解析事例
圧電解析による超音波ホーン振動解析
こんな方におすすめ
- 超音波ホーンの共振特性の評価が必要な方
- ボルト締めランジュバン型振動子(BLT)を使用した製品の開発に携わられる方
超音波ホーンの解析事例です。
超音波ホーンは、超音波溶着、超音波洗浄、超音波カッターなど様々な用途で使用されている共振体です。超音波を発生させる振動子と振動を増幅するホーンからなる構造をしており、振動子には圧電素子が使用されています。圧電素子は張力に対して脆いため、ボルトで締め付けて、圧縮荷重をかけた状態で使用します(このような振動子をボルト締めランジュバン型振動子(BLT)といいます)。
超音波ホーンの設計では、動作周波数で共振し、ホーンが適切な振幅で振動することが重要となります。これらの動特性は、超音波ホーンの形状や質量、振動子のボルト締めによる応力場などで決定されます。Ansys ではボルト締結を静的構造解析で計算し、ここで得られた剛性を用いて周波数応答解析を実施することが可能です。これにより、実現象に近い解析を容易に実施することができます。
本事例ではボルトの締め付けによる初期応力を考慮したうえで、交流電圧を負荷した際に、どの周波数で最良の振動状態が得られるかを解析しています。手順は以下の3ステップです。
1.静的構造解析
2.初期応力を考慮したモーダル解析
3.初期応力を考慮したフル法周波数応答解析
圧電解析ツールPiezo Pro を使用すれば、Workbench環境でも簡単に圧電解析が実施できます
解析結果
1.静的構造解析
相当応力
電圧
ボルトで締め付けられることによって、応力・電位が生じている様子が確認できます。
解析結果
2.初期応力を考慮したモーダル解析
3.初期応力を考慮した周波数応答
静的構造解析で計算した初期応力を考慮して、周波数応答解析を実施します。モーダル解析結果から、長手方向に振動しやすいのは固有振動数53326Hzの17次モードであることがわかっているため、5Vの交流電圧を52200~55000Hzで圧電素子に負荷します。ホーンの変形量を確認することで、適切な振幅で共振しているかどうかを確認することができます。
長手方向の変形量
以下はホーン先端の周波数-長手方向変位のグラフです。初期応力を考慮することで共振する周波数が変化していることが確認できます。ボルトの締め付けなどの予荷重がある場合は、初期応力の考慮が重要となってきます。
Ansys Workbench Mechanical であれば、通常のモーダル解析、周波数応答解析と同様の手順で、簡単に初期応力を考慮することができます。
予荷重を定義した静的構造解析システムをモーダル解析システムにリンクすれば、初期応力を考慮することができます。
メカニカル画面で新たに追加する設定は予荷重と電位の定義のみです。