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主応力(しゅおうりょく)
英訳:principal stress
3次元物体内には、任意の直行座標系の座標軸を面法線とする微小な立方体領域に対して3成分の垂直応力と3成分のせん断応力、計6成分の応力が作用しますが、これらの値は座標系を変更すると変化するため、材料が受ける負荷の評価に適しません。
そこで、線形代数における対称テンソルの固有値と固有ベクトルの考え方を用いて対角化した主応力テンソルを新たな評価指標として導入します。
主応力テンソルは、せん断応力がゼロになる座標系Cpを基準とした応力テンソルであり、主応力テンソルの垂直応力3成分を主応力と呼びます。
主応力は、値の大きい方から順に「最大主応力(σ 1 )」、「中間主応力(σ 2 )」、「最小主応力(σ 3 )」と定義され、最大主応力は材料にかかる最大の引張り応力の評価、最小主応力は最大の圧縮応力の評価に使用されます。
下図は梁の曲げ解析で最大主応力と最小主応力を表示したものです。上側に引張応力が働くため、最大主応力では赤く表示されます。下側は圧縮応力が働きます。最小主応力では上側が赤く表示されていますが、上側に圧縮応力が働いているわけではありません。圧縮応力はマイナスになるほど大きい応力値であるため、青く表示されている下側で圧縮応力が高いことになります。このように最小主応力では色の見方が逆になりますので注意が必要です。
(なお、Ansysではカラーレジェンドを反転させ、圧縮側を赤く表示することもできます)
主応力ベクトルを表示すると、主応力の方向を表示できます。下図の例では最大主応力(赤い矢印)がRに沿って発生している、つまりRを押し広げるように応力が働いている様子が観察できます。
一般的に使用される単位
- SI単位では Pa(パスカル)
- 長さをミリメートルとした場合 MPa(メガパスカル)
Ansysにおける取扱い
- Ansysでは最大主応力をS1と略して表記することがあります。中間主応力はS2、最小主応力はS3となります。
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