CAEを学ぶ
はじめての落下・衝突解析
LS-DYNAソルバーのプリプロセッサとしてWorkbench環境が利用可能になり、Ansys LS-DYNA はこれまで以上に多くの方々にご活用いただけるプロダクトへと進化しました。
はじめに
Ansys LS-DYNAとは、衝撃解析用として世界トップレベルのLS-DYNAソルバーをAnsysの操作環境に統合したプロダクトです。従来はMechanical APDL(旧Ansys Classic)環境専用のプロダクトでしたが、Ver.12.0よりWorkbench環境でも条件設定が可能となりました。(図1)

図1 Workbench環境で行なうLS-DYNAの条件設定
Ansys LS-DYNAの操作環境
Ansys LS-DYNA 12.0では、Workbench環境がプリプロセッサ用の操作環境として提供され、これまでのMechanical APDL環境、LS-DYNAの開発元であるLSTC社より無償提供されているLSPrePostと合わせ、3つの操作環境が利用できるようになりました。
これらの操作環境にて設定された内容は、LS-DYNAソルバー用のインプットファイル形式で一度出力され、そのファイルを使用して解析実行します。このインプットファイルに記載されているコマンドの内容については、LSTC社より提供されているキーワードマニュアルにて全て公開されています。(図2)
(※LS-PrePostおよびキーワードマニュアルの内容についてはサポート対象外になります。)
Workbench環境における操作手順と特徴
Workbench環境による操作手順は通常の構造解析とほぼ同じであり、これまで同環境で構造解析を経験された事があれば容易に使用できます。また、様々なWorkbenchモジュールにも対応しており、これらを活用する事による多くの優位点が挙げられます。以下に各設定プロセスにおける特徴をご紹介いたします。
1)モデル作成/インポート
Workbench環境では多くのCADインターフェースが提供されています。Plug-in対応のCADではダイレクトにモデルを取り込むだけではなく、ジオメトリのアップデート機能により形状変更時でも境界条件の再設定は不要です。パラメータ設定による形状変更にも対応しております。また、DesignModelerを使用する事によりWorkbench環境にて新規モデル作成やCADデータの修正も可能です。
(※DesignModelerおよび一部のCADインターフェースは別途ライセンスが必要になります。)

2)材料特性の定義
Workbench環境では、以下のようなLS-DYNA用の材料モデルが定義可能です。
- 線形弾性
- 等方性/直交異方性
- 弾塑性
- 2直線移動硬化/ 2直線等方硬化/多直線等方硬化/Johnson Cook
- 超弾性
- Mooney-Rivlin(2パラメータ)/多項式/ Yeoh / Ogden
また、剛体や破壊を伴う材料の設定も可能です。
これらの材料モデルは、Workbench環境のEngineering Dataにて定義します。線形弾性材料や基本的な弾塑性材料/超弾性材料は通常の構造解析で使用する材料データと同じ入力方式であるため、これまでWorkbench環境で使用していた材料データベースを有効に活用する事ができます。
3)メッシュ生成
Workbench環境の強力なメッシング機能が利用可能です。パッチ非依存やマルチゾーンといった高機能メッシュテクノロジーも搭載しております。また、ピンチコントロールや仮想トポロジといった形状簡略化機能を活用する事により、複雑なモデル形状でも柔軟に対応する事が可能です。(図3)

4)接続条件の定義
他の解析タイプと同様に、ジオメトリ読込み時に初期で触れているパーツ間には接触条件が自動的に定義されます。接触タイプは『ボンド』として自動定義されますが、『摩擦なし』または『摩擦あり』といった接触タイプに変更する事も可能です。『ボンド』による接続は、接触間の応力状態による剥離条件を定義することも可能です。
また、『ボディ相互作用』と呼ばれる接続条件も自動定義されます。
『ボディ相互作用』は初期状態では離れているパーツ間についても接触を認識させる機能となっており、解析途中で衝突する場合や大変形による自己接触問題に対する接触条件も自動的に認識されます。(図4)

5)境界条件の定義
境界条件についても他の解析タイプと同様の手順で設定が可能です。Workbench環境では以下のような境界条件が定義できます。
- 支持条件
- 固定/変位/速度
- 荷重条件
- 力/圧力
- 初期条件
- 初期速度/初期角速度
- 慣性
- 加速度/重力加速度
6)LS-DYNAソルバーの実行
Workbench環境にて『解析の実行』ボタンをクリックする事により、LS-DYNAソルバー用インプットファイル(***.k)が出力されます。このインプットファイルを使用してソルバーを実行させます。
LS-DYNAソルバーはMechanical APDL Product Launcherから簡単に実行できます。(図5)
(※LS-DYNAソルバー用インプットファイル(***.k)は wbpjファイルを保存しているフォルダに作成される『***_fi les』フォルダ内の \dp0\SYS\MECH フォルダに作成されます。)

7)結果の確認
解析結果はMechanical APDL またはLS-PrePostにて確認することができます。デフォルトの設定では解析結果はLS-PrePost用結果ファイル(d3plot / d3hsp)のみ出力されるように設定されていますが、出力されたインプットファイルを編集する事により、Mechanical APDL用の結果ファイル(***.rst / ***.his)を出力させることができます。(図6-1,図6-2)

図6-1 LS-PrePostによる結果表示

図6-2 Mechanical APDLによる結果表示
おわりに
LS-DYNAソルバーのプリプロセッサとしてWorkbench環境が利用可能になり、Ansys LS-DYNA はこれまで以上に多くの方々にご活用いただけるプロダクトへと進化しました。また様々なWorkbenchモジュールを活用する事により、作業の効率化にも貢献できることを期待しています。
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