CYBERNET

解析事例

構造解析

電磁界解析

音響解析

ダイナミックスピーカの連成解析

こんな方におすすめ

  • スピーカユニットの開発・設計をされている方、シミュレーションによる事前検討により試作回数や手戻りを削減したい方
  • ボイスコイルの磁束密度や電磁力(ローレンツ力)、振動板の振動や放射音を可視化し、効率的な構成を検討したい方
  • 磁場と構造、音響の連成解析を簡単に実施したい方

背景

ダイナミックスピーカの駆動部は図1に示すようにボイスコイル、永久磁石、ポールピース、ヨークおよび振動板から構成されています。ボイスコイルに電流が流れると、永久磁石からの磁束との相互作用でボイスコイルの軸方向に力(ローレンツ力)が発生します。この電磁力によってボイスコイルおよびそれに取り付けられた振動板が振動し、音が発生します。

図1:ダイナミックスピーカ

このプロセスを、電磁場解析、構造解析、音響解析を組み合わせたマルチフィジックスシミュレーションワークフローによって解析することで、発生する電磁力、振動板の振動速度および放射音圧などを事前に評価できます。これにより、設計パラメータの定量的な検討やスピーカ設計の最適化が可能となります。

Ansys Workbenchでは、各解析プロセス間のデータ連携を容易に実施できます。例えば電磁場解析で得られた電磁力を構造解析へ転送する操作や、構造解析で得られた振動板の振動速度を音響解析へ転送する操作は、各システムをドラッグ&ドロップで接続するだけで実施できます(図2)。

図2:Ansys Workbenchによる連成解析フロー

イヤホンモジュールの解析例

振動板径がΦ10mm程度のイヤホンモジュールの動作時の解析例を示します。本解析例は図2に示すように電磁場解析→構造解析→音響解析と順に各解析を実施する片方向連成解析であり、各解析場は独立しています。よってボイスコイルの変形振動により電磁場が変化する効果など(ボイスコイルに生じる誘導起電力など)は考慮されません。

電磁場解析

まずAnsys Maxwellを使用した電磁場解析モデルを図3に示します。本解析では、Z軸を対称軸とした2次元軸対称モデルによる過渡磁場解析を実施しています。解析対象は、電磁場特性への影響が大きい永久磁石、ポールピース、ヨークおよびボイスコイルのみとしています。通常駆動時を想定し、ボイスコイルに図4に示す400Hzの正弦波電流を印可した場合の磁束密度分布およびローレンツ力を計算しました。

解析で得られた結果を図5-1、図5-2に示します。磁束密度の分布結果(図5-1)から、永久磁石よりヨーク、磁気ギャップ、ポールピースへの磁束の流れを評価することができます。またボイスコイルに作用するローレンツ力を評価することが可能です。

なお本解析は過渡磁場解析であるため、磁束密度やローレンツ力はまず時間変化データとして得られますが、後続の構造解析では周波数応答解析を使用することから、構造解析には、計算されたローレンツ力を離散フーリエ変換(DFT)した周波数領域データが引き渡されます。そのため図5-2に示すローレンツ力の分布はDFT後の400Hz成分の結果を示しています。

図3:電磁場解析モデル(2次元軸対称)

図4:ボイスコイルに設定した電流(400Hzで11周期まで計算を実施)

図5-1:解析結果:磁束密度分布(t=0.025[s])

図5-2:解析結果:ローレンツ力分布(DFT処理後で400Hz、位相90deg)

構造解析

続けて、電磁力によって駆動される振動板の構造解析を実施します。本解析では3次元の周波数応答解析を用いて振動特性を評価します。図2に示したように、Ansys Workbenchの解析システム管理画面(プロジェクト概念図)において、Ansys Maxwellの電磁場解析システムとAnsys Workbench Mechanicalの構造解析(周波数応答)システムを接続することで、電磁場解析で得られた電磁力を物体力密度(単位体積当たりの力)として構造解析に転送できます。データ転送時に必要とされる処理(DFT処理、2次元モデルデータの3次元モデルへ展開、およびマッピング(メッシュ差異を考慮した補間処理))はAnsysによって自動的に実行されるため、ユーザ側で煩雑な作業を行う必要はありません。

図6に構造解析モデルを示します。電磁場解析でモデル化した部品に加え、構造振動に大きく影響を与える振動板やフレームなどをモデル化しています。なお、ボイスコイルの偏心を抑制するスパイダーはモデル化せず、ボイスコイル側面に対して軸方向以外の変形を拘束する境界条件にて表現しています。また、ヨークの底面が固定されています。

