CYBERNET

解析事例

構造解析

CAE活用推進

カシオ計算機株式会社 様

自動化の取り組みが理想のフロントローディングを実現!
設計者がストレスフリーで解析を活用できる

カシオ計算機株式会社 様

概要

腕時計や楽器など、精密な製品を設計・製造・販売するカシオ計算機株式会社 様。
数多くの部品で構成される製品の信頼性を担保するためにはCAEによる解析が欠かせません。
しかし、わずかな設定ミスにより、数十時間に及ぶ解析がすべてやり直しになるなど、手戻りがたびたび発生していました。
同社ではサイバネットのサポートを得ながら解析プロセスの自動化・効率化を推進し、大きな成果を上げました。

導入前の課題

  • 設計初期に設計者自身がCAEによる解析を行うことで、フロントローディングを進めたい
  • 部品点数が多い品目では、解析設定の手間が多く、ミスが起こりやすい
  • 条件設定ミスや設定漏れにより、手戻り(再解析)が発生している

 

導入効果

  • 必要な項目をワンクリックで設定可能にしたことで、設計者の負荷を軽減
  • 設定ミスによる手戻りが減ることで最大40%の作業や計算時間の削減が見込める

(左から)畠 祥悟様、成田 結香様、遠藤 将幸様

今回お話をお伺いした方

カシオ計算機株式会社

時計事業部 時計開発統轄部 技術開発部

デジタルエンジニアリング開発室

リーダー 遠藤 将幸 様

畠 祥悟 様

成田 結香 様

ご利用中の製品・サービス

1.背景と課題

設計と解析の理想であるフロントローディングを目指すも、新たな負荷増大につながった

世界初の「小型純電気式計算機」の製品化にはじまる、カシオ計算機の経営理念は「創造貢献」。
腕時計に「タフネス(強靭性)」という新たな価値観をもたらしたG-SHOCKをはじめ、同社の製品は新しい文化や市場の創造に大きな役割を果たしてきました。

同社が設計部門の一部にCAEによる解析を導入したのは、2010年ごろのことです。活用が進むにつれて、解析を設計段階から取り入れ、手戻りを減らす「フロントローディング」の重要性が社内に浸透していきました。2018年には全社的なCAE導入がスタート。こうした取り組みを支えてきたのが、デジタルエンジニアリング開発室 CAEグループです。

遠藤 将幸様

「私たちの役割は大きく3つあります。CAE解析の実施、設計者向けのCAE教育プログラムの提供、そして設計者自身が行った解析の妥当性チェックです。中でも力を入れているのが設計者によるCAE解析の実現に向けた支援です。解析ツールにAnsysを採用する当社は、サイバネットさんのセミナーテキストや、自社の過去データを流用した教材を活用した社内教育を推進。すでに設計者の半数が初期教育を完了し、CAE活用の機会も増えています」と、遠藤様は話します。

こうした中、新たな課題として浮上したのが、設計者の負荷増大や条件設定のミスや漏れによる解析やり直しへの対応でした。

「例えば楽器の場合、ねじだけでも400本以上あります。
落下衝撃解析を行う際にはすべてのねじに関する複数の条件設定を正しく行う必要があります。しかし、慣れていないと設定ミスや設定漏れが避けられないのが実情です。設計者自身が解析を行う場合、私たちが設定や結果を確認することで、解析の精度を維持していますが、そこで設定ミスが見つかり、再解析が必要になることも少なくありませんでした。Ansysは設定項目が多く、設計者に「間違いない条件設定」を求めるのは、私自身、心苦しく感じることも多いです。フロントローディング推進には、根性論だけではない新たな方法論が必要であることは間違いありませんでした(遠藤様)」

 

フロントローディング設計によりCAEの工数が開発初期に増大

2.選定理由

「高機能」と「使いやすさ」を両立するため、ツール内製化とカスタマイズを決断

時計、キーボード(楽器)、電卓、電子辞書など「手に持つ」用途の製品を多く持つ同社において「タフネスさ」は重要なキーワードの一つです。例えば、学生がよく利用する関数電卓や電子辞書の場合、ポイっと机に投げたり、ポケットに入れて持ち歩いたりすることもあります。実際の使用場面を想定し、長期間安心してお使いいただける強度を常に追求してきました。

同社の衝撃解析に大きな役割を果たしてきたのが、落下試験のシミュレーションに強みを持つAnsys LS-DYNAです。衝撃解析の省力化に向けてまず注目したのは、解析の簡易化だったといいます。

畠 祥悟様

「当社が解析に使用している AnsysLS-DYNA は、多様な目的に対応できるツールです。その一方、なんでもできてしまうという強みは、設計者によるツール利用のハードルにもなっていました。私たちがまず考えたのは、必要最小限の条件設定だけで解析を行うような仕組みを構築することでした。しかし、この考え方では設計現場の細かなニーズに柔軟に応じることは困難です。そこで、条件設定自体を自動化できないかと考えるようになりました(畠様)」

自動化の実現に向け同社は、Ansysのカスタマイズ機能であるApplication Customization Toolkit(ACT)を新たに採用。使い慣れたAnsys LS-DYNAをベースに、多様な機能拡張が行えることがその理由でした。また、社外への開発委託ではなく、ACTによる自社開発(内製化)を目指しました。 「自動化の構築に向けて、当初“自社で構築する” か“サイバネットさんに委託をする” かが悩みどころでした。コストも重要な要素ですが、多様なニーズに応える必要がある自動化は『自社内でのノウハウ構築が必要になる』と判断し、内製化を決断しました(畠様)」

