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全固体電池とは? 全固体電池の未来に向けた設計/開発ソリューションを紹介
電気自動車(EV)のさらなる普及に向けた高寿命の自動車用バッテリー
全固体電池とは? 全固体電池の未来に向けた設計/開発ソリューションを紹介の概要
電気自動車(EV)のさらなる普及のために、自動車用バッテリーは高寿命、安全性、信頼性が求められており、さまざまな技術の研究開発が進められています。中でも全固体電池は、リチウムイオン電池に比べて高い安全性とエネルギー密度が得られるとして注目を集めています。
本記事では、全固体電池の基本からその進化、現状、未来展望、そして設計ソリューションについて解説します。
全固体電池とは?
電解質が固体となることで、リチウムイオン電池と比べると、発火や爆発のリスクが低く、長寿命、高いエネルギー密度、高い出力密度など高性能です。また、全固体電池は環境温度の変化による内部劣化も少ない特性を持ちます。一方、リチウムイオン電池は電解質が可燃性液体のために高温での安全性に懸念があります。また、低温環境では充放電性能が劣化します。
これらの特徴から、全固体電池は、特にEVのバッテリーとして期待されています。
全固体電池の起源と歴史
2020年代に入って全固体電池の量産を開始するメーカー(マクセル、FDK)も出てきており、性能向上のための研究開発も活発です。今後、性能が向上し価格が下がっていくにつれ普及すると期待されています。
全固体電池の種類
バルク型と薄膜型
薄膜型全固体電池は、真空蒸着法やスパッタ法などで製造した薄い固体電解質層を重ねた固体電池です。内部抵抗が低く、数万回の充放電が可能なサイクル特性を持ち、スマホなどのコンパクトな機器への利用が期待されています。
酸化物系と硫化物系
酸化物系電解質は、安定性が高いという特長があります。その一方で電極が硬く固体同士の結合が難しいため粒界抵抗は高いという問題があります。酸化物系電解質は、可燃性が低いため安全性が高くウェアラブルなど小型のデバイスに用いられることを想定しています。
硫化物系電解質はイオン導電率が高い特長を持ち、大容量化が可能なので、EV向け電池として期待されています。しかし、空気中の水分と反応して有害な硫化水素が発生するため取り扱いに注意が必要とされます。EVで実用化されるには、事故が発生した際の安全性の確保が大きな課題となっています。
全固体電池のメリットと課題
全固体電池の主なメリット
安全性
全固体電池は、リチウムイオン電池に比べ発火の恐れが低く安全です。リチウムイオン電池は液体電解質に可燃性の有機溶媒を含むため、なんらかの異常で高温になると発火の恐れがあります。
環境温度の適用範囲が広い
リチウムイオン電池の液体電解質は、低温での充放電性能の劣化や高温時の安全性に問題があります。一方、固体電解質は、安定性が高く温度変化によって性能が劣化したり、発火したりすることがありません。
急速充電
リチウムイオン電池では急速充電のために大きな電流を流すと発熱して、電池の劣化が進みやすいという課題があります。しかし、全固体電池は、高温に強く、化学反応による電極の劣化が起こりにくいため超急速充電に対応できます。
寿命が長い
リチウムイオン電池に比べて、化学反応による電池の劣化が起こりにくい特長があります。特に酸化物系電解質を使った全固体電池であれば、充放電による性能劣化が少なく、大幅な長寿命化が期待されています。
エネルギー密度
エネルギー密度とは、単位体積または単位重量当たりのエネルギー量です。単位体積当たりのエネルギー密度を体積エネルギー密度(Wh/m3)、単位重量当たりのエネルギー密度を重量エネルギー密度(Wh/kg)といいます。全固体電池は、リチウムイオン電池よりもエネルギー密度が高く、同じ大きさや重さであっても電池が長く持ちます。
全固体電池の課題
界面で接触を維持する
電池は、電解質と電極を常に接触させなければなりません。リチウムイオン電池のように液体電解質であれば多少電極が変形して位置が変わっても、隙間ができることはありません。しかし、全固体電池は固体電解質であるため、充放電に伴う膨張収縮等によって電極が変形した場合には隙間が空いてしまう恐れがあります。また、膨張などによって高い応力が発生した場合にはクラックが生じてしまう恐れもあります。
製造工程の整備
リチウムイオン電池の製造とは異なる設備、手順が必要となります。また、硫化物系電解質を使用する場合はと、大気中の水分と反応して硫化水素が発生する恐れがあるため、ドライルームなどの設備が必要です。
最適な材料探索
酸化物系電解質、硫化物系電解質のどちらもイオン伝導率の高い材料を探索することが課題となっています。イオン伝導率が低いと、正極と負極の間を電子が移動しにくくなるため出力が上がりにくくなります。
全固体電池の市場動向と将来展望
全固体電池市場の予測と電気自動車への影響
富士経済の調査によると、全固体電池の世界市場は2022年の60億円から2040年には3兆8,605億円に急拡大すると予測されています。
現在は酸化物系電解質を使った全固体電池が大半ですが、今後は硫化物系電解質の全固体電池が伸びていくと予測されています。
技術進化と新たな用途
硫化物系電解質の全固体電池は、電極の材料探索が進み安全性が高まるにつれて、EVへの搭載が進んでいくと予想されています。コストを下げるため、材料探索や製造プロセスの開発が必要なものの、まずは高級車に採用されるなど実用化が進むと考えられます。
さまざまな試行錯誤を繰り返しながら技術が進化していくため、開発を効率化するツールも必要されています。
サイバネットシステムの全固体電池開発ソリューション
- 高出力化のため未知の材料探索や組み合わせの検討が必要
- 最先端技術のため過去の知見を活用できない
- 製造プロセスが複雑で可視化や測定が難しい
- 従来の電池の製造プロセスや設備は使えない

