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コモンモードとディファレンシャルモードって何?

基礎から見直すEMC - ノイズ現象を理解しよう :第1回

第1回 コモンモードとディファレンシャルモードって何?

EMCの設計、対策の現場でコモンモード、ディファレンシャルモード(ノーマルモード)という言葉を聞くことが多いかと思いますが、その意味やEMCへの影響について理解されていますでしょうか?
何となくは理解していても細かい部分は理解出来ていないという方も多いのではないでしょうか。
第1回はこのコモンモードとディファレンシャルモードについてお話しします。

信号とノイズのモード

コモンモードとディファレンシャルモードはノイズ以外にも信号の差動伝送などで使用される概念です。
まずはこの2つのモードについて、差動伝送を例にご説明します。
差動伝送路では、信号を2つの信号線の電圧の差によって伝送します。
この正側と負側の配線間の電圧、逆方向に流れる電流をディファレンシャルモードと呼び、差動伝送における信号通信に使用されます。
これに対して、それぞれの配線とGNDとの間の同一の電圧、同方向に流れる電流をコモンモードと呼びます。差動伝送ではコモンモードは意図的に使用せず、インピーダンスの不整合や平衡度の崩れによりディファレンシャルモードから変換される形で発生します。
ノイズにおけるディファレンシャルモードとコモンモードは、差動伝送の正側を信号線や電源、負側を基板GND、GNDを大地と置き換えると同様に考えることができます。
この場合も差動伝送の場合と同様に、ディファレンシャルモードは基板GNDを基準とした伝送信号や電源電圧というような意図した基板の動作に伴う電流・電圧によって発生するものですが、コモンモードはGNDリターンの不備や大地との寄生成分を介した結合によって意図せず発生するノイズです。

図1. 差動伝送におけるディファレンシャルモードとコモンモード

図2. ノイズにおけるディファレンシャルモードとコモンモード

各モードとEMC

次に、各ノイズのモードとEMIの関係について考えていきます。
ディファレンシャルモードのノイズの場合、リターン電流が基板GNDという近傍に存在しているため、信号線や電源に流れる電流とリターン電流の間で磁界が打ち消しあうことで、遠方の放射レベルとしては小さくなります。
これに対してコモンモードのノイズの場合、信号線や電源とGNDには同方向の電流が流れ、リターン電流は大地を流れます。そのため、信号線や電源とGNDを流れる電流が互いに磁界を強めあい、かつリターンが遠いために磁界が打ち消しあうことも無く、遠方での放射レベルが高くなります。

ディファレンシャルモードとコモンモードでは、ノイズが空間に放射される主な仕組みについても異なります。
ディファレンシャルモードでは、主に信号線や電源とリターン電流によって形成されるループアンテナとして空間にノイズが放射されます。
この場合、リターンを近傍に置いてループ面積を小さくすることで共振周波数を高くできるため、ノイズ源のエネルギーが小さい周波数まで共振点をずらすことで影響を抑えることが可能です。
これに対してコモンモードでは、主に接続するケーブルを含めたダイポールアンテナとして空間にノイズが放射されます。
以下にそれぞれのモードにおけるノイズ放射の原理の図と遠方での放射電界の式を示します。
この式からもわかる通り、特に低周波においてはコモンモードの影響が大きいことが分かると思います。

図3. 各モードにおける主な放射原理と放射電界強度

コモンモードの発生要因

コモンモードの発生要因には様々ありますが、ここでは2つの主な発生原理について説明します。

1つ目は、基板上のGNDの影響です。
GNDが十分でない基板では、プレーンのインピーダンスによってGNDの間に電位差が生まれます。
基板上の回路はGNDを基準に動作するため、このGNDの電位差はコモンモードのノイズとなります。
また、リターンとなるGNDのスリットや、ビアを介した配線層の変更によるリターン分断があると、信号線とリターンの間の結合が崩れることにより、ノーマルモードがコモンモードに変換されます。
このように、基板のレイアウト設計によって意図せずコモンモードノイズを発生させてしまう場合があります。
例からも分かる通り、こういった問題のあるレイアウト設計は一般的なEMC設計ルールとしても規定されているものが多いため、ルールチェックを活用することである程度防止することが可能です。

図4. GND不備によるコモンモードの発生

2つ目は、ケーブル接続の影響です。
ケーブルが接続される場合、基板とケーブルの間の平衡度の違いによりモード変換が起こります。
平衡度とは、信号や電源とそのリターンの間の対地電圧の分配のことを言います。
これは構造によって異なり、例えば同一形状の2線ケーブルであれば大地に対しても正負の異なる等分の電圧が加わります。このような回路を平衡回路と言います。
これに対して同軸ケーブルや信号線と基板GNDのような構造では、リファレンス側が大きいため中心導体や信号線にほとんどの電圧が集中します。このような回路を不平衡回路と言います。
平衡状態が異なる回路が接続されると、GNDに電圧が発生することでコモンモードが発生します。これが平衡度の違いによるモード変換です。
一般的に基板上のGNDは信号線に比べて大きいこともあり、ケーブル接続によるモード変換を防止することは非常に困難です。
このような場合にはケーブル接続部の近傍にYコンデンサやコモンモードチョークコイル等の対策部品を置くことで対策をするのが一般的です。

図5. 平衡度の違いによるコモンモードの発生

まとめ

今回はEMCで非常に重要なコモンモードとディファレンシャルモードについてお話させて頂きました。
こういった背景を理解することで、EMC設計、対策における常識の背景について理解を深められるため、実際の製品に適用する際の判断をより正確に行うことができるようになります。

次回はSパラメータ、Zパラメータといった二端子対回路網についてお話させて頂きますので、もし興味があればチェックしてみてください。

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