CAEを学ぶ
摩擦係数(まさつけいすう)
英訳:friction coefficient
CAEでは一般にクーロン摩擦が用いられ、法線方向の接触圧P、摩擦応力τ lim との比例定数を摩擦係数と呼びます。
接触する二物体が、相対的に静止しているか動いているかで摩擦力が異なり、静止しているときの摩擦係数を「静摩擦係数」、動いているときの摩擦係数を「動摩擦係数」と呼びます。
一般に静摩擦>動摩擦となります。
静摩擦と動摩擦が大きく異なると、(相対的に)静止していた物体が動き出すとき、あるいは動いていた物体が止まるときに、大きな摩擦力の変化が発生し、計算上困難が伴います。
そのため、(相対的な)滑り速度に応じて、静摩擦係数と動摩擦係数を滑らかに切り替えるような設定が用いられることがあります。

摩擦係数だけでは表現できない現象を表すために、以下の設定が利用されることがあります。
クーロン摩擦の定義によると、法線方向の接触圧Pが非常に大きくなると、摩擦応力τ lim も非常に大きくなり、滑りが生じなくなってしまいます。この定義では、金属成形工程のように大きな力が働く場合に適切に現象を表現できないため、ある一定の閾値「最大接触摩擦応力」を設けて、それを超えると強制的に滑りが発生する設定が可能です。
一般に閾値は、σ Y /√3に近い値が用いられます。(σ Y :材料の降伏応力)
クーロン摩擦の定義では接触圧がゼロだと摩擦力もゼロとなってしまいます。接触圧がゼロであっても摩擦力を働かせるために「粘着滑り抵抗」を定義し、それを超えると滑りが発生する設定が可能です。

Ansysにおける取扱い
- Ansysで定義する摩擦係数は動摩擦係数であり、デフォルトで動摩擦係数と静摩擦係数が等しいとして計算しています。
- 動摩擦係数と静摩擦係数に異なる値を定義できます。また、本文中にあるように徐変させることもできます。
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