防災科学技術研究所 地震観測データセンター 高感度地震観測管理室 汐見 勝彦様 地震観測網を運用した地震の研究 〜地震被害の軽減を目指して!〜

地震データとその活用

地震の分布をAVS/Expressで可視化

みなさん、地震という”現象”はご存知ですけど、地震で”何を測っている”かというのをご存知の方は少ないですね。取っているデータは地震の波形と言って、要は地面の揺れの記録です。地震計は電磁石になっていて、地面が揺れると発電されます。私達の地震の観測では、その電圧を現場でデジタル情報にして、このデータセンターまで届けています。
各観測点から集まってくるこの情報を解析することで、震源の位置や地震が起こった時間、地震の規模が分かります。もう少し解析すると、震源メカニズムといいますが、どういう地震でどんな力をうけてこの地震がおこったか、また、地震が起こったときの断層の破壊の様子を再現する事もできます。もちろん、この波形だけで地震の観測点の揺れの特徴も分かります。よく言う震度というのも、地震の波形から計算されます。
例えば、岩手の地震だと家の被害は少なかったけど地滑りが多かったって言われますよね。
逆に神戸だと家の被害が極端に大きかった。その違いは何かというと、地震の波に家を壊しやすい力が含まれていたかどうかということなんです。地震の観測から揺れの特徴を掴むことで、何故こういう被害が出たかを解析できます。もちろん、波形のデータを使えば、日本列島を地震が伝わる様子もわかります。更に解析すると日本列島の地下がどうなっているのかまで見ることができます。

HPにも公開していますが、私達が持っている地震のデータには、地震が発生した時刻と場所(緯度・経度・深さ)というのがあり、その情報を使って地震がどこで起こっているかを見ます。普通私達が使うのは、深い地震と浅い地震を色分けされている平面図です。これを「AVS/Express」を使って3次元化するともう少しわかりやすくなります。【図5】

たとえば、2007年4月から2008年の3月までにHi-netがとらえた地震は123,000個ですが、数だけ言われても、あぁ多いんですね、で終わってしまうので、これを可視化してお見せしています。見学に来られた一般の方々は、地震が具体的にどこで起きているかはほとんどご存じないので、震源の分布を3D表示でみせると、皆さん、驚かれます。
上空からみると日本中どこでも地震が起きているように見えます。でも、ちょっと下からみると、太平洋プレートに沿って地震が起こっているのが良く分かります。
日本列島はどこでも地震が起きている印象がありますが、西日本では深い地震は確かに少ないです。浅い地震は昔から多いですが。

【図5】「AVS/Express」を使って3次元表示した地震の分布図
【図5】「AVS/Express」を使って3次元表示した地震の分布図

今までAVSのような3次元可視化ツールがなかった時は、平面図をみるか、たくさんの2次元的な断面図をみていました。そうすると切り方によっては、ゴーストじゃないですけど、こうじゃないかと言う幻が見えてくることがあるんです。だから、3Dでみると、その感覚が正しいものなのかどうかが掴みやすいんです。

震源の他に、揺れが実際どういう風に日本列島を伝わっていくか、というのも可視化しています。先ほど波形といいましたけど、これはもともと数値データがあるだけで、各地点の揺れを2次元的に表現したものです。日本列島全体で見た時にそれがどんな感じで伝わるのかというのは、やはり2次元ではわかりづらいですね。

一般の方々にとって、地震の揺れというのは、波だという認識そのものがあまりないのですが、そのデータを3次元的に可視化すると、ちょうど湖に石を投げたみたいに波が広がっていく様子がわかります。また、必ずしもきれいな波として広がっているわけではなく、所々切れたり違う方向に波が伝わったりすることもあります。こういうのをみて、日本列島の地下があまりきれいじゃない、というのがわかります。
そこで何がおこっているのかというのが研究のネタになり、何故こういう波の伝わり方になるのかを調べたりします。

【図6】地震波動のムービー
【図6】地震波動のムービー
(クリックで動画再生)
【図6】のムービーをご覧いただくと、日本列島を伝わる地震波動の動きが良くわかります。
揺れの大きさは色で表されています。

解説


  1. 非常に大きな揺れが東北地方を襲います。
  2. その揺れが全国に広がっていきますが、まず、黄緑色〜黄色が西日本に向かいます。
    (北海道方面にも広がっていますが、東北の大きな揺れで見えませんね)。
    これが、地震のP波と言われる波です。
  3. その後、少し遅れて、橙の領域が近畿くらいまで広がります。橙の領域は近畿で止まりますが、中国から九州北部には,黄色い領域が広がっていきます。これが、地震のS波です。
  4. 大きな波が落ち着いたあとも、関東地方や名古屋、新潟、札幌、釧路などの周辺では黄色〜橙色になっていることが分かります。これらの地域は地震の時、いつまでも揺れていたという証拠です。

データの利用

高感度地震観測と広帯域地震観測は、防災科研だけでなく、気象庁や大学も独自に行っています。当防災科研はこれら全てのデータをアーカイブし、インターネット上で情報を広く公開したり、我々の研究に用いたりしています。
もちろん、気象庁や大学、自治体などともリアルタイムにデータの交換をしていて、気象庁の緊急地震速報にも利用されています。

研究所に見学にいらっしゃる一般のみなさんの間では、最近、自分の地域の地震の危険性を知った上で地震に対してどうするべきか、という関心が強く、以前よりも地震に関する知識が広がったのかなという感じはします。最近は、耐震に対するいろんな設備も浸透し始めています。
結局、今の技術で地震を起こさなくするというのは不可能なので、地震が来た時に耐えられるような備えをしておくことが必要ですね。我々はいつ地震がくるかという情報を出せるようには努力しますし、それも踏まえてみなさんがお住まいになっているところで、どんな備えをしておけばいいか、参考になるような情報をどう出していくか、が課題です。そこにつながるように、我々も興味を繋げていかなければいけないと思っています。

参照:独立法人 防災科学技術研究所 公式ホームページ URL
http://www.bosai.go.jp/

編集後記

公式ホームページでは、リアルタイムの地震情報はもちろん、地震に関する基礎知識や研究内容まで、幅広いコンテンツが公開されています。
是非、みなさんも一度Webサイトを訪れてください。楽しく役立つ情報が満載です!!今後、地震の研究がますます発展し、被害の軽減につながる情報提供をして頂けることを期待しております。


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