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平均線膨張係数(へいきんせんぼうちょうけいすう)
英訳:secant coefficients of thermal expansion
平均線膨張係数とは、温度の上昇による物体の長さの膨張する割合を示す物性値のひとつで、定義温度から評価温度までのひずみ-温度曲線における平均の勾配です。
割線線膨張係数とも呼ばれます。
線膨張係数には測定方法により、平均線膨張係数(以下α se )のほかに、瞬間線膨張係数(以下α in )があります。
前述のとおり、平均線膨張係数(α se )は定義温度(T 0 )から評価温度(T n )までのひずみ-温度曲線における平均の勾配です。
また、瞬間線膨張係数(α in )はこのひずみ-温度曲線の接線勾配です。
α in とα se には以下の関係が成り立ちます。
平均線膨張係数は定義温度から評価温度までの平均の勾配であるため、定義温度により値が変化します。
たとえば、定義温度T 0 =20℃で、T 1 =25℃、T 2 =100℃ 、T 3 =120℃での平均線膨張係数が、それぞれ1.5e-5、1.3e-5、1e-5であったとします。
CAEで解析するときに、参照温度(無ひずみ温度)が定義温度と同じ20℃であれば、これらの値をそのまま平均線膨張係数として定義できます。
しかし、解析の参照温度(無ひずみとなる温度)が定義温度とは異なる温度(たとえば70℃)であれば、参照温度を基準とした平均線膨張係数に変換する必要があります。
なぜならば、構造解析では参照温度と各評価温度の差からひずみを計算しているので、参照温度を基準とした各評価温度へのひずみ-温度勾配が必要になるからです。
以下のグラフで示したとおり、参照温度を基準とすると、各評価温度(T 1 ,T 2 ,T 3 )への勾配、つまり平均線膨張係数も変化することがわかります。
CAEソフトによっては、定義温度の変更による平均線膨張係数の変換機能が用意されています。
下記は Ansys Mechanical APDL における例です。
以上の理由により、CAEで材料物性表に記載されている平均線膨張係数を入力する場合は、定義温度、つまり材料物性測定時に基準とした温度を調べておく必要があります。一般には物性は室温で測定すると考えられるため、定義温度は20~25℃程度と思われます。
もし定義温度と参照温度が異なる場合には変換が必要です。
なお、平均線膨張係数が温度により変化しないと仮定した場合は、定義温度・参照温度に関わらず平均線膨張係数の値は一定です。ひずみ-温度曲線は以下のようになります。
一般的に使用される単位
- 1/K(毎ケルビン)または1/℃
- 10 -6 /Kが使用されることもあります。
Ansysにおける取扱い
- Ansysでは平均線膨張係数は ALPX と略して表記されることがあります。
- 異方性の場合、X方向:ALPX、Y方向:ALPY、Z方向:ALPZとなります。
- Workbench Mechanicalでは、平均線膨張係数は参照温度にあわせて自動的に変換されます。
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