解析事例
静電容量式センサーの連成解析(タッチペンの解析)
構造-電場のダイレクト連成解析
こんな方におすすめ
- キャパシターの特性が意図した性質を示すか、数値シミュレーションで計算したい
- 1回の解析実行だけで変位VSキャパシタンスを求めたい
キャパシターを利用したセンサーではその変形とキャパシタンスの変化の特性を利用するアプリケーションがあります。タッチペンのようなセンサーもその1つです。
キャパシターの特性が意図した性質を示すか、数値シミュレーションで計算しようとした場合、構造解析と電場解析の連成解析が必要となります。一般的なソフトウェアでは片方向連成(シーケンシャル連成)を利用することが多く、構造解析で各位置の変形のモード(形状)を求め、その後その変形形状を電場解析に転送して連成解析を実施するため、煩雑な作業が必要となってしまいます。
ここでは、Ansysの連成場要素をAnsys Workbench Mechanicalで利用し、1回の解析実行だけで変位VSキャパシタンスを求める方法を紹介します。
解析の目的・背景
キャパシターの変形に合わせて、キャパシタンスが変化する様子、および、キャパシターが初期と異なる材質に接した際のキャパシタンスの変化をAnsysでシミュレーションを実施します。
ここでは、Ansysの連成場要素を利用し、構造と電場を1つのマトリクスで計算することで、形状の転送といった煩わしい操作をせずに、目的の特性を求めます。また、オプションを入れることで、クーロン力を考慮した変形を求めることも可能です。
Ansys Workbenchでは構造-電場のダイレクト連成解析は標準のGUIでは実施できないため、コマンドを挿入することで比較的容易に複雑な解析を表現します。
解析手法
本解析では、Ansysでダイレクトに連成解析ができる連成場要素 (Plane223、Solid226/227) を使用しています。この要素はオプションのキーで表に示す自由度の組み合わせが可能になります。その為、ユーザーが目的の解析に合わせた連成解析を実施可能です。今回は電場と構造の連成解析になりますので、場のキーを”1001”で設定します。実際コマンド挿入している記述を確認すると”1001”と記述されているのが確認できます。
Solid226で考慮可能な自由度
場 | 場のキー | DOF ラベル | 節点荷重ラベル | 反力解 |
---|---|---|---|---|
構造 | 1 | UX、UY、UZ | FX、FY、FZ | 力 |
伝熱解析 | 10 | TEMP | HEAT | 熱流 |
電気伝導 | 100 | VOLT | AMPS | 電流 |
静電場 | 1000 | VOLT | CHRG | 電荷 |
磁場 | 10000 | AZ | CSGZ | 磁気電流セグメント |
拡散 | 100000 | CONC | RATE | 拡散流量 |
Workbench Mechanicalで連成場要素を使用するためには、APDLコマンドを使用します。電気との連成が必要となるパーツにコマンドを挿入し、連成場要素に置換しています。連成場要素に置換したパーツはこれもコマンドにより設定できます。電気抵抗率についてはエンジニアリングデータのフィルタリング機能をオフに設定すると項目が出てきますので、エンジニアリングデータ内で設定しても可能です。その場合は、要素の置換のみのコマンドで対応できます。

(図1)コマンド挿入のイメージ
解析モデルと解析条件
解析モデル
下図の通りのモデル構成になっています。アルミが下に移動することで上部の電極が撓み、ゴムと上部電極で挟まれた空間が小さくなります。また、さらにアルミが下に移動すると間の空間が潰れて、電極がダイレクトにゴムに接します。この状態を模擬するため、上部電極とゴムの間にも摩擦あり接触を定義しています。構造解析のシステムの接触では構造自由度だけが計算に含まれるため、volt自由度もアクティブにするコマンドの挿入も必要になります。この作業は決まったコマンドのコピー&ペーストで対応可能です。

(図2)解析モデル
解析のメッシュについては、内部の空間は最終的に潰れるため、1層でメッシュを切ることで解析の不安定さを軽減させています。さらに、アルミのパーツは構造自由度だけを持たせ、回りの空気と重なった状態でモデル化しています。これはアルミの比誘電率が1で空気の比誘電率も1のため、電場の表現は空気が、構造の表現(センサーを変形させる)はアルミのパーツが持つ状態になっている。もちろん、重複しないように領域をアルミの部分と空間の部分を分けても解析可能だが、パーツの当たり方によっては空気の要素が歪になり易く、収束性が悪化する場合も出てきます。

(図3)解析モデルとメッシュ
解析条件
本解析は電極に対して1[Volt]の電位差になるように電位を与え、その中間の電位0[Volt]が空間の最外面の電位になるように電位を付加しています。1[Volt]差に設定する理由は、電荷をキャパシタンスおよび電位の関係がQ=CVより、電位差を1[Volt]に設定することで、電極の反力の電荷をそのままキャパシタンス値として評価可能な為です。この設定により、解析実行後Workbench Mechanical画面上ですぐにキャパシタンスの変化を確認可能です。

(図4)境界条件
解析結果
図5に示す通り、解析結果をエクセルで編集することなく、Mechanical上で移動量とキャパシタンスの関係をグラフで表示できます。

(図5)移動量VS電荷(=キャパシタンス)
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