充填・圧粉プロセスの解析
充填解析
粉体解析ツール「Ansys Rocky」を用いて、金型へ固体電解質を充填した際の混合状態や分散状態を解析できます。

Ansys Rocky にて球形粒子を多面体としてモデル化し挙動を解析
Ansys Rockyは離散要素法(Discrete Element Method, DEM)を使い、球形あるいは非球形からなる多数の粒子の挙動を効率的に解析します。シミュレーションできる対象は、錠剤、鉱石、土、食品、粉などで、かき混ぜたときの混合状態や、充填時のつまりや偏りなどを解析します。さまざまな製造条件をシミュレーションできるため、時間とコストをかけずに最適な製造条件を計算できます。
全固体電池では、粒子の弾塑性特性や圧壊特性、摩擦係数や吸着などの特性を指定して、微小圧縮試験や粒子配置などを計算できます。最適な金型の形状や粒径分布、充填プロセス後の粒子配置を計算します。

圧粉解析
「Ansys LS-DYNA」と「Ansys Workbench」アドインツールである「Multiscale.Sim」を用いて、圧粉プロセス後の粒子の状態を解析できます。
Ansys LS-DYNAは、落下や衝突など非線性の強い現象の時刻歴応答を解析するツールです。有限要素法解析ツールとは異なり、収束計算を必要としないため非線形の解析が可能です。短時間で局所変形解析や破壊や大変形、動的波動伝搬解析なども可能です。
Multiscale.Simは、実際の材料試験を行うことなく、仮想的な材料実験をもとに粉体の機械的な材料挙動を求めることができます。CADのモデルを使ってミクロモデルを作成し、Ansysでメッシュ作成、弾性率等の物性値を算出するための均質化解析機能を提供します。その後、均質化解析の結果をマクロモデルの物性値として適用して、計算します。
全固体電池の圧粉プロセスにおいて、粒子の充填率や変形の状態、配置、粒子間や金型との接触状態を解析できます。充填解析で得られた粒子配置はFEモデルに反映して解析します。
電極内部応力の解析
全固体電池の充放電の際に起きる、固体電解質の膨張や収縮、ひずみ、応力などを計算できます。Multiscale.Simによって粒子の数値材料試験を実施してマクロ材料物性の同定し、Ansys Mechanicalで計算します。熱膨張や収縮を可視化できるため、劣化の様子を観察できます。その結果を基に、寿命を向上させるための設計情報を検討できます。
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