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解析事例

熱流体解析

マイクロガスタービン用二段燃焼方式水素燃焼器の数値解析

二段燃焼方式水素燃焼器の流体解析:背景と意義

  • 水素燃焼の背景
    脱炭素社会の推進:CO₂を排出しないクリーン燃料として注目
    産業分野での活用:製鉄・ガラスなどの高温加熱プロセスに適用可能
  • 水素燃焼の特性と課題
    高い燃焼速度と広い可燃範囲 → 逆火や焼損リスク
    高温火炎 → NOx発生増加高
  • 流体解析の目的
    燃焼挙動の可視化(火炎位置・温度分布)
    逆火予測・混合効率評価
    熱負荷やNOx生成の抑制設計
  • 応用と期待効果
    燃焼器設計最適化
    安全性・燃焼効率の向上
    環境負荷の低減(低NOx化)

使用ソフトウェア

Ansys Fluent

解析対象

ラボスケール燃焼実験

  • マイクロガスタービン向け水素燃焼器のラボスケールモデル
  • 同軸インジェクタが設置され,中央から水素-空気予混合気,周囲から空気が流入
  • 周囲流入口の面積を3種類に変化させたときの挙動を実験と解析で比較する

今回の事例は、以下の論文で検証された内容を参考に作成しました。

 

解析結果との比較に、論文中の画像を引用させていただいています。
「マイクロガスタービン用二段燃焼方式水素燃焼器に関する研究:
同軸型インジェクタの燃焼特性」
皆川 和大, 湯浅 三郎著 日本機械学会論文集B編(2005年71巻704号p.1197-1204)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaib1979/71/704/71_704_1197/_pdf/-char/ja

解析条件

燃焼解析

  • 解析モデル:1/4ケーキカットモデル
  • AMRによる反応面のメッシュ細分化
  • 全体空気流量 0.68g/s,全体当量比 0.5
  • 中心予混合気当量比 2
  • インジェクタ形状:平行流,面積違い3ケース
    ・S-0:中心 Φ4 mm,周囲 Φ6.6 mm
    ・M-0 :中心 Φ4 mm,周囲 Φ7.1 mm
    ・L-0 :中心 Φ4 mm,周囲 Φ8.0 mm
     ※参考論文の以下の数値(p.194)を参考にしました

解析手法

  • 部分予混合火炎なのでFGMモデルの使用も可能であるが不自然な結果を得たためEDCモデルで解析した
  • 水素燃焼は詳細反応モデルが小規模なため計算しやすい
  • まず、ED平衡計算モデルにて平衡火炎を形成した後、EDCに切り替えて非平衡の計算を行うのがセオリー

解析結果 温度分布コンター

  • 各ケースに亘って最高温度は2300K弱とあまり変化はない
  • 中心ノズルからの予混合気は当量比2であり,過濃な予混合火炎を形成
  • 中心で余った水素が外側ノズルからの空気と拡散火炎を形成する
  • リッチな予混合火炎であるため中心部の火炎温度は周囲のそれよりも低くなる
  • 最高温度に近いことを示す濃い赤の領域がSからLに変化するに従い増えている
  • L-0はインジェクタ近傍温度が他の2ケースよりも顕著に低い
  • インジェクタ付近には再循環流が発生する
  • L-0では温度が上がらないまま流れが戻るがS-0,M-0では昇温した流れが戻る

解析結果 速度絶対値コンター [ 0 - 70 m/s ]

  • 外側ノズルの流速が最も速いS-0において反応領域付近の速度が最も大きく,次いでM-0,L-0となる
  • インジェクタ付近を見ると,S-0とM-0と比較してL-0は外側ノズルの流れが中心と合流するのが遅い

解析結果 水素質量分率コンター

  • 質量分率分布の軸方向長さから,S-0,M-0,L-0の順で水素が消費されるタイミングが早いことがわかる

解析結果 酸素コンター

  • S-0,M-0,L-0の順で中心部分の低酸素領域が下流まで残留していることがわかる
  • 反対に,L-0,M-0,S-0の順で中心以外の酸素分率は高くなる
  • 水素コンターを考慮すると,S-0はL-0よりも速やかに水素と反応し,M-0はその中間であることがわかる
  • S-0はL-0と比較して反応部分での流速が高いため,燃焼で生じた熱が速やかに輸送され高温になりにくい

解析結果 OH質量分率コンター

  • OHが高い値で分布している部分で可視光を放っているとすれば実験と解析で火炎の外形はよく似ている
  • 予混合気中に火炎ができていることがわかる
  • S,M,Lの順で火炎の長さが増し,高OH領域の幅も太くなっている

解析結果同様,S-0,M-0,L-0の順で火炎の長さが増大(p.196)

解析結果 NO質量分率コンター,出口NOx濃度

  • 全体Φ0.4,0.5の2ケース
  • 全てのケースにおいて,NOの絶対値は実験値の2倍強
  • S,M,Lの順でNO濃度が高くなる,Φ0.5においてLが他より卓越するという傾向は実験結果(左図p.197)と解析結果(右図)はよく一致

まとめ

解析で得た知見

  • 最高温度は各ケースで大差ないが、インジェクタ近傍温度や再循環の挙動が変わる
  • S→M→Lの順に火炎が長くなり(OH高領域が伸び・太くなる)、水素消費のタイミングも変化
  • NOxはS<M<Lの傾向で実験と整合(ただし解析の絶対値は高め)

設計・開発への反映点

  • 安全設計:逆火・局所過熱の兆候(近傍温度/再循環/火炎付着)を形状比較で事前に潰し、試験リスクを低減
  • 低NOx設計:空気導入面積(S/M/L)がNOx傾向を左右 → 形状候補のスクリーニングと最適化に直結
  • 試作効率:実験前に「効く設計パラメータ」を絞り込み、試作回数・コスト・開発期間を削減
  • 運転窓の設計:混合/反応域長さの違いを基に、安定燃焼・効率・熱負荷のバランスを設計

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