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解析事例

熱流体解析

水素浮き上がり火炎バーナの燃焼CFD解析

水素バーナの流体解析:背景と意義

  • 水素燃焼の背景
    脱炭素社会の推進:CO₂を排出しないクリーン燃料として注目
    産業分野での活用:製鉄・ガラスなどの高温加熱プロセスに適用可能
  • 水素燃焼の特性と課題
    高い燃焼速度と広い可燃範囲 → 逆火や焼損リスク
    高温火炎 → NOx発生増加高
  • 流体解析の目的
    燃焼挙動の可視化(火炎位置・温度分布)
    逆火予測・混合効率評価
    熱負荷やNOx生成の抑制設計
  • 応用と期待効果
    バーナ設計最適化
    安全性・燃焼効率の向上
    環境負荷の低減(低NOx化)

使用ソフトウェア

Ansys Fluent

解析対象

  • 東京都立大学櫻井研究室で行われたラボスケールの水素バーナー燃焼試験を模擬※
  • 水素専焼ガスタービン燃焼器への適用を目標として,インジェクタ単体が形成する噴射孔径1 mm 以下の水素浮き上がり火炎を対象とした実験的研究が行われている※
  • 水素の噴射速度も空気流速も非常に速いためにバーナ内の流速分布や濃度分布を計測することが難しい
  • CFDによる燃焼解析を行えば,装置内の各種化学種の分布や温度,速度など物理量の状況を予測することが可能となる

※Takashi Sakurai, et al., Effect of hydrogen injection hole diameter on the burning condition of a lifted flame in a hydrogen burner, International Journal of Gas Turbine, Propulsion and Power Systems, July 2024, Volume 15, Number 4, pp. 50-58.

解析条件

  • 内部の3次元流体領域モデルを構築
  • 円管中心部に水素噴射ノズルが位置し,周囲を空気が流れる構造
  • 燃料と酸化剤が別々に供給される
  • ジェットの流速が燃焼速度より遅ければ拡散火炎,速ければ浮き上がり火炎が形成される

解析形状,メッシュ

  • セル数:約680万個
  • AMRにて反応面を自動細分化
  • メッシュタイプは多面体と直方体をシームレスに連結したFluent独自のポリヘキサコアを採用

解析手法

※拡散FGM(FPV)

  • CFDとは別に,1次元の対向流拡散火炎を解き,反応進行度と混合分率をパラメータとした混合ガスの物性や化学種質量分率の参照テーブルを作成する
  • 乱流による燃焼への影響を加味するため,β-PDFを仮定して先のテーブルに畳み込み,反応進行度,混合分率,それらの分散をパラメータとした新たにテーブルを作成
  • CFDでは反応進行度と混合分率,それらの分散の輸送式を解き,テーブルから諸量を参照してガスの組成を与える
  • 非予混合状態で燃料と酸化剤が供給される燃焼場における部分予混合火炎において有効

温度,OH質量分率,実験写真

  • 解析の温度分布から,浮き上がり火炎が形成されていることがわかる
  • OHの分布領域を輝炎とすれば,実験写真と解析で火炎高さはよく一致している
  • 断面のOHコンターであるため傘状の分布をしているが,外観は実験写真と同様である

HRR,OH質量分率,H2質量分率,Φ当量比コンター

  • HRR(Heat Release Rate)は発熱部分を意味する
  • 当量比とOH等の質量分率,HRRのコンタから,燃焼は希薄領域で生じていることがわかる

速度絶対値,マッハ数,乱流散逸率コンター

  • ジェットの速度は遷音速で最大1000 m/s程度
  • マッハ数は1弱
  • 速度は速やかに減速し,燃焼領域では十数m/s
  • 乱流散逸率は燃焼部手前で大きい

まとめ

解析で得た知見

▶温度・OH分布から浮き上がり火炎が再現でき、火炎高さや傘状の分布が実験の見え方と整合する
▶発熱率(HRR)や当量比の分布から、燃焼は主に希薄側で生じていることが分かる
▶流れは上流で高速でも、燃焼領域では減速して燃焼が成立する(燃焼直前で乱れの散逸が大きいなど、火炎成立に関わる流れ構造が見える)
▶反応後も酸素が残る=全体として希薄燃焼であることが確認できる

設計・開発への反映点

▶逆火・焼損リスク低減:火炎がどこで浮き上がる/付着しそうか、局所高温がどこに出るかを把握し、危険な形状・条件を事前に除外できる
▶低NOx設計の当たり付け:高温域・発熱域の位置関係を見て、NOxが増えやすい温度場を作らない混合・空気配分・噴射条件を検討できる
▶試作回数・実験工数の削減:実験で見えない内部場(速度・濃度・化学種)を根拠に、設計変更の良否を机上で絞り込める
▶安定燃焼条件の探索:火炎の成立に寄与する再循環・剪断層・乱流強度などの“安定化要因”を可視化し、運転範囲(安定マージン)を広げる検討に使える

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