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キャビテーション(きゃびてーしょん)
英訳:Cavitation
キャビテーションとは、液体の流れにおいて、圧力が下がる(飽和蒸気圧以下に低下する)ことによる泡の発生と、圧力の回復(高くなる)による泡の崩壊が短時間でおきる物理現象のことで、空洞現象とも言います。
この圧力の変化は液体を高速で流したり、物体を液中で高速に運動させる場合に起こります。
また発生時には気泡核(泡の核になる100μm以下の気泡)の有無によっても泡の発生しやすさが変わります。
キャビテーションが発生すると流体機器の性能低下や振動・騒音の発生、壊食の発生につながり、深刻なダメージを与えます。
例えばターボ機械などでプロペラが高速回転することによってキャビテーションが生じた場合、流れが想定されたものから変化し、設計された推進力や効率が発揮されません。

CFX多相流トレーニングガイド_レクチャー11(p.11-59)より引用
また発生した泡は圧力の変化に応じて膨張と収縮を繰り返しながら小さくなっていきますが、その過程で硬い物質表面近くの泡は粘性と表面張力の作用で物質表面に張り付きながら泡の遠い側がくぼみ、ジェットの勢いで物質表面に激突して分裂します(下図参照)。

このジェット流によって物質表面には壊食(キャビテーションエロージョン)が発生します。また気泡消滅の際に発生する瞬間的に非常に高い圧力によって騒音や振動も発生します。
このような現象が機器運転中は常時繰り返され、小さな爆発が常時発生している状態になります。そのため長時間経過すると機器の表面がぼろぼろになり、端が欠けたり穴が開いたりすることもあります。

CFX多相流トレーニングガイド_レクチャー11(p.11-58)より引用
大きな衝撃が生じることを利用して結石の破砕などに利用されています。
また超音波でキャビテーションを発生させて物体表面から汚れを落とす超音波洗浄機も、半導体や精密機器部品の洗浄に利用されています。
キャビテーションの解析は、気液二相流(混相流)の一つである相変化の解析となります。物性は水(液体)と水蒸気(気体)の混合物として定義します。
流体解析では圧力場の修正とキャビテーション発生の有無や発生箇所の特定が可能です。しかし実際に気泡が崩壊する過程や、その結果として生じるジェット流や壊食を直接解析することはできません。
壊食については別途、腐食モデルによる解析を行うことも考えられます。
解析を収束しやすくするために、まずは非キャビテーション解析(水蒸気の体積分率を0と定義してキャビテーションを考慮しない解析)を行い、その結果を初期条件としてキャビテーションを考慮した解析を行うこともあります。
Ansysにおける取扱い
- Ansys FluentおよびAnsys CFXでは混相流機能の1つとしてキャビテーションを取り扱うことが可能です。
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