解析事例
ボールペンの落下解析
Ansys MechanicalとAnsys LS-DYNAの連成
はじめに
ボールペンを床に落下させた際に生じる内部部品の変形や応力分布は、実験では観察することができません。そのため落下時の挙動を観察するためには、解析を行う必要があります。ボールペンの落下解析は、バネの接触状態が短時間で何度も変化するなど非線形性が強く、陰解法では収束が困難です。しかし、はじめにバネが収縮しテンションがかかっている初期状態を求める必要があるため、落下解析を得意とする陽解法では、計算時間が増加してしまいます。
そこで、本稿ではAnsys Mechanical(以下Mechanical)とAnsys LS-DYNA(以下LS-DYNA)の連成により、初期状態を陰解法で求めた落下解析の事例を紹介します。
解析モデル

(図1)解析モデル

(図2)メッシュ
解析手法

(図3)解析システム連成
解析モデルと解析条件
静的構造の解析条件を(図4)、LS-DYNAの解析条件を(図5)に示します。

(図4)静的構造解析条件

(図5)LS-DYNA解析条件
また、[Dynamic Relaxation](動的緩和)を使用し静的平衡状態を求めることで、初期状態を計算しています。(図6)にLS-DYNAの解析設定を示します。

(図6)LS-DYNA解析設定
解析結果
MechanicalおよびLS-DYNAによる解析で得られた結果として、次の2点を示します。
 ・静的構造解析後の変形・応力分布
 ・落下解析時の変形形状・応力の伝達
静的構造解析の結果を(図7)に示します。
ペン先が出ている状態での自己接触を含む変形形状と、バネに生じる応力を確認することができます。縮めたバネの内側に高い応力が生じています。

図7)左:静的構造全変形量分布、右:静的構造相当応力分布

(図8)左:LS-DYNA相当応力分布
解析によって得られた効果
初期の応力状態を考慮した落下解析に対してMechanicalとLS-DYNAを連成することで、長い事象時間の解析コストを少なくできる陰解法のメリットと、非線形性の強い問題を計算することができる陽解法のメリットを組み合わせた解析を行うことができました。MechanicalとLS-DYNAの連成は、Workbench上で簡単に設定することができました。
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