 

3.工夫や効果

「設計者が楽になること」を最優先に設計生成AIとサイバネット作成のスクリプトサンプルをもとにツールを制作し、再解析をゼロに

ACTによるツール開発が本格的にスタートしたのは、2023年9月のこと。学生時代の基礎的なプログラミング教育の受講以外、実務等でのプログラム経験がない畠様は、サイバネットから提供された技術資料やサポートをフル活用するとともに、生成AIによるプログラミング開発を行いました。

成田 結香様

「しかし生成AIだけでは、Ansysのコマンドに対応したコーディングは困難です。この問題を解決する上で大きな役割を果たしたのは、サイバネットさんから提供いただいたスクリプトのサンプルでした。こうした力強い伴走がなければ、条件設定の自動化そのものが難しかったはずです(畠様)」

そして、ツール開発でなにより重視したのは、「設計者が楽になること」という視点でした。

「私は新人として入社後すぐにCAEグループに配属されました。1年ほどCAE業務を行いましたが、別の業務を担当することになり、CAE業務からは数年離れました。自動化の取り組みが本格的にスタートするタイミングで、CAE業務を再度担当することになりましたが、離れていたことで解析ツールの操作方法もほぼ忘れかけていました。その経験を活かし、“ストレスを感じること無く使える自動化” を目標として開発を行っています(成田様)」

 

ねじ設定の自動化:ボタンひとつで設定が完了する

ACTによる条件設定自動化の効果は、大きく二つの観点に分けられます。一つは設定ミスや設定漏れによる解析やり直しの回避、もう一つは条件設定に関する作業の大幅な省力化です。

「楽器のような大きな製品の落下解析は、40 ~ 50時間かけて行われることも珍しくありません。金曜の夜に解析を開始し、月曜の朝に出社して解析結果をチェックしたところ、1本のねじの設定が間違っていることが判明した際は、非常に落胆します。さらに解析のやり直しは、開発スケジュール全体に大きな影響を及ぼします。条件設定の自動化の効果としてまず挙げられるのは、このような条件設定のミスや設定漏れによる解析やり直しがほぼなくなったことです。もう一つが、条件設定の自動化に伴う業務の省力化です。我々のシミュレーションでは、作業時間の削減や、やり直しによる計算時間の削減など、40%ほどの工数削減を期待しています。省力化による効果は、CAE解析を専門的に行う我々にとっても大きな成果につながっています(遠藤様)」

加えて、落下解析に必要になる「床面設定の自動化」にも取り組みました。落下解析では、衝突面設定をはじめとする3Dモデル作成が必要になります。同社では製品のサイズに応じて床面を自動設定するツールも開発し、設計者の業務負荷軽減を追求しています。

楽器品目など400点以上のねじがあっても、設定漏れがほぼゼロに

4.今後の展望

すべての製品に"確かな強さ"を。解析の裾野を広げ、より高品質な製品づくりへ

CAEグループでは、条件設定自動化ツールを含め、これまでに20近くのツールをACTで開発し、業務の省力化に活用しています。こうした取り組みの先に同社が見据えているのは、"オールカシオ"の観点で解析できる製品を増やし、より高い品質の製品をお客様へ届けることです。

「自動化によって開発者の負担を軽減し、誰でも品質の高い解析ができる環境を整えていきたいと考えています。解析環境が整い、一件あたりの時間が短くなれば、設計者自身が事前に確認しながら設計を進められるようになります。安心感を持って判断できますし、より多くの製品に"確かな強度"を担保することができます(遠藤様)」

さらに、解析できる製品が増えることは、技術の蓄積という面でも意義があるといいます。「さまざまな結果が出てくれば、それを比較・分析することで、新たな設計指針やメカニズムの解明にもつなげられます。数値化されたデータをきちんと理解していくことが、次の製品開発にも活きてくると考えています(遠藤様)」

今後同社は、ACTやPyAnsysによるカスタマイズに関するユーザー間の情報共有も積極的に図っていきたいと考えています。

「当社に限らず、解析自動化に取り組む企業は少なくないはずですが、情報としてはあまり外に出ていないのが実情です。効果検証の観点も含め、今後さまざまなユーザー企業と情報共有を図っていきたいと考えています。解析自動化に関心をお持ちの担当者様は、ぜひ当社またはサイバネットさんまでご連絡ください(遠藤様)」

お客様プロフィール

カシオ計算機株式会社
1957年に世界に先駆けて小型純電気式計算機の製品化に成功した同社の歴史はイノベーションの歴史でもある。現在はG-SHOCKをはじめとする時計事業、関数電卓などのEdTech(教育)事業、キーボードなどのサウンド(楽器)事業を中核に事業を展開。近年は、メンタルウェルネス市場をターゲットとしたAIペットロボットの開発や画像処理やAI解析を通して医療の高度化を目指すメディカル事業などの新領域にも力を入れている。


事業内容
時計、電卓、電子辞書、電子文具、電子楽器、その他の製造・販売
本社所在地
東京都渋谷区本町1-6-2
設立
1957年6月
従業員数
8,396名(連結・2025年9月現在)
Webサイト
https://www.casio.com/jp/

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