解析事例
半陰解法による不安定構造の接触解析
収束困難時に自動的に陽解法へ移行
こんな方におすすめ
- 収束困難時に陰解法から陽解法に移行して解析を続行したい
- 従来はあきらめていた非線形性の強い問題も解析したい
本稿では、収束困難時に陰解法から陽解法に移行して解析を続行する半陰解法(Semi Implicit)手法を用いた非線形座屈解析例をご紹介します。
解析の目的・背景
陰解法による構造非線形解析では収束問題は避けて通れません。ただし解析のすべての過程において収束困難が生じることは稀で、一部の過程で極度に収束性が悪化し発散してしまうケースが多いと思います。この一部の過程での収束を達成するために、接触やソルバー設定の調整を繰り返すことがあるかと思います。
このような問題に対して、Ansysでは半陰解法という手法をご用意しています。
半陰解法とは陰解法で収束が困難な場合に、陽解法に自動的に移行して解析を続ける手法です。収束困難な非線形性が短時間だけ発生するような問題に有用です。局所座屈などの構造不安定問題、飛び移り問題、材料挙動が突然変化する問題に対して有効と思われます。
解析手法
半陰解法ではまず陰解法で解析を実施し、時間刻みが最小時間ステップに到達しても解析が発散した場合に、陽解法に移行します。
ユーザーが設定する基準時間だけ陽解法での解析が進むと、陰解法での収束計算を実施し、収束が取れる状態になると陰解法に移行し、収束が取れない場合には陽解法を続行します。陰解法に戻ったあとに発散する状態に達した場合には、再び陽解法に移行するというように、陰解法と陽解法を自動で切り替えて解析を進めます。
なお、陽解法では中点法という計算手法を採用しています。
(図1)半陰解法の仕組み
解析モデルと解析条件
解析モデル・解析条件
タンクを模したモデルを作成しました。シェル要素を使用しています。上部の円弧のサーフェスモデルは剛体壁で、これを強制変位で押し下げてタンクをつぶす接触解析を行います。
(図2)解析モデル
半陰解法の設定
半陰解法は、今回利用したバージョン(2019R3)ではGUI未対応のためコマンドで設定します。
1行目が陽解法から陰解法に戻る時間の設定です。ここでは0.01秒で陰解法に戻るように設定しています。
2行目は陽解法における初期最小安定時間増分です。
半陰解法の解析段階での初期安定時間増分が設定した値になるように選択質量スケールファクター(マススケーリング)が設定されます。
なお、コマンドを変更することでファクターを直接設定することもできます。
(図3)半陰解法設定コマンド