大型ヘリカル装置LHD中の不安定性のMHDシミュレーション研究 核融合科学研究所 シミュレーション科学研究部
准教授 三浦英昭 様

はじめに

核融合科学研究所シミュレーション科学研究部では、高温プラズマの不安定性、乱流など核融合の諸問題や、宇宙/太陽プラズマの磁気リコネクション現象などの研究を行っています。
ここでは、核融合科学研究所の実験装置、大型ヘリカル装置(LHD)内部のプラズマの不安定性についての電磁流体力学(MHD)不安定性シミュレーションを、AVS/Express による可視化事例を基に紹介したいと思います。

磁場閉じ込め核融合と不安定性

LHDは捻じれたドーナツ型(トーラス)形状をしています。2本の螺旋形状をした超電導コイルが作る強い磁場でコイルに囲まれた領域に磁力線の籠をつくり、この磁力線の籠で高温プラズマを閉じ込めます。内部のプラズマの温度、圧力が上昇するにつれてこの籠から外側に飛び出す力も増加し、わずかな閉じ込めの乱れ(変位)が更に大きな変位をもたらすようになります。これを不安定性といいます。(LHDの形状などを含めてもう少し立ち入った説明は、参考文献[1]と、そこで引用した文献を参照してください。)

LHDの場合、実験開始前には交換型不安定性、バルーニング不安定性などによるプラズマの不安定化が危惧されていました。しかし実験が始まってみると、不安定性は起きているのですが、非常に不安定と思われていた設定下でも高温状態が達成されました。それ以来、プラズマがこの不安定性を切り抜けて比較的安定に高温高圧状態に到達する機構の解明が研究課題の一つになりました。これまでのいくつかのシミュレーション研究[2-5]から、不安定性の成長に伴って圧力分布が変わるために不安定性が駆動されなくなる(不安定性が飽和する)こと、従来の解析で想定されていた以上にエネルギーが磁力線に沿った方向(この方向は、不安定性とは直接関わらない、比較的安定な方向です)に解放されることなどが分かっています。次節でご紹介するのは、このようなシミュレーション研究の一つです。

LHD中のMHDシミュレーション

LHD中のMHDシミュレーションにもいくつか流儀があり、ここで紹介するのは装置形状を模擬した3次元の圧縮性MHDシミュレーションです。この他に、装置形状の特長(例えばトーラスの大半径・小半径のアスペクト比が1よりずっと大きい)を利用して方程式を簡単化した簡約化シミュレーションなどもあります。
図1には、典型的なシミュレーション結果を、計算領域全体について示しました。2本のヘリカルコイルは螺旋状に10回捻じれ、この2本のコイルに挟まれるように計算領域があります。この計算領域もヘリカルコイルと一緒に捻じれているので、シミュレーションでは非直交な一般曲線座標を用いています。緑色の等値面は圧力を表し、その閾値は圧力の磁場エネルギーに対する比が1%となる値です。

図2には、不安定性の時間発展シミュレーションの中から、代表的な3つの時刻での圧力分布を、トーラスの一部について示しました。図2(a)ではプラズマには何も変化が見えず、初期条件(平衡状態)に近い状態にあるのですが、この後急激に不安定モードの成長が見られ、図2(b)のように強い流れが発生します。図2(b)では流れを流線で示しました。この不安定性の成長で圧力分布も大きく変形します。しかし、不安定性は次第に飽和し、流れも弱くなります。シミュレーションの最終段階では、図2(c)に見られるように、滑らかな圧力分布の状態へと緩和します。トーラスの周回方向に強い流れが残っている事から、不安定性を駆動する流れのかなりの部分がこちらに解放されたこともわかります。

図3は、トーラス小断面での圧力の等高線と、小断面上での速度成分による2次元的な流線を描いたものです。圧力の高い領域は赤く、低い領域は青く描画されています。2本の黒い実線は、不安定性が起こると考えられる3次元面(有理面)の位置を表します。図2の場合と同様に、時間の経過とともに強い流れと圧力の変形が生じますが、次第にその流れは穏やかになり、圧力の分布も同心円状の形状を取り戻します。
これらの結果は、プラズマの不安定性が穏やかな飽和を遂げて再び良好な状態を取り戻すことを示唆しており、このよう飽和機構が、実験でも良好な結果に寄与しているのではないかと考えています。

最後に

ここでは、私の3次元MHDシミュレーションについて研究事例を紹介しました。核融合科学研究所シミュレーション科学研究部ではこの他にも、3次元MHD方程式と高エネルギー粒子の相互作用、プラズマ乱流の運動論的シミュレーションなど多様な研究が行われています[6]。今年はスーパーコンピュータが更新され(2009年3月)、計算能力は飛躍的に向上しました。コンピュータの性能が増強されても、その結果を適切に理解しなければいけません。計算規模の増大に合わせて、シミュレーション結果の可視化の役割もこれまで以上に重要になるため、新システムの一部として AVS/Express とその並列版、 AVS/Express PST を搭載した可視化サーバーも導入しました。スーパーコンピュータと可視化サーバーの両者を最大限に活用して、研究を加速させたいと思っています。

参考文献
[1] 三浦英昭、榊原悟、「磁場閉じ込め核融合における電磁流体力学」、ながれ27 (2008) 209-216.
※社団法人 日本流体力学会 刊行物「ながれ」
[2] Miura, H. et al.: Non-disruptive MHD Dynamics in Inward-shifted LHD, Configurations, 20th IAEA Fusion Energy Conference(2004) IAEA-CSP-25/CD/TH/ 2-3.
[3] Ichiguchi, K. et al.: Nonlinear analyses for stabilization of interchange mode in LHD plasmas, Fusion Sci.&Technology 46 (2004) 34-43.
[4] Miura, H et al.: Direct Numerical Simulation of Nonlinear Evolution of MHD Instability in LHD, Theory of Fusion Plasmas, AIP Conference Proceedings 871 (2006) 157-168.
[5] Miura, H., Nakajima, N., Hayashi, T. & Okamoto, M.: Nonlinear Evolution of MHD Instability in LHD, Fusion Sci. & Technology 51 (2007) 8-19.
[6] http://www.dss.nifs.ac.jp/ から、各メンバーのページを参照。

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