CYBERNET

解析事例

構造解析

電磁界解析

イリソ電子工業株式会社 様

シミュレーションによる本格的な試作レスで、振動と熱に強い高速伝送コネクタ開発を実現

イリソ電子工業株式会社 様

概要

設計段階で高速信号品質と構造信頼性を最適化できる――。
イリソ電子工業株式会社では、自動車分野を中心にコネクタの開発・製造を手がけ、世界中の主要サプライヤーに製品を提供しています。
CAE解析を活用した開発体制を確立し、高速通信時代に求められる車載コネクタの信頼性設計を実現しています。

今回は、開発のスピードと品質を両立し、次世代の自動車技術を支えるものづくりについてお話をお伺いしました。

(左から)末久様、寶槻様、矢部様、日下様

今回お話をお伺いした方

 

イリソ電子工業株式会社

技術本部 技術部 技術管理課 末久 優 様
技術本部 技術部 技術2課 矢部 寛大 様
技術本部 技術部 技術2課 寶槻(ほおつき) 雅樹 様
技術本部 開発部 開発一課 日下 和成 様

1.自動車の電子化を支える高速伝送コネクタを開発

振動や温度変化への対応+高速伝送を両立するコネクタ開発が強み

末久

近年、自動車の電子化・電動化が急速に進み、さまざまな電子制御ユニットやセンサーが相互に情報をやり取りするようになっています。特にカーナビのようなシステム(インフォテインメント)、自動運転や高度な運転支援システム(ADAS)などの普及に伴い、車載ネットワークには電気的な接続だけでなく、高速かつ大容量の通信が求められています。電子部品間をつなぐコネクタにも、これまで以上の信頼性と伝送性能が必要とされています。
また、当社の特徴的な製品群の一つが「B to Bコネクタ(Board to Board:基板対基板コネクタ)」で、電子機器内で回路基板同士を電気的に接続する役割を担っています。

寶槻

技術2課では、電力供給だけでなく高速データ通信にも対応できる特殊なB to Bコネクタを開発しています。車載製品では振動環境下での使用が前提となるため、接続部の変位(位置ズレ)を吸収できるフローティングコネクタが必要です。弊社の代表製品のひとつである「Z-Move™(ジィームーブ)」コネクタは、X・Y方向(横:基板平面方向)に可動するフローティング機構に加え、接点が固定されたままZ方向(上下)の動きを吸収できる構造を備えています。この構造は、組み立て時の位置合わせ許容度も向上します。自動車のような振動環境下でも安定した接続を維持できると同時に、お客様の自動組み立てラインへの導入を容易にするメリットも提供しています。

フローティング機構を備える「Z-Move™」コネクタ

「Z-Move™」の機構

高周波解析環境の整備に向け、Ansys HFSSを採用

末久

導入は2000年代後半です。当時の市場環境を振り返ると、カーオーディオ関連のコネクタが中心で、それほど高い通信速度は求められていませんでした。ところが、車両制御の電子化や情報系システムの高度化が進むにつれて、高速伝送対応コネクタのニーズが高まり、従来の開発手法では限界が見えてきました。
導入の直接的なきっかけは、アメリカ・ヨーロッパ方面のお客様からの対応要求だったと聞いています。加えて、Ansys HFSSが電子機器分野で事実上の業界標準ツールとして広く使われていたことも導入の決め手となりました。従来は、試作品を製作し、実測評価によって改良を重ねる、いわゆる“カットアンドトライ” が主流でしたが、高速伝送対応コネクタの開発に際しては、Ansys HFSSによる事前解析環境を整備しました。同時に、オシロスコープなどの評価設備も導入し、社内で設計から事前解析、検証までを一貫して行える開発体制を構築しました。

