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星薬科大学 様
「性能が高く、かつ作りやすい」錠剤設計方法の研究にANSYSを活用
複雑なものを複雑なまま扱えるシミュレーション技術に期待

CAEのあるものづくり Vol.19|公開日:2013年11月
目次
- 「性能が高く、かつ作りやすい」錠剤設計方法の研究に、コンピュータの予測技術を活用
- 製薬業界で注目が高まる「デザインスペース(設計領域)」に関する研究でAnsysのシミュレーションを採用
- デモンストレーションで、錠剤内部の残留応力が、本当に算出されるのを確認したことが導入の決め手に。
- 学会での反応は良好。共同研究の引き合いも。
- 複雑なものを複雑なまま扱えるシミュレーション技術に期待。今は、1人でも多くの製剤研究者に興味を持ってもらうことが重要。
今回のインタビューでは、星薬科大学様にご協力いただきました。
星薬科大学は1911年、創立者の星一氏が星製薬株式会社を設立した際に医薬品の創製、生産、供給、管理を担える人材を育成するための教育部門を社内に設置したことに始まります。それから100年以上もの間、「世界に奉仕する人材育成の揺籃である」という教育理念のもと、薬学の発展に貢献する優秀な人材を多数輩出されてきました。
今回は、新剤形の設計プロセスを最適化するために、応答曲面法や応力シミュレーションなど、コンピュータによる予測技術を活用されている「薬剤学教室」の皆様にお話を伺いました。
今回お話いただいた方々
薬剤学教室 教授 高山 幸三 先生
林 祥弘 様
乙黒 沙織 様
(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)
「性能が高く、かつ作りやすい」錠剤設計方法の研究に、コンピュータの予測技術を活用
皆様の研究内容をお聞かせください。
林 - 私達は薬剤学教室に所属しており、その中で製剤設計と呼ばれる研究テーマに取り組んでいます。
製剤設計とは噛み砕いて言えば、「いかにして使いやすい薬を作るか」、「どのようにすれば要求スペックを満たす製剤を製造できるのか」を研究する分野です。医薬品に要求される項目としては、例えば錠剤なら、「硬さ」「溶けやすさ」「保存安定性」「大きさ」「味」などが挙げられます。医薬品はこれらの項目を全て、一定水準以上にしなければいけません。
しかも医薬品は、その製品ごとに製造方法が異なると言っても過言ではありません。例えば、有効成分Aで優れた錠剤ができたとしても、有効成分Bで優れた錠剤ができない場合が多々あります。このため医薬品は、製品ごとに最適な製造方法を確立させる必要があるのですが、今日の製薬業界では、新薬の最適な製造方法を見つけるために試行錯誤を繰り返しており、多大な時間がかかっています。
そこで当研究室では、最適な製造方法の探索に、統計学を応用することを試みてきました。
例えば、未知の薬物の最適な製造条件を予測するために、「ニューラルネットワーク」と呼ばれる技術を用いてデータベースを構築したりしています。
また他にも、実験計画法、応答曲面法、ベイジアンネットワーク、自己組織化マップといった様々な手法を製剤学に応用してきました。特に実験計画法や応答曲面法の利用は、製剤分野でもグローバルスタンダードになりつつあります。
製薬業界で注目が高まる「デザインスペース(設計領域)」に関する研究で、Ansysのシミュレーションを採用
高山 - 近年、製薬業界ではデザインスペース(設計領域)という概念が非常に注目されています。医薬品の製造・販売には厚生労働省の認可が必要となりますが、従来は処方や製造プロセスを変更する場合、その都度申請が必要でした。どんな細かい変更でも申請が求められる上に、承認に時間がかかっていました。
ところがデザインスペースという概念を使えば、申請内容にある程度幅を持たせることができます。これにより製薬メーカーは、開発コストを抑え、より早く新製品を市場投入できるようになります。
しかし、適切なデザインスペースを定義するには、その製品の性質を左右するような、重要な工程や材料の品質特性(重要品質特性/ CQA: Critical Quality Attribute)を理解する必要があります。それには膨大な数の実験データが必要になるため、より効率化するために実験計画法などの統計学的な手法が用いられるようになりました。
林 - その中で、私はデザインスペースの「境界」の信頼性をテーマに研究しています。
錠剤の製造工程には品質のバラツキやロスがつきものです。そこでデザインスペースより、どれくらい内側の領域で設計すれば、要求仕様を満たしつつロスが少ないものづくりができるか。自動車業界などでは当たり前のように取り組まれている課題ですが、製剤設計でも適用できるよう、最適化ツールやAnsysのシミュレーションを使って研究しています。
乙黒 - 私は固体分散体と呼ばれる、難溶性の薬物を溶けやすくする技術について研究しています。固体分散体は、薬物を結晶状態から少し崩して、非晶質状態(ガラス状態)にして、高分子担体に分散させることで溶けやすくするものです。しかし時間が経つと結晶に戻ってしまうなど保存性に問題があったり、そのままでは打錠に適さない材料物性だったりと課題があります。
そこで最適化ツールを使って、最も保存性が高く、材料物性も適切になるような固体分散体の処方を研究しています。
デモンストレーションで、錠剤内部の残留応力が、本当に算出されるのを確認したことが導入の決め手に。
Ansysを導入された経緯についてお聞かせください。
林 - Ansysは今から3年前に導入しました。前述の通り、デザインスペースの定義に必要なCQAを求めるには統計学が有効なのですが、それだけでは数学的な根拠が不足しています。
そこでAnsysのような数値シミュレーションが有効ではないかと考えました。例えば…
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