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複素固有値解析(ふくそこゆうちかいせき)

英訳:complex eigenvalue extraction analysis

複素固有値解析とは、減衰を考慮したモーダル解析のことです。
自励振動など特殊な場面で利用されます。
(減衰を考慮しないモーダル解析は、実固有値解析と呼ばれます)

複素固有値解析では、固有値が実部と虚部からなる複素数となります。

複素固有値の実部と虚部の値の意味を1自由度系自由振動(一般粘性減衰系)モデルを使用して説明します。

下図のような1自由度粘性減衰振動系の運動方程式は(式1)のようになります。

ここで、減衰自由振動の条件としてF=0とおく、つまり、減衰を考慮したマスのついたバネをある状態からリリースすることによって発生する定常振動状態の運動方程式は

となります。

系は振動状態にあることから、変位u(t)を次のように仮定します。

これを(式2)に代入します。

したがって、固有値jωは以下のように求められます。

ここで、C c =2mω 0 ,ξ=C/C c と定義すると

となります。
ω 0 は不減衰固有振動数、C c は臨界減衰係数、ξは臨界減衰比と呼ばれます。

ここで、ξの値により系がどのような振動状態になるかを考察してみます。

ケース1)ξ>1の場合

1 , jω 2 は共に負の実数となります。

これを(式3)に代入すると、u(t)は一方的に減衰するだけであり、系は振動しないことが分かります。(過減衰状態)

ケース2)ξ=0の場合

jωは複素数となり、剛性と質量の関係からのみ決定される実固有値の解となります。

これを(式3)に代入すると、系は一定の振幅で振動することが分かります。(定常振動状態)

通常のモーダル解析は、このように減衰を無視(つまりξ=0)して計算しており、実固有値解析と呼ばれます。

ケース3)ξ<1の場合

1 , jω 2 は共に複素数となります。

このように固有値が複素数となる場合、複素固有値解析が用いられます。

ここで、

と定義すると

となります。これを(式3)に代入すると以下のようになります。

実部(real)は、減衰の早さを示します。
虚部(imag)は、振動の速さ(固有振動数)を示します。

ここで、 実数部が正(e σt となる場合、変位は時間と共に発散し、系は 不安定 となります。
つまり、複素固有値の虚部は固有振動数、実部は構造の安定性を意味します。

Ansysにおける取扱い

  • Ansysでは複素固有値解析の解法として、減衰法、QR減衰法、非対称法を利用できます。

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