解析事例
レーザー加工の温度分布解析
こんな方におすすめ
- レーザー加工による被加工材の温度分布について検討したい
- 誤差の要因になる加工途中の熱の広がりを過渡伝熱解析で解析したい
レーザー加工のシミュレーションは、その現象(熱伝導-溶融-蒸発)の複雑さから、実現象に近い解析を実施することは非常に難しく、高度な技術が必要となります。
本事例では、簡易的に伝熱解析システムを用いて、レーザー加工による被加工材の温度分布について検討した結果をご紹介します。
解析の目的・背景
レーザー加工は、高密度のエネルギーを微小領域に照射し、アシストガスや被加工物の蒸発によって溶融物を吹き飛ばします。そのため、製品への熱の影響は比較的小さくなります。しかしながら、レーザー加工で除去された近辺の温度は非常に高温になるため、その後の加工での誤差要因になり得ます。
解析では、誤差の要因になる加工途中の熱の広がりが、過渡伝熱解析システムで可能かを検討します。
解析手法
本事例では、0.5
mmの板の加工を想定し、レーザーの直径200μm、移動速度を50mm/secで移動させ、一般的な1e6W/cm2熱流束を与えて解析を実施しました。一般的には、レーザーの透過による内部発熱も考慮すべきですが、今回は表面の熱流束のみで検証しています。(Ansysでは内部発熱も定義可能です。)
レーザーで溶融して除去された領域は、要素を無効化(削除)することで表現します。今回は簡易的に構造用鋼の沸点2600度に達したものを削除し、溶融熱の潜熱についても考慮して解析を実施しています。
また、これらの設定については、一般化されたコマンドを挿入して対応しています。
解析モデルと解析条件
解析モデルとメッシュ

(図1)解析モデルの形状
図1に解析モデルを示します。表面は温度勾配が激しく、要素の分割数を増やす必要があるため、ボリュームを分けた形状にしています。

(図2)解析モデルのメッシュ
図2に解析モデルのメッシュを示します。レーザーの直径が100μmと小さいため、レイヤーメッシュを利用して、レーザーの熱が生じる領域は格子状のメッシュになるように設定しています。節点数は約40万で低次要素を使用しています。解析時間はメッシュ数やレーザーの移動距離で決まります。
解析条件
解析条件は簡易的な設定とし、熱伝達などの外部に逃げる条件は設定せず、レーザーの入熱による熱の広がりのみを確認しています。
解析時間は0.01secと非常に短時間で、0.5mmレーザーが進む状態を模擬し、時間ステップは、約3e-5secに設定しました。
レーザーの入力は熱流束W/m2で定義し、要素がデスされた場合も内部の要素表面にレーザーの光の方向(z軸)に対して、直径200μmの範囲に熱流束が入るようにコマンドで設定しています。
解析結果:温度分布
(図3)解析結果:温度分布
図3に伝熱解析の結果を示します。時間が経つにつれて高温の要素が消え、被加工材が除去されている様子が確認できます。また、それと同時に、加工部付近の熱の伝わりが温度分布で確認できます。
(図4)解析結果:温度分布
図4は加工途中の温度分布の結果になります。レーザーの直径の端から0.5mm付近においては、比較的高温になっていることがわかります。
本解析手法では、実現象の忠実性は多少低いと考えられるが、レーザー加工による要素の除去を考慮した温度分布シミュレーションがWorkbench Mechanicalの過渡伝熱解析システムで対応可能であることが確認できました。
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