研究内容の詳細
はんだ解析セミナー
〜電子機器のはんだ接合部の非線形解析および信頼性評価・設計〜
横浜国立大学大学院 工学研究室 于強助教授
実装はんだ接合部の機械的信頼性問題の特徴と対策
特徴
- 主要な負荷形態は熱負荷の他に機械的負荷、衝撃負荷と振動などがある。
- 従来の大型の機械構造物では経験したことのない新しい材料が多く使用されており、これらの材料の異種材接合構造よりなる、材料の非線形特および温度依存性を無視できない。
- 小型かつ大集積である。すなわち、極めて小さいにもかかわらずその構造は極めて複雑である。
- 部材の微細化に伴い、結晶粒度、不純物介在物、マイクロボイド、表面ミクロクラック、酸化膜、加工変質層などの材料強度に及ぼす影響はバルク材料の強度=微細部材の強度とは必ずしもならない、そのため、これらのはんだ接合部の強度信頼性評価試験は今までのように標準試験片を用いて行う事ができなくなり、実構造の強度評価試験を行わなければならない。
- 異なる多種な材料でできた複合構造であるため、強度信頼性問題は母材より界面に集中している。そのため材料の組み合わせの数に相当する信頼性を評価する必要がある。
- 実構造を用いて強度評価を行うために、微細化された接合部の力学的特性の評価手法及び破壊の検知手法(非破壊検査)の確立はより重要な課題となっている。

対策
- 実構造の電子デバイス部品を用いてその熱負荷(熱衝撃試験、熱サイクル試験など)の強度信頼性評価試験を行う。
- 熱負荷試験の変わりに機械的強度信頼性評価試験が考えられる。しかし、数百ミクロンのマイクロ構造の強度信頼性評価を行うためには、最低0.1ミクロンの変異制御精度を有するマイクロ構造の強度評価試験機が必要とされている。この精度を満足するために従来の強度試験機の技術だけでは難しい。
- 接合構造を含めた衝撃強度などの特性を評価するマイクロ衝撃試験法などを確立する必要がある。
- 強度信頼性試験の条件に合わせて電子デバイス部品の接合部の応力・ひずみ解析を行い、マイクロ接合部の力学的挙動を正確に把握する事によって、解析で得られた力学的パラメータ(応力、ひずみ振幅など)を用いて強度信頼性評価試験の結果を評価する。
- 強度信頼性評価を行う際、マイクロ接合部の破壊を正確に測定しなければならない。そのため、今までの破壊及び非破壊検査などの手法はマイクロ接合部の破壊検査に適用できるかどうかについて検討する必要がある。
実装技術における新規信頼性問題
![]() 従来のはんだ接合部での破壊モード |
![]() はんだ接合部での新規疲労破壊モード |
<解析用>アセンブリモデル
解析の使用要素と温度条件
モデル化にはABAQUS、MARC、Ansysともに一次(線形)の完全積分要素を用いた。また、要素数:14,556、接点数:17,109、最小メッシュサイズは12.5μmとした。

温度サイクル
<解析用>各材料の物性値
材料 | ヤング率(MPa) | ポアソン比 | 熱膨張係数(ppm/K) |
---|---|---|---|
AI | 73500 | 0.345 | 23 |
FR4 | 8000 | 0.150 | 15 |
Solder | 40100 | 0.150 | 23 |
温度 | -65oC | -40oC | -25oC | 75oC | 125oC |
---|---|---|---|---|---|
ひずみ | 応力 | 応力 | 応力 | 応力 | 応力 |
0.0 | 48.9 | 45.79 | 39.79 | 31.75 | 20.03 |
0.0016 | 62.92 | 57.54 | 44.3 | 34.22 | 24.73 |
0.0048 | 74.41 | 67.45 | 48.91 | 36.13 | 26.72 |
0.0084 | 81.11 | 73.13 | 51.33 | 37.07 | 27.22 |
0.0184 | 89.09 | 80.07 | 53.93 | 38.11 | 27.69 |
0.0214 | 90.3 | 81.09 | 54.37 | 38.28 | 27.77 |
<解析用>材料の物性値
温度 | クリープ指数n | クリープ定数Ao(MPa/h) |
---|---|---|
-40 | 13.3 | 5.21-E22 |
-20 | 12.6 | 2.45-E20 |
0 | 11.9 | 6.55-E19 |
20 | 11.1 | 1.12-E17 |
40 | 10.4 | 1.33-E16 |
60 | 9.7 | 1.17-E15 |
80 | 9 | 8.09-E15 |
100 | 8.2 | 4.54-E14 |
120 | 7.5 | 2.13-E13 |
140 | 6.8 | 8.64-E13 |
解析結果(各ソルバー間の比較)(完全塑性+クリープの場合)
実験と解析の結果(保持なし)

反力

非線形ひずみ
移動硬化 | 等方硬化 | 等方硬化/移動硬化 | |
---|---|---|---|
反力のピーク値(N) | 27 | 40 | 約1.5 |
非線形ひずみ | 0.115 | 0.09 | 約0.78 |
非線形ひずみ振幅Δε | 0.035 | 0.031 | 約0.89 |