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EMC学習時の「なんで?」を解決

Sパラメータはなぜ「 20log 」で計算するのか?

EMC学習時の「なんで?」を解決 :第1回

Sパラメータは “電力の比” なのに20×logで計算する理由とは?

1回目は、「Sパラメータはなぜ20logで計算するのか?」というテーマです 

高周波の勉強を始めると、必ずSパラメータという言葉が登場します。私も当時、Webサイトなどで情報を集め、「Sパラメータは電力の比である」と多くのサイトに書かれているのを見て、なんとなく理解した気になっていました
ところがあるとき、実数で表されたSパラメータの値を手計算でdB表記に変換する必要がある場面に出くわしました当時の私は、「電力の比dBで表すなら10×logである」と考え10×logで計算しましたが、なぜか結果が合いません。調べていくうちに、SパラメータをdB表記にする際は10×logではなく20×logで計算することを知りました。 

そこで湧いてきたのが、次の疑問です。 

 

「なぜSパラメータは“電力の比”なのに20×logで計算するのか?」 

 

この疑問をきっかけに、Webサイトを漫然と眺めるのではなく、Sパラメータの定義をしっかりと学ぶことにしました結論から言うと、Sパラメータは電力の比ではなく入射波aと反射波bの比として定義されています 

Sパラメータの定義

Sパラメータは以下のように定義されます。
その入射波と反射波が電力なのでは?と当時の私は思いましたが、aとbのそれぞれの波は次のように定義されています。
このように、aやbは電圧と電流をインピーダンスの平方根で正規化した量であり、単位は√W(ワットの平方根)です。
この形式で定義することで、aとbの絶対値の2乗が電力に比例するようになります。

なぜインピーダンスのルートで正規化するのか?

電力は電圧の2乗に比例します。そのため、Sパラメータを電圧や電力のままで定義してしまうと、非線形な関係になってしまいます。
しかし、a波・b波のように「インピーダンスのルートで正規化された物理量」という形にしておけば、以下のような線形な関係で入出力を表現できます
このように、aとbと導入したことでSパラメータを線形行列として扱えるという大きなメリットがあります。
また、|a|² や |b|² を取ればそれぞれのポートに関する電力を得ることができるため、電力としての意味合いもしっかりと持っていることになります。

結論

Sパラメータは電力の比ではなく、「インピーダンスのルートで正規化された入射波aと反射波bの比」であるため、dBで表す際には10×logではなく20×logで計算する必要がある 

 ということで「なんで?」を解決することができました。
このことを理解したとき、webサイトだけ見てなんとなく理解したつもりになっていた自分を反省しました。
やはり、多少面倒くさくてもしっかりと定義に立ち返って学ぶこと大切であると実感した瞬間でした。 

これからも学習時の「なんで?」を解決するコラムを記載していきますので、
もし興味があればチェックしてみてください。
 



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