解析事例
緩衝材の落下衝突解析
こんな方におすすめ
- 輸送時における製品の耐久性や信頼性を評価したい
- 落下時の耐久性を予測して設計を行いたい
輸送時における製品の耐久性や信頼性を評価するために、落下衝撃解析が広く行われています。本事例では、緩衝材に保護された製品の落下解析についてご紹介致します。
左:固い緩衝材、右:柔らかい緩衝材
解析結果:相当応力コンター図
解析の目的・背景
どのような製品も工場から出荷される際に梱包され、トラック輸送などの物流過程を経て倉庫やエンドユーザーのもとに届けられます。その途中、荷役作業(貨物の上げ下ろし)などにおいて過って梱包物が落下させられ、製品に衝撃力が加わることで破損や不具合が生じる可能性があります。このため、予期せぬ落下事故に遭遇した場合でも製品の品質や動作を保証できるよう、落下時の耐久性を予測しながら設計を行うことが重要です。今日では落下試験や衝撃試験を補うツールとして、シミュレーションを用いた落下衝突解析が有効な評価手法となっています。
解析手法
本事例では、市販製品をデフォルメした仮想的な液晶モニターを解析モデルとしました。モニターの両端は発泡スチロールのような緩衝材で保護されており、落下時の衝撃を吸収するようになっています。今回は緩衝材の変形挙動を評価対象とするため、モニター本体は剛体としてモデル化しています。
緩衝材は発泡スチロールを想定し、LS-DYNAで利用可能な圧搾性発泡材モデル(*MAT_CRUSHABLE_FOAM)を使用しています。この材料モデルのポアソン比は0であり、弾性変形はせず、荷重を受けると永久変形が生じます。材料物性値としては密度と一軸圧縮試験から得られる圧縮応力-体積ひずみ曲線が入力データとなります。今回は表1および図1に示す応力‐ひずみ曲線を緩衝材の材料物性として設定しました。
密度 [kg/m3] | 20 |
---|---|
10%歪み時の圧縮強度 [MPa] | 0.362 |
25%歪み時の圧縮強度 [MPa] | 0.434 |
50%歪み時の圧縮強度 [MPa] | 0.476 |
75%歪み時の圧縮強度 [MPa] | 0.957 |
解析モデルと解析条件
解析モデルとメッシュ
図2に解析モデルの形状を、図3にメッシュをそれぞれ示します。モニターは21インチ型を想定した寸法で作成しており、質量が 2 [kg] になるよう密度を設定しています。また、モニターと緩衝材の初期位置は、角から落下することを想定してやや傾けた状態で配置しています。モデル全体の節点数は48,242、要素数は182,121ですが、計算時間に影響する緩衝材部分の節点数は31,959(要素数は156,232)です。なお、8並列で計算した場合、計算時間は15分程度でした。
使用ソフトウェア
Ansys Workbench LS-DYNA 2020 R1、LS-PrePost 4.7
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