの方に参加して欲しいと思っています。
その他、受講前に材料力学や有限要素法の基礎を予習したかったという感想もありました。いかにして研修の内容を実務に結びつけていくかも課題のようです。この点については、我々もサポートしていく必要があると感じています。我々の技術相談を大いに活用して、早くCAEを実用に結び付けていっていただきたいと思います。


設計者向けセミナー

では最後に、今後の計画についてお聞かせ下さい。

久田

CAEのサポートは今後も続けていく方針なのですが、そのためには、複数名で対応できるような体制作りが課題です。
また、できる限り最新のソフトウェアが使える状態を維持する必要があります。他では最新版を使っているのに、自分のところでは10年前のCAEを使っている、というのでは追いつけません。

鹿野田

国の補助金を活用した人材養成等支援事業は来年で終了し、その後自立化の段階に入ります。自立化のプランについてはまだ検討中ですが、カーインテリジェントの場合、一番理想的なのは研修を学校のカリキュラムの中に入れていただくことです。ちょうど宮城県には大手企業の立地が相次いで決定していますから、これを追い風にカリキュラム化が進むことを期待しています。
また、育成と確保の両輪が大事ですね。優秀な人材を育成するだけでなく、そうした方々が宮城県に定着できるよう、支援をしていきたいと考えています。「人が企業を呼び、企業が人を呼ぶ。」そういう好循環ができてくればと思います。

渥美様、鹿野田様、久田様には、お忙しい中インタビューにご協力いただきまして誠にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。

「CAEのあるものづくりVol.9 2008」に掲載

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