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光電融合回路の解析

RF及びフォトニクスコンポーネントを組み込んだシステムレベルの回路解析

光電融合回路の解析の概要

解析分野 : フォトニクス解析、電磁界解析、システムレベル解析   業界:光通信

こんな方におすすめ

  • 光電融合回路の設計者の方
  • RFもしくはフォトクスコンポーネントの設計者で、光電融合回路に組み込んだ際の全体特性を把握されたい方
  • フォトニクス解析やRF解析の結果を反映させることでより精度の高いシステムレベルの回路シミュレーションを行いたい方

解析概要

本事例では、高周波(RF)コンポーネントやフォトニクスコンポーネントを組み込んだ光電融合回路のシステムレベル解析を行います。まず、高周波信号を伝搬させる伝送線路の解析を行います。次に、光を伝搬させる光導波路や電気信号を光信号に変換する光変調器の解析を行います。最後に、これらの解析結果をシステムレベルの回路シミュレータにインポートし、回路全体の特性解析を行います。

使用ソフトウェア

Ansys Lumerical
Ansys HFSS

背景・課題

電気信号と光信号の変換機能は、光通信局やデータセンター内の通信機器に組み込まれているだけでなく、近年のデータレート高速化に伴って電気信号の伝送距離が著しく制限されるようになったため、同一基板内の半導体チップ間や同一チップ内のコア間の信号送受信部にも電気/光信号変換機能を導入する動きが広がっています。
このような光と電気が融合した光電融合回路では、フォトニクスコンポーネントやRFコンポーネントの特性を正確に把握した上で、回路全体を設計する必要があります。そのため、フォトニクスコンポーネントの解析ツールと高周波コンポーネントの解析ツール、さらにシステムレベルの回路解析ツールを連携させた統合的な解析が求められます。

解析対象

図1に、光通信システム、すなわち、送信側で電気信号を光信号に変換して伝搬し、受信側で光信号を電気信号に変換するシステムの全体ブロック図の一例と今回の解析対象を示します。

図1 光通信システムの全体ブロック図の一例と今回の解析対象

図2に光変調器(進行波電極型Mach-Zehnder変調器)の詳細構成を示します。

図2 光変調器の構成

なお、光変調器の内、変調部については光 - 高周波 - キャリアの連携解析によるMZ(マッハツェンダ)変調器の最適化で解析のご紹介を行っていますので、本事例では概要の説明を行い、詳細については割愛します。

解析手法

以下の3つのステップで解析を行います。
(1)伝送線路の解析(HFSS)
(2)光変調器の解析(Lumerical FDTD/MODE/CHARGE、HFSS)
(3)システムレベルの回路解析(Lumerical INTECONNECT)

解析モデル・条件及び結果

(1)伝送線路の解析(HFSS)

今回解析を行うのは図3に示す、信号線、誘電体、GNDからなる全長20mmのマイクロストリップラインです。DC~100GHzの周波数範囲におけるRF特性をHFSSで行います。

図3 伝送線路(マイクロストリップライン)のモデル

図4に、S21(等価特性)、S11(反射特性)の解析結果を示します。
得られたSパラメータのデータは、(3)のシステムレベルの回路解析で使用するため、タッチストーンファイル形式で出力します。

図4 伝送特性の解析結果

本事例では、単純なマイクロストリップラインを伝送線路に選びましたが、HFSSでは複雑な形状、例えば、TSV(Through-Silicon Via、シリコン貫通電極)に代表される3次元配線や、半導体チップと基板を接続するBGA(Ball Grid Array)などのモデリングも可能で、かつ、材料ライブラリも充実していますので、様々な構成に応じた柔軟な解析を行うことができます。

(2)光変調器の解析(Lumerical FDTD/MODE/CHARGE, HFSS)

今回はシリコン導波路を用いた進行波電極型Mach-Zehnder変調器を解析します。

(2)―1 Y分岐導波路の解析

まず、光を2分岐するY分岐導波路の解析をLumerical FDTDを用いて行います。
図5に、解析対象であるY分岐導波路のモデルを示します。図中にPort1~Port3で示したポートモニタは、特定のモードに対する励起や、電場分布・透過率などのモニタが可能です。

図5 Y分岐導波路のモデル(左図:斜視図、右図:上面図)