2.徹底的な高速信号解析により理想的なコネクタ形状を設計

インピーダンス値のばらつきを低減し、信号の安定化をはかる

寶槻

Ansys HFSS は大きく二つの用途で使用しています。一つめは設計段階での高速信号解析です。
コネクタの設計段階では目標値達成のためにさまざまな仕様変更を繰り返します。変更のたびに解析を実施し、変化を確認し、目標とするスペックに到達するまで解析を続けます。このような複雑な解析は手計算では不可能なため、高速伝送対応コネクタの設計にはCAEが不可欠です。
解析では、主に三つの指標を重視しています。信号の減衰量を表す「挿入損失」、入力された信号がどれだけ反射して戻るかを示す「反射特性」、そして「インピーダンス(電気抵抗)」です。
なかでもインピーダンスは、信号経路全体の整合性を示す重要な指標で、これが適正であれば反射が抑えられ、挿入損失も安定します。設計時には、TDR法(Time Domain Reflectometry:時間領域反射測定法)を用いてコネクタ内部のどの位置で反射が生じているのかを時間軸で可視化し、インピーダンスのばらつきを把握します。全体のインピーダンス(抵抗値)が一定の値に近づけば近づくほど信号はロスなく安定して伝わるようになります。
特に、位置補正機能を持つコネクタは、一般的なコネクタより端子形状が複雑で、途中で太さが変化する部分もあります。これまでの開発経験から、有利な形状はある程度把握していますが、実際の設計では解析を重ねながら微調整を行い、目標値に到達するまで理想的な特性を追求していきます。

3.実使用環境での個別検証にも シミュレーションを活用

お客様の設計用のモデル(等価回路)提供にもAnsys HFSSを活用

寶槻

もう一つの用途は、お客様からのご依頼対応です。
お客様が選定されたコネクタで、品質的に問題がないか判断いただくための解析をしています。特に情報通信系の高速信号では、コネクタを通過する際の損失が重要になります。コネクタは基板と基板の間に挟まれる構造のため、基板とは異なる形状や材質によって信号が減衰する場合があります。このため、「実際に使用した場合に、このコネクタで問題なく通信できるか」を確認してほしいというお問い合わせを多くいただきます。
また、お客様の設計を支援する目的で、コネクタの「等価回路モデル」も作成しています。
回路図を作成する際には、コネクタの抵抗値、容量、インダクタンス(LCR成分)などの電気的なパラメータが必要になります。そこで、Ansys HFSSの解析結果からこれらの特性を抽出し、内部構造情報を含まない簡略化モデルとして整え、SPICE(回路シミュレーション用プログラム)やIBIS(入出力バッファ情報仕様)といったフォーマットで提供しています。

矢部

お客様からは「自社で解析を行いたいのでコネクタのモデルがほしい」というご要望をよくいただきます。しかし、モデルそのものには当社のノウハウが含まれるため、そのまま提供するわけにはいきません。そこで暗号化したモデルとしてお渡ししています。サイバネット様から暗号化の手順を教わり対応を進めていますが、実際にお客様の解析環境でモデルを読み込む際にうまく動作しないケースもあり、現在も最適な方法を模索しているところです。

実際の解析画面

4.解析で目標達成できれば実測でも品質を満たすという信頼感

試作用基板の製作をなくし、開発期間を大幅に短縮、コスト削減にも成功。

寶槻

最大の効果は「試作せずとも結果が分かる」という点です。従来は試作品を製作した後に目標数値を満たしているか実測していました。しかし、実測に使用する基板は高価で、コストリスクが大きいのが課題でした。これまでのAnsys HFSS使用経験を通して、解析で目標数値を満たしていれば実測でも合格範囲に入ることを確認しています。そのため現在は、解析結果を信頼して開発を進めています。
また、営業部門から複数のサイズやバリエーションのコネクタの開発要望がある場合は、まず最も厳しい条件(伝送経路が長く信号損失が大きくなりやすいコネクタ)から解析を行います。この目標をクリアできれば、他のコネクタも一定以上の性能が担保できる見通しが立ちます。加えて、念のため他のコネクタについても解析を実施し、最適化を図っています。

