解析講座 弾塑性材料モデルの基礎(第4回) 佐賀大学大学院 工学系研究科 機械システム工学専攻 只野 裕一 様

弾塑性材料モデルの基礎(第4回)

CAEのあるものづくり Vol.29|公開日:2019年3月

目次

5 ひずみ硬化則(承前)

5-4.ひずみ硬化則

第2回、第3回で述べたように、弾塑性構成式では塑性変形進行中、応力は常に降伏曲面上にあると仮定してモデル化されます。これは、塑性変形に伴うひずみ硬化やひずみ軟化によって、降伏曲面が変化することを意味しています。前回解説した相当応力と相当塑性ひずみの関係を表すひずみ硬化則により、スカラー量としての降伏応力の発展は表現することができますが、3次元的な応力状態においては、降伏曲面の変化を記述するためのモデルも別途必要となります。このモデルは、繰り返し負荷問題(除荷と再降伏を繰り返す問題)や、板材の曲げ加工などにおけるスプリングバック(除荷によって弾性変形が回復することで、最終的な変形が最大変形よりも少し小さくなる現象)の予測において特に重要となります。このため、実用的な弾塑性解析においては、適切なモデルの選択やパラメータ同定が重要です。
ここでは、降伏曲面の変化を記述するための、基本的ないくつかのモデルについて解説します。第2回で述べたように、主応力を用いることで降伏曲面を3次元空間に記述することができます。ここではさらに、主応力空間でσ123となる平面上の降伏曲面を考えることにしましょう。このような平面をπ平面と呼びます。例えば、Misesの降伏曲面はπ平面では真円、Trescaの降伏曲面はこれに内接する正六角形となります。π平面を用いることで、降伏曲面の変化の様子をイメージしやすくなります。

5-4-1.弾完全塑性モデル

まず最も単純なケースとして、全くひずみ硬化が生じないモデルを考えてみましょう。応力が初期降伏曲面上に達すると初期降伏が発生しますが、ひずみ硬化が生じないということは、応力が初期降伏曲面より外の状態をとることがない、すなわち塑性変形中に降伏曲面が全く変化しないモデルとなります。これを弾完全塑性モデルと呼びます。図1に、弾完全塑性モデルを模式的に示します。

図1 弾完全塑性モデル(ひずみ硬化なし)
図1 弾完全塑性モデル(ひずみ硬化なし)

左図はπ平面における降伏曲面、右図は単軸引張・圧縮時の応力・ひずみ線図となります。π平面上で見ると、初期降伏後に応力が降伏曲面上を移動することは可能ですが、降伏曲面の外側の応力状態にはなりません。これを単軸引張・圧縮で考えた場合、初期降伏後は一定の降伏応力のまま塑性ひずみが増大し、ひずみ硬化が全く生じないことに対応します。また、引張後に負荷方向を反転して圧縮に転じる場合(もしくはその逆の場合)、引張(もしくは圧縮)で降伏した際と絶対値が同じ応力で再降伏することになります。弾完全塑性モデルでは、ひずみ硬化挙動は全く表現されませんが、ひずみ硬化の影響が相対的に小さく、初期降伏後の応力上昇が無視できる程度の場合であれば、近似的なモデルとして有効となります。

5-4-2.等法硬化則

つぎに、ひずみ硬化を生じる場合について考えてみましょう。ひずみ硬化を生じるということは、初期降伏後に降伏曲面が変化し、応力が常に降伏曲面上に存在するようにする必要があります。このための考え方の一つが、降伏曲面が相似形を保ったまま大きさを変える(降伏曲面が相似的に膨張する)とする方法です。例えばMisesの降伏関数を考えるとき、π平面上では降伏曲面は原点を中心としたまま半径が変化することに対応します。また、弾性除荷時には、応力が降伏曲面の内側へと移動しますが、このとき降伏曲面は変化しない(膨張したまま)と考えます。このようなモデルを、等方硬化則と呼びます。等方硬化則の概略を図2に示します。

図2 等方硬化則
図2 等方硬化則

左図において破線で示される初期降伏曲面に応力が達すると材料は降伏しますが、そこから応力が外側の状態をとろうとすると、降伏曲面が応力に引きずられるように膨張します。
例として、単軸引張・圧縮状態を考えてみましょう。材料の初期降伏応力がσ0であるとすると、初期降伏曲面は原点を中心とする円であり、この半径がσ0に対応するとイメージできます(正確には、π平面上でのMisesの降伏曲面は半径の円となります)。この材料を単軸引張でσ1(>σ0)まで引っ張ったとき、降伏曲面は原点を中心としたまま、半径がσ1/σ0 倍の円へと膨張します。この状態から除荷を行うと、降伏曲面の大きさはそのままに、材料は弾性状態に戻ります。ですから、再負荷するとσ0では再降伏せず、応力がσ1に達して初めて再降伏します。もしくは、除荷後に圧縮へと負荷方向を反転させると、-σ1で材料は降伏することになります。
このように、等方硬化則を用いることで、除荷時の再降伏において降伏応力が除荷直前の応力となることを表現できますが、引張後に圧縮(もしくはその逆)をした際に降伏応力が低下するという、Bauschinger効果を表現できません。そこで、つぎの移動硬化則が提案されました。

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