図6にLumericalに内蔵されたSパラメータのスイープ解析の設定(左図)と、透過特性の結果(右図)を示します。今回はTEモード(設定画面におけるmode1)、TMモード(同mode2)に対して解析を行いました。

図6 Sパラメータスイープ解析の設定(左図)と結果(右図)

得られたSパラメータのデータは、(3)のLumerical INTERCONNECTで使用可能な形式で出力可能です。

(2)―2 変調部の解析

次に変調部の解析です。概要を図7に示します。
まずLumerical CHARGEでドーピング濃度などをモデルに取り込んで各バイアス電圧におけるキャリアの解析を行い、キャリア密度分布や静電容量、抵抗などを算出します。
Lumerical MODEでは、キャリア密度分布をモデルに反映して光モード特性の解析を行い、光の実効屈折率や群屈折率、ロスや、半波長電圧・長さの積であるVπ・Lπなどを算出します。
HFSSでは静電容量、抵抗などをモデルに取り込み、RFの群屈折率やロス、特性インピーダンスなどを算出します。最後に最適化ツールoptiSLangを用いて、設計パラメータを最適化します。
詳細については、光 - 高周波 - キャリアの連携解析によるMZ(マッハツェンダ)変調器の最適化をご参照ください。

図7 変調部の解析の概要

ここで得られた、光の実効屈折率や群屈折率、ロス、RFの群屈折率やロス、特性インピーダンスなどのパラメータを(3)のシステムレベル解析で使用します。

(3)システムレベル解析(Lumerical INTECONNECT)

最後に、(1)、(2)で行ったRF、フォトニクス解析の結果をLumerical INTERCONNECTに取り込んで、システムレベルの回路解析を行います。

(3)―1 回路モデル

図8に、INTERCONNECTにおける回路モデルを示します。伝送線路には(1)でHFSSから出力した電気のSパラメータファイルを、Y分岐導波路には(2)でLumerical FDTDから出力した光のSパラメータファイルをインポートします。
LDやPD、入力電気信号生成部、Eye評価用のアナライザにはINTERCONNECT内蔵のエレメントを用いました。LDの設定では、波長やパワー、スペクトル線幅などの他、偏光状態なども指定できます。今回は簡単のためTEモードのみが出力される設定にしましたが、任意の偏光設定が可能です。伝送速度は20Gbit/sに設定しました。

図8 回路モデル

変調部に関しては図9をご参照ください。(2)―2で算出したパラメータを各エレメントに入力します。また、変調部の全長についても同様に(2)―2で算出した、半波長電圧・長さの積であるVπ・Lπから、バイアス電圧を鑑みて、半波長位相シフトするために必要な長さに設定します。

図9 変調部の回路エレメント

(3)―2 解析結果

図10に解析結果を示します。Eye波形の他、消光比(Extinction Ratio)を始めとした各種性能指数を確認可能です。

図10 Eye波形及び各種性能指数の解析結果

次に、2つのY分岐導波路をINTERCONNECT内蔵のエレメントで置き換えた場合と比較してみます。内蔵エレメントの過剰損失は0、各アームへの結合効率は0.5に設定しました。
図11に、波形と消光比、振幅の比較結果を示します。FDTD結果を反映した場合とそうでない場合で無視できない程の差が生じていることが見て取れます。このことから精度よくシステムレベルの回路解析を行うためには、コンポーネント毎の詳細解析結果を反映することが重要であることが分かります。

図11 光波形及び消光比、振幅の比較結果

また、INTERCONNECTでは任意の場所に測定器を接続可能ですので、伝送線路による電気波形の劣化なども観測可能です。図12に、関係箇所の回路構成と、伝送線路前後の波形を示します。

図12 伝送線路前後の電気波形比較

本解析の効果

今回、光電融合回路の例として、電気信号用の伝送線路、光信号用の導波路、光変調器などを含む回路の解析を行いました。
RF解析、フォトニクス解析の結果をシステムレベルの回路解析ツールに取り込むことで、精度の高い結果が得られます。
今回示したのは簡単な1例ですが、HFSSやLumericalはより複雑なモデルの解析にも対応していますので、本事例を様々な形態における光電融合回路の解析に応用することが出来ると考えております。

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