CAEを学ぶ
Ansys Workbenchでの効果的な薄板モデル解析
ソリッドシェル要素の特徴や設定手順についてご紹介をいたします。
はじめに
薄板製品は自動車部品や家電製品における筐体、建材製品における屋根など幅広い分野で利用されています。一般的に薄板製品を解析対象物としてモデル化する場合は、3次元ソリッドモデル(ソリッド要素)もしくは、サーフェスモデル(シェル要素)としてモデル化する方法が考えられます。近年ではCADで作成した3次元形状をそのまま取り込んで解析することが多くなりましたが、薄板モデルを3次元ソリッドモデルとしてモデル化すると、サーフェスモデルよりも格段に解析規模が増大する問題点があります。特に収束計算を必要とする非線形解析では、解析規模の増大が計算時間に多大な影響を与えます。
これに対して、Ansys Workbench Simulation Ver.11.0では薄板モデルを3次元ソリッドモデルとして効率的に計算する要素としてソリッドシェル要素が利用できます。ここでは、このソリッドシェル要素の特徴や設定手順についてご紹介をいたします。
ソリッドシェル要素の特徴
ソリッドシェル要素の形状は、低次の3次元ソリッド要素と同じでありながら厚さ方向の曲げに対してシェル要素と同等の特性を持っています。つまり、厚さ方向にはシェル要素の挙動、それ以外の方向にはソリッド要素の挙動という2つの特性を兼ね備えた要素です。
これにより、広範囲の厚さ(極度に薄いものから中程度に厚いものまで)に対して適用可能な要素となっています。
図1は、各要素において正方形の薄板形状のモデル化を行い、エッジの要素分割数を増やしたときの変位量を比較したものです。境界条件は薄板形状の2辺を固定して面に圧力を負荷しています。グラフよりソリッドシェル要素は、ソリッド要素と比較して少ない要素分割数にて曲げを精度よく表現できていることがわかります。
また、その他にもソリッドシェル要素には以下のような利点が挙げられます。
サーフェスモデル(シェル要素)と比較して
- 3次元CADデータにてソリッド データからサーフェスデータに変換する必要がない。
- ソリッド要素と同じ自由度のため。ソリッドモデルと簡単に接触が設定できる。
- 板厚の変化を表現できる
ソリッドモデル(ソリッド要素)と比較して
- ソリッドシェル要素は低次要素のため、同じ要素サイズの高次要素(Ansys Workbench Simulationのデフォルト)よりも解析規模を抑えることができる。

ソリッドシェルメッシングの設定
ソリッドシェル要素は、厚さ方向とそれ以外の方向にて特性が異なります。そのため要素形状はヘキサもしくはプリズムのみになります。
つまりソリッド要素のようにテトラ形状がありません。そのため、ソリッドシェルメッシングでは、モデルをスウィープメッシュというエリアメッシュを厚さ方向へ押し出すアルゴリズムによりヘキサ形状もしくはプリズム形状に要素を分割します。よって、モデルはスウィープメッシュが適用できるように、厚さ方向に対して位相的に一致した2つの面を持つ必要があります。
次にソリッドシェルメッシングの設定手順としては、ツリーアウトラインのメッシュをクリックし、コンテキストツールバーより[メッシュコントロール]>[手法]を挿入します。そして詳細ビューの[定義]>[手法]を[スウィープ]に変更します。続いて同じく詳細ビューの[定義]>[ソース/ターゲット選択]を[自動(薄いモデル)]もしくは[手動(薄いモデル)]に設定します。[自動(薄いモデル)]の場合は、薄板の厚さ方向を自動的に認識してメッシングが行われます。もし自動的に認識できなかった場合は、[手動(薄いモデル)]を選択することで、ソース面とターゲット面を手動で選択して押し出し方向を指定することができます。
以上の設定によりソリッドシェルメッシングが適用されます。

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