加振条件として、図7に電磁場解析から展開・マッピングされた電磁力(400Hz成分の物体力密度)を示します。図5-2のローレンツ力分布と良好に一致しており、電磁場解析結果が適切に構造解析モデルへ転送されていることが確認できます。

図8に構造解析結果として得られた振動板の振動速度振幅(400Hz)を示します。

図6:構造解析モデル(断面表示)

図7:構造解析にマッピングされた物体力密度(400Hz、虚部)

図8:構造解析で得られた速度分布(400Hz、実部)

音響解析

最後に、音響解析により振動板から放射される音圧レベルを評価します。Ansysの音響解析機能を用いた音響解析モデルを図9に示します。Ansysの音響解析では有限要素法を用いるため、音が伝搬する空気領域にメッシュを作成しています。なお、本解析では片方向連成として、空気は振動板の振動に影響を与えないものと仮定しています。そのため、イヤホンモジュール内部の空気はモデル化していません。また、本イヤホンモジュールは自由音場にあるものとし、空気の外周部に吸収要素(PML要素)を配置することで、音波を吸収し、反射のない境界条件を実現しています。

図2に示したように、Ansys Workbench Mechanicalの構造解析(周波数応答)システムと音響解析(周波数応答音響解析)システムを接続することで、構造解析で得られた振動速度を音響解析における振動速度音源として転送できます。図10に、構造解析からマッピングされた振動板の振動速度を示しますが、図8に示した構造解析結果と良好に一致しており、構造解析結果が適切に音響解析モデルへ転送されていることが確認できます。音響解析によって得られた音圧レベル分布を、図11に示します。

図9:Ansysによる音響解析モデル(メッシュ)

図10:音響解析にマッピングされた振動速度(400Hz、実部)

図11:Ansysの音響解析で得られた音圧レベル結果(400Hz)

なお、音響解析手法として境界要素法(BEM)を使用した音響解析ソフトウェア「WAON」を用いて全く同様の解析を実施することも可能です。WAONのWorkbenchインターフェースを利用することで、図12に示すようにAnsysと同様の解析フローを構築することができます。BEMでは今回のような自由音場解析において、空気領域外周部への吸収要素の配置などの境界条件設定が不要であるため、モデル化を容易に行うことができます。WAONを用いて同様の解析を実施した際の音圧レベル分布を図13に示しますが、Ansysの音響解析結果と比較してほぼ同等の音圧レベルが得られていることが確認できます。


WAONの詳細については、製品ページ(https://www.cybernet.co.jp/waon/)をご参照ください。

図12:WAONのWorkbenchインターフェースによる連成解析システム(左)とWAONの解析モデル(右)。Ansysの音響解析と同様にAnsys Workbench Mechanicalの構造解析(周波数応答解析)とのシステム接続で振動速度結果の転送が可能(左)。WAONでは境界要素法を使用しているため、音波の放射面・反射面のサーフェスメッシュ(境界面メッシュ)のみで音響解析が可能であり、本モデルではさらに結果取得のためにのみ用いられるメッシュ(観測点メッシュ)を境界面メッシュの周囲に配置している(右)

図13:WAONの音響解析で得られた音圧レベル結果(400Hz)

参考文献

本解析例はスピーカの通常駆動時の評価のため、ボイスコイルに明示的に電流を与えた解析を実施していますが、同様の解析手法にて例えばスピーカの非駆動時におけるプリント基板の配線パターンにより生じる誘導起電力に起因したノイズを評価するような解析も可能です。詳細は以下の参考文献をご参照下さい。
Multiphysics Analysis of Induced Acoustic Noise in an Earbud Speaker

関連する製品

MORE

関連する解析事例

MORE

関連する資料ダウンロード

MORE

関連する解析講座・辞典

MORE

あなたへのおすすめ

Ansys、ならびにANSYS, Inc. のすべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、ロゴ、標語は、米国およびその他の国におけるANSYS, Inc. またはその子会社の商標または登録商標です。その他すべてのブランド名、製品名、サービス名、機能名、または商標は、それぞれの所有者に帰属します。本ウェブサイトに記載されているシステム名、製品名等には、必ずしも商標表示((R)、TM)を付記していません。 CFX is a trademark of Sony Corporation in Japan. ICEM CFD is a trademark used by Ansys under license. LS-DYNA is a registered trademark of Livermore Software Technology Corporation. nCode is a trademark of HBM nCode.