末久

導入前は、試行錯誤を一年近く費やすこともありました。たとえば、製造の都合で端子の太さが途中で変化する構造を採用したいという案件では、電気特性との両立が難しく、最終的に目標を達成できる形状を決定できませんでした。端子製作に必要な金型作成だけでも一回に約二~三週間かかるため、金型製作と試作を何度も繰り返すことは大きな負担です。現在のように事前解析で仕様を確定してから試作品を製作することにより、開発期間を大幅に短縮し、同時にコスト削減にもつながっています。

5.Ansys Mechanicalでコネクタ接触部の構造解析を実現

目に見えない力の流れを可視化し、設計段階で問題点を特定

日下

私の部署では、コネクタの構造解析にAnsys Mechanicalを使用しています。
コネクタは力を受け止めながら確実に接続を保つ構造の部品でもあります。また、嵌合(コネクタ同士を嵌め合わせて接続すること)や抜き差しの際には微小な変形や応力が発生し、金属端子やはんだ部では塑性変形(外力を除いても元に戻らない変形)も起こります。こうした実際の力の伝わり方を解析で再現するために、弾性解析だけでなく、塑性域まで正確に扱える解析環境が必要でした。
Ansys Mechanical導入の直接的なきっかけは、自動車メーカー様からのご要望でした。マイナス40℃から125℃といった厳しい温度変化の中で、はんだ部が破断しないかを確認する試験を行っていたのですが、単に「壊れなかった」では済まされず、「なぜ大丈夫なのか」という根拠を示す必要が出てきたのです。
Ansys Mechanicalでは、はんだや端子の局所的な応力集中、変形の進行具合、嵌合時の接触圧力分布など、目に見えない領域の“力の流れ” を可視化できます。これによって、設計段階で問題点を特定し、実際の試験や破壊検証の前に対策を講じることが可能になりました。

6.市場の開発スピードに応えつつ、新しい価値を生み出す

高速化への対応、産業機械分野へも注力

末久

製品開発のスピードが上がる中で、お客様ご自身による解析ニーズも増えています。そのため、HFSSで解析したコネクタモデルを暗号化し、インターネット上のデータベースに蓄積してダウンロードできるようにする仕組みづくりを進めたいと考えています。こうしたモデルをあらかじめ整備しておけば、お客様が早い段階で設計に取り掛かれるようになります。解析結果をデータベース化し、安全な形で共有することで、コネクタ選定から開発までの時間を大幅に短縮できるはずです。

寶槻

通信速度の要求は今後も上がり続けると見ています。現在は32Gbps対応を目標にしていますが、HFSSでは60 ~ 70Gbpsの解析も可能で、さらに高速な領域にも十分対応できると考えています。高周波特性と構造の両面から信頼性を確保しながら、次世代の高速伝送に対応したコネクタ開発を進めていきます。

末久

現在は車載分野が中心ですが、今後はロボットをはじめとした産業機械分野にも注力していく方針です。高信頼で高速通信が求められる分野では、当社の技術をより広く展開できると考えています。

サイバネットとの連携で、より実務に即した解析環境へ

末久

解析実行時の技術相談を、今後はより積極的に行っていきたいと考えています。実はいままでは、社内で試行錯誤しながら解決してきた部分も多く、今後はサイバネット様との連携を通して、より効率的に課題解決を進めていきたいと思っています。

寶槻

相談しやすい環境が整えば、その都度フィードバックを得ながら知見を社内に蓄積できます。そうした積み重ねによって解析効率をさらに高めていきたいです。Ansys HFSSの機能自体には十分満足していますが、今後はパラメータ設定の自動化など、効率化にも期待しています。サイバネット様と協力しながら、より実務に即した解析環境を築いていきたいですね。

解析結果を設計に生かし、スピード感を持った開発と高い品質を両立するその姿勢には、ものづくりへの確かな信念を感じました。さらに、社内設計だけでなく、お客様の解析ニーズに応える仕組みづくりにも積極的に取り組まれており、解析が技術と信頼を結ぶ重要な役割を果たしていることが印象的でした。
サイバネットは、こうした先進的な取り組みを支えるパートナーとして、今後も最適な解析環境の提供と技術支援を通じ、御社のさらなる発展をサポートしてまいります。

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