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解析事例

電磁界解析

電磁誘導方式の非接触給電(ワイヤレス給電)解析事例

こんな方におすすめ

  • 電磁気誘導方式のワイヤレス給電を解析したい
  • 受電コイルと給電コイルのインダクタンス値や結合係数を算出したい
  • 給電コイルの位置をずらしたときの電力効率を算出したい

近年、電源ケーブルの接続や金属電極を使用せずに給電するワイヤレス給電と呼ばれる技術が普及しています。実用化されているほとんどが電磁誘導方式であり、電話の子機や電動歯ブラシ、スマートフォンなどに利用され、電気自動車(EV)の充電方式としても検討されています。電磁誘導方式は安定した電力供給が可能な一方、伝送距離が短く、コイル間の位置がずれると大きく効率が低下します。そのため給電側コイルの位置がずれたときの電力効率を確認する必要があります。
本事例では電磁界解析ソフトAnsys Maxwellの交流磁場解析とシステムシミュレーションソフトAnsys Simplorerを用いて、ワイヤレス給電の解析事例について紹介します。

解析の目的・背景

電磁誘導方式のワイヤレス給電はコイルを通過する磁束に変化を与えると起電力が発生するファラデーの法則を原理としています。給電側コイルと受電側コイルがあり、給電側に交流電流を印加することでコイルの中に磁束を生じさせ、受電側コイルに誘起電圧が発生します。そのため受電側コイルの距離が離れる、または位置がずれると通過する磁束が減り、効率が低下することからコイル位置と電力効率の関係を認識しておく必要があります。
本事例では給電側コイルの位置をずらした時の電力効率変化を算出しています。

解析手法

本事例ではワイヤレス給電モデルに対してインダクタンス値と結合係数を算出するために Eddy Current (交流磁場解析)を実施しました。また交流磁場解析においてコイル位置をずらした時のインダクタンス値と結合係数も算出するためにパラメトリック解析を実行して得られたインダクタンス値と結合係数を用いてAnsys Simpolrerによって回路解析を実施し、効率を算出しています。

解析モデルと解析条件

解析モデル


(図1)ワイヤレス給電の解析モデル

図1にワイヤレス給電の解析モデルを示します。ワイヤレス給電の解析モデルは3Dで給電コイルと受電コイル、磁性材料で構成しています。それぞれのコイルターン数はともに10ターンとして解析を実施しました。

解析条件

Eddy Current (交流磁場解析)を用いて給電コイルに周波数150kHz、振幅10Aの正弦波を印加しました。また、パラメトリック解析として受電コイルと給電コイルのGapと受電コイルを並行に移動させたときの距離Slideに対して解析を実施しました(図2)。


(図2)GapとSlideの定義

表1 GapとSlideのパラメトリック解析
Gap [mm] Slide [mm]
最小値 100 0
最大値 300 300
Step 50 50

解析結果:コイル位置によるインダクタンスと結合係数、電力効率の変化


(図3)解析結果:結合係数の変化

図3に電磁界解析ソフトAnsys Maxwellを用いて解析した結合係数の変化を示します。Gap距離が大きくなることで結合係数が0に近づいており、Slide距離も大きくなることで結合係数が低下しています。システムシミュレーションソフトAnsys Simplorerを用いて得られた結合係数とインダクタンス値から回路を作成し、電力効率の計算を行いました。電力効率は結合係数が最大を示すSlide距離0mmのときに着目し計算しています。


表2  Slide距離0mm時のインダクタンスと結合係数
Gap [mm] 給電コイル [uH] 受電コイル [uH] 結合係数
100 41.8800 41.8822 0.2888
150 41.2681 41.2634 0.1483
200 40.8596 41.2138 0.08008
250 41.2781 41.2134 0.04568
300 41.2881 41.3617 0.02733

(図4)電力効率を算出するための回路構成

図4に電力効率を算出した回路を示しています。共振させるための静電容量は下記式を用いて計算し、負荷抵抗は3Ωとして計算を実施しました。

f = 1 / (2π√LC)

(図5) 解析結果:Gap距離による電力効率の変化 (Slide:0mm)

図5にGap距離を変化させたときの電力効率変化を示しています。Gap距離の場合、250mm付近まで90%以上の電力効率が得られていますが、300mm以上離れると70%程度まで効率が低下することがわかります。


(図6) Slide距離変化による結合係数の変化

図6にSlide距離を変化させたときの結合係数の変化を示しています。Slide距離を変化させた場合、結合係数の変化がより顕著になっています。これはコイルに対する磁場の貫通量がGapを変化させたときより顕著に低下するためです。Gapの電力効率を算出した方法と同様にSlideを変化させたときの電力効率を算出しました。


(図7) 解析結果:Slide距離による電力効率の変化 (Gap:100mm)

図7にSlide距離を変化させたときの電力効率の変化を示しています。結合係数の変化が大きいためSlide距離150mmまでの電力効率を算出していますが、Gap距離を変化させた時よりも短い距離で電力効率が低下していることがわかります。Slide距離を150mmにしたときに電力効率が70%以下となり、Gap距離を変化させたときの約2倍影響を受けていることがわかります。そのため電磁誘導によるワイヤレス給電では並行にずれないよう機構を考える必要があります。
本解析手法では交流磁場解析におけるワイヤレス給電の位置がずれたときの電力効率変化に関する事例について紹介しました。

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