解析事例
粉末吸入器の流体解析
こんな方におすすめ
- 患者の負担を軽減するために吸入器内の圧損を低減したい方
- 粒径による粒子挙動の違いを把握したい方
気管支喘息などの治療には粉末状の薬剤を専用の器具で肺に吸い込む吸入剤が用いられ、こうした器具はドライパウダー型吸入器(Dry Powder Inhaler)と呼ばれます。
本事例では、粉末吸入器を模した流路形状を作成し、流体解析および粒子追跡解析を行った結果についてご紹介します。
解析の目的・背景
吸入器は口に咥えた状態で患者自身が空気を吸い込んで使用するため、患者の負担を軽減するために吸入器内の圧損を低減することが設計上の1つの指標となります。
また、吸入剤の粉末は小さな薬剤粒子がより大きな乳糖などの担体(キャリア)粒子に付着して二次粒子を形成するよう設計されています。これは薬剤粒子単体では吸入器内に付着・残留するおそれがあるためです。しかし、服用時にはこれらの粒子は分離して薬剤粒子のみが肺に到達することが望ましいため、粒径による粒子挙動の違いを把握することが重要になります。
流体解析と粒子追跡解析を適用することで、上記の指標を考慮した吸入器の性能評価が可能になります。
解析手法
本事例では、市販の吸入器をデフォルメした仮想的な吸入器形状を作成して解析モデルとして使用しました。空気と粒子の挙動はどちらも定常解析で計算し、流速が小さいため空気の密度は一定値(非圧縮)としています。
解析モデルと解析条件
解析モデルとメッシュ
図1に解析モデル(流体領域のみ)を示します。遠心力とせん断力による粒子の分離と分散を促すため、流路内で旋回流が生じるような形状にしています。
図2は解析モデルのメッシュであり、約96万要素です。4コアの並列計算であれば、数十分から1時間程度で計算が完了します。