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場当たり的な対策から根拠を持った設計へ ―ESD耐性の設計の考え方―

ESDの対策はなぜ難しいのか?

設計から試験までに直面する課題とその背景

1.ESD規格試験とは

電子機器の信頼性評価において、ESD(静電気放電)試験は重要な項目です。代表的な規格としては民生機器分野ではIEC61000-4-2が用いられ、自動車分野ではISO10605が定められています。これらの規格は人体からの静電気放電を模擬し、製品に対して瞬間的な高電圧・高電流のストレスを与え、その耐性を確認します。実際の使用環境で避けられない静電気に対して、機器が誤動作を起こさないことを保証するための試験であり、製品によっては出荷の必須条件になります。

2.ESD試験の種類

ESDの規格試験には、接触放電・気中放電・間接放電の3種類があります。接触放電はESDガンの電極をEUTに接触させた状態で放電します。一方、気中放電はESDガンの電極とEUTの間にギャップを設けた状態で放電します。間接放電はEUT付近の水平や垂直の結合板に放電します。ESD試験はこれらを組み合わせて総合的に評価します。

3.規格試験で発生する課題

実際の試験現場では、ESD試験中にNGが発生するとカットアンドトライする方もいらっしゃいますが、この方法では原因の特定が容易ではなく、対策に多くの時間を費やします。さらに問題なのは同じ試験の再現性をとることが難しい点です。こうした状況では設計の妥当性を評価しにくく、試験と対策の繰り返しにより開発期間の長期化やコスト増加を招く要因となります。

4.なぜESD対策は難しいのか

ESD対策が難しい理由の一つはESDのエネルギーの伝搬経路が複雑で、誤動作に至る経路の判別が容易ではないためです。
ESDによって発生した電流は導体を伝搬するだけではなく、空間を介して電磁波を放射するため、「伝導」と「放射」の両方の伝搬経路を考慮する必要があります。
このような伝搬経路は机上での予測が難しく、設計段階での対策を困難にします。
試験においては接触放電時の塗装の除去不足やEUT内のボルトの締め付けトルクのばらつき、ESDガンの傾きといった要因も試験結果の再現性に影響を与えるため、対策に時間を要します。

5.特に難しい「気中放電」の再現性

ESD試験の中でも特に再現性確保が難しいのが気中放電です。ギャップ間で発生する放電は空気の絶縁破壊によって発生しますが、試験時の相対湿度や接近速度等の違いによって放電電流の波形にばらつきが生じます。特に相対湿度が放電に強く影響を与えます。規格では相対湿度が30~60%の範囲で試験を実施するよう規定されていますが、この範囲内であっても放電波形がばらつきます。
同じ箇所へ印加しても放電波形が変化するため、対策前後の効果比較が難しくなります。

6.まとめ

ESD対策は、ESDのエネルギーの伝搬経路が複雑で、誤動作に至る経路の判別が容易ではありません。また、規格に沿った条件で試験を行っても結果が変わり、特に気中放電ではギャップ間の放電に起因する変動要因が問題をさらに複雑化します。その結果、原因特定のための試行錯誤が繰り返され、開発期間の長期化につながる一因になります。これは設計段階で現象を整理できていないことに起因する課題と言えます。

今回はESD対策について原因特定の難しさと再現性確保の難しさの観点からご説明しました。
次回は「第2回:ESD試験ではどのような現象が起きているのか」と題しまして、ESD試験時に発生する放電エネルギーの伝搬や放電ギャップで発生する放電波形の変動の観点について具体的に述べ、ESD試験で発生する現象の理解を深めていきます。

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