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せん断ひずみ(せんだんひずみ)
英訳:shear strain
せん断ひずみは、下図のような物体において断面をずらすような変形が発生したときに、元の長さに対する変化量の比として説明されることが多いです。

ここではせん断ひずみをεと記載しましたが、τやγと表記することも多くあります。
しかし、これは単純化された表現であり、より詳しく説明すると以下のようになります。
まず物体中に任意の直交座標系を定義し、その座標軸を法線方向とする微小な立方体領域を仮定します。この微小立方体において、座標系Y方向を法線方向とする面の接線方向ひずみはε yx およびε yz です。
ここで、添え字の1番目は作用面の法線方向を、2番目はひずみの作用方向を表します。

面の水平方向に働くひずみは、面に下図のような変形を表すものと考えるとわかりやすいです。

同様にして、他の面についても考えると、面の接線方向に働くひずみは合計6成分(ε xy ,ε xz ,ε yx ,ε yz ,ε zx ,ε zy )存在することになります。

さらに、XY面内の面の接線方向のひずみε xy およびε yx は、変形後形状を剛体回転させることによりε xy =ε yx にすることができます。
同様にε yz =ε zy 、ε xz =ε zx とできるため、面の接線方向に働く独立なひずみ成分は全部で3つになります。

ここまでに得られたひずみを、添え字に注意してマトリクスの形でまとめます。
行にひずみの作用面、列にひずみの作用方向をまとめています。
このようにマトリクスでまとめたひずみを「ひずみテンソル」と呼びます。

このひずみテンソルのうち、作用面と作用方向が一致する対角3成分が「垂直ひずみ」、残りの成分が「せん断ひずみ」です。

ひずみテンソルは、最初に定義した座標系を変更すると成分の値が変化します。
つまり、垂直ひずみ・せん断ひずみは座標系依存であり、CAEで垂直ひずみやせん断ひずみを評価する際には、どの座標系を基準に表示するかを決める必要があります。
なお、ここで定義したひずみは工学ひずみ(公称ひずみ)であり、微小変形が前提となっています。
ひずみテンソルのせん断ひずみには、工学ひずみの1/2の値が使用されます。
大変形を考慮した解析では真ひずみ(対数ひずみ)という異なる定義を使用します。
微分形式による表現
CAEでは微分形式でひずみをあらわすことが多くあります。
簡単のため2次元の微小な領域が1方向にせん断変形した場合のひずみを考えます。
元が微小な長さ⊿x,⊿yの領域(点線)で、図に表すようにθの微小な角度でせん断変形して実線の領域になったとします。

先のせん断ひずみの定義に従い、せん断ひずみは次のように表されます。

⊿xは微小ですので、テイラー級数展開で二次以降の項を無視すると

と表せます。
また角度θが微小なので、tanθはθと近似できます。
従って

と表せます。
つまり、θが微小であれば、せん断ひずみは角度と同じといえます。
次に、微小な角度θおよびλで変形したときを考えます。
上述のとおり、せん断ひずみは角度と同じですので、

と表せます。
式3で表した関係をλにも適用すると次のように表せます。

以上の考え方を3次元に拡張すると、3方向のせん断ひずみは次のようにあらわされます。

一般的に使用される単位
- 無次元量のため単位はありませんが、しばしば100を乗じて%で表されます。
Ansysにおける取扱い
- AnsysではXY方向のせん断弾性ひずみをEPELXYと略して表記することがあります。YZ方向はEPELYZ、XZ方向はEPELXZとなります。
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