
光通信ソリューション
光電融合
光電融合とは
コンピュータ同士がやり取りするデータ量が急増するなか、電子回路そのものは高性能化しても、チップの外と内をつなぐ“出入口(I/O)”の面積と電力損失がボトルネックになりつつあります。
そこで注目されているのが光電融合です。これは光で信号を運ぶシリコンフォトニクスを電子回路のすぐそばに配置し、同じパッケージの中に組み込む技術です。導波路・変調器・受光器・レーザといった光部品をチップ上にまとめて作ることができるため、小型・大量生産に向き、必要な電力を大きく抑えつつ帯域を広げられる利点があり、今後のAIデータセンターネットワークを支える次世代の光通信技術として注目されています。
この技術が実現すると、例えば以下のような業界でメリットがあると考えられています。

光電融合デバイスの進化のロードマップ
光電融合は、デバイスの進化の段階が5世代あると定義されています。
- 第1世代:Pluggable optics
電気インターフェースでASIC(Application-Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)と接続し、モジュールを着脱可能な段階です。今日の段階ですでに標準化されている技術です。 - 第2世代:On-board optics
光モジュールを基板上に直接搭載。電気配線を短縮し、高速信号でもロスが少ないメリットがあります。 - 第3世代:2.5D Co-packaged optics
ASIC(スイッチICやDSP)のすぐ横に光素子を並べ、シリコンインターポーザ経由で接続。電気配線距離をさらに短縮し、消費電力削減につながります。 - 第4世代:3D Co-packaged optics
光チップをASICに3D実装(積層)することで、より高密度で低遅延の接続が可能とされています。 - 第5世代:3D Co-packaged optics with integrated lasers
光素子とレーザー光源までもワンパッケージに統合。 - 第6世代:In-chip optics
電気(ASIC)と光の機能を同一チップに集積。真の「光電融合デバイス」が完成し、究極の小型化・低消費電力化・高性能化を実現します。
2025年時点で本格的に導入されているのは第1世代までで、現在の商用ネットワークの主流は第1世代であるといえます。第2・第3世代は、実証実験や限定的な採用が始まった段階で、それ以降の世代はまだまだ研究段階です。2030-35年頃を目途に、最終世代まで本格的な実装が進むとみられています。

第3世代(2.5次元CPO)

第4世代(3次元CPO)

第6世代
光通信設計者にとって、光電融合で設計・開発はどう変わる?
すでに光通信分野の設計に携わっている技術者にとって、光電融合の潮流は従来の開発プロセスに大きな変化をもたらします。
従来は光デバイス単体の特性評価や光ファイバー伝送の設計が中心でしたが、今後は高速電子回路との同時設計や、デバイスを含むシステム全体での性能最適化が不可欠になります。
例えば、光変調器ひとつをとっても、光学シミュレーションだけでなく電気的な駆動回路や熱影響まで含めたマルチフィジックス解析が要求されます。実際、薄膜LiNbO₃(ニオブ酸リチウム)製の光変調器の開発では、光学現象であるポッケルス効果(電気光学効果)を正確に取り入れるために電気と光の連成解析が必要となり、通常の光学FDTD解析だけでは対応が困難です。
光通信従事者はこうした新たな解析アプローチや、電子・光学の垣根を越えた設計手法を習得することで、光電融合デバイスの性能を最大限に引き出すことが求められます。言い換えれば、光電融合によって光学エンジニアはエレクトロニクスや熱解析など周辺分野の知識も踏まえた包括的な視点で設計する必要が生じるのです。
光通信以外の業界は、光電融合の登場でどう変わる?
一方、これまで光通信とは無縁だった他業界の設計者にとっても、光電融合技術の採用は大きなメリットと変化をもたらします。
例えば、高速デジタル回路やデータセンター機器の設計者であれば、ボード間・チップ間に光通信を取り入れることで電気配線による伝送距離や帯域幅の制約を克服し、システム全体の高速化・省電力化が期待できます。光を使うことで従来の電気信号では難しかった高速大容量のデータ送受信が可能となり、新しい製品アーキテクチャの実現に道が開けます。
ただし、光技術を取り入れることで設計上考慮すべきポイントも増えます。たとえば、光部品(レーザー、光ファイバー、導波路、フォトダイオードなど)の配置や実装方法、微小光学素子の位置合わせ精度、温度変化による光学特性の影響など、従来の電子機器設計にはなかった要素に対処する必要があります。
幸いにも、現在では光学シミュレーションツールや設計支援ソフトウェアが整備されており、電子回路CADと光学シミュレータを組み合わせて光電融合システムを設計・検証する環境が整いつつあります。光技術未経験の設計者でも、適切な支援ツールを活用することで、光電融合による設計革新に対応しやすくなっています。
総じて、他分野の設計者にとって光電融合は新たなチャレンジではありますが、それ以上に大きな利点(高速化・高帯域化)をもたらすため、今後は必要不可欠な技術要素となっていくでしょう。
光電融合についての設計・解析事例のご紹介
詳しくは以下ページにてご確認ください。
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