解析事例
界面剥離・樹脂亀裂進展を考慮したFRPの弾塑性数値材料試験
非線形版 Multiscale.Sim では、Ansysが有する全ての非線形材料モデルを自由にミクロモデルへ定義して、それらの影響を考慮した数値材料試験を実施することができます。本解析事例では、FRPの繊維マトリクスの界面の剥離と、樹脂内部の亀裂進展を考慮した数値材料試験の実施例を紹介します。
界面剥離を考慮した数値材料試験(簡易モデル)
Ansysでは接触界面に対して、法線方向成分と接線方向成分の臨界応力を指定することにより剥離特性を定義することができます。図1に一方向に強化された繊維強化複合材料のモデル概容を示します。繊維は紙面垂直方向に配向しています。
繊維には弾性材料、樹脂には弾塑性材料を定義し、繊維と樹脂の界面には界面剥離の特性を定義しております。
これらの材料モデルを適用した数値材料試験片に対して、単軸引張りと純せん断試験を行いました。まずは単軸引張試験の結果を図2に示します。マクロ材料応答は、界面剥離を考慮したケースとしていないケースを合わせて表示しています。x方向(繊維の配向されている向き)での単軸引張試験では材料界面に剥離を助長する応力が働かないため、界面剥離特性の定義有無に材料応答は依存しません。一方、繊維と直交する方向の単軸引張試験では、界面の法線方向に応力が働くため、界面剥離が発生します。剥離発生にともない、界面間は応力を伝達しなくなるため、見かけの剛性が極端に小さくなる様子が確認できます。
これと同様の純せん断試験における結果も図3に示しました。単軸引張り試験同様に界面剥離に伴う、急激な剛性変化の様子を確認することができます。
ここまでで繊維が1本のみをモデリングした簡易モデルにおける解析結果例を紹介しました。ここで重要なポイントは、Multiscale.Simの数値材料試験では、全方向への周期対称性を仮定していることです。すなわち、今回のケースは、1本の繊維界面にて剥離がスタートすると同時に、材料全体の繊維界面も一斉に剥離を開始した結果に対応しています。より実現象に則した破壊挙動を考慮するためには、複数の繊維をユニットセル内に表現したより詳細な解析モデルが必要になります。
樹脂の亀裂進展を考慮した数値材料試験(詳細モデル)
繊維の配置分布を詳細にモデル化したものに対して、樹脂の亀裂進展を考慮して、数値材料試験を実施した例を紹介いたします。Ansysでは、要素の破壊を模擬した解析を実施することができます。破壊基準も最大応力や最大ひずみ、もしくはそれらの組み合わせなどの様々な指標を与えることができます。設定した基準値に達した要素は、任意の比率で剛性を下げるよう設定することで、破壊を模擬することができます。
図4に一方向強化(しかし繊維位置は分散)モデルに対して、要素破壊を考慮した数値材料試験の結果を示しました。応力の集中する箇所から局所的に要素破壊が発生し、見かけの剛性が下がります。マクロひずみの増加とともに破壊箇所が進展し、破壊領域がモデルの両端まで繋がった段階で、マクロ剛性が消失(材料が完全に破壊する)様子を確認できます。
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