解析事例 随伴法を使用した空力効率に関する形状の最適化

随伴法を使用した空力効率に関する形状の最適化

公開日:2019年4月

アジョイントソルバーは、数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)で求めた流れの解を使い、すべての設計変数に関する性能指標(抗力、伝熱など)の感度を計算します。随伴解を得ることで、設計者は、設計の形状を変更して興味の対象となっている値を改善する方法に関する重要な情報を手に入れることができます。メッシュモーフィングは、容易に使用できる強力なツールです。これを使用すると、設計者はメッシュレベルやパラレルソルバー内でジオメトリを変更し、設計変更の効果を評価することができます。設計者は、その後、最適な設計に至るまでこのプロセスを反復することができます。反復する際に、元のCAD形状に戻る必要はありません。複雑なジオメトリの場合、空気干渉が複雑になる上、アジョイントソルバーで得た洞察により、パラメトリックジオメトリでは表すことが難しい予想外の方向に設計が進む可能性があります。

目次

はじめに

運輸は世界のエネルギーの主要な消費部門です。米国のエネルギー総使用量のほぼ4分の1が運輸部門によるものであり、そのかなりの部分が空気から受ける抗力によって費やされています。車両の受ける抗力は、車両で達成できる全効率の決定に大きな役割を担っています。たとえば、通常のトラック燃料のほぼ22%は抗力の克服に費やされています。したがって、空力特性の改善が、世界の総エネルギー消費量に著しい改善をもたらし、自動車業界に削減効果を実現する可能性があります。

米国の自動車に関する企業平均燃費(CAFE:Corporate Average Fuel Economy)基準などの政府の厳しい規制に加え、より安価でグリーンな運輸に対するお客様の強い要求により、空力特性の改善が緊急の課題となっています。たとえば、航空運送事業者は、通常1%ほどの非常に小さな利益率で事業を運営しています。最近の燃料価格の変動により、その事業環境はさらに困難なものとなっています。同時に、航空宇宙産業はClean Skyイニシアチブなどの意欲的な環境目標に取り組んでいます。このイニシアチブでは、2020年までにCO2の排出量を50%削減し、NOxの排出量を80%削減することが義務付けられています。したがって、航空機のOEMやそのサプライヤには、可能なかぎり高い燃料効率を持つ航空機が求められています。数値流体力学(CFD)を使用して設計効率を評価することは、一般的です。アジョイントソルバーと最新のメッシュモーフィング技術を組み合わせることにより、設計者は予想外に設計をすばやく最適化することができます。これは、パラメータベースの最適化で得られる結果をしばしば凌駕しています。

このホワイトペーパーでは、大規模モデルを解決するための多目的設計評価と手法を可能にする近年の進歩を含めた、随伴技術の概要とその利点について説明します。

また、このような近年の進歩を利用して、新欧州ドライビングサイクル(NEDC:New European Driving Cycle)について乗用車の空力効率を最適化するケーススタディについても記載しています。このケーススタディは自動車への利用に重点を置いていますが、ここで論じられている技術は、航空宇宙シミュレーションにも同様に機能します。

アジョイントソルバー技術

概要

アジョイントソルバーは、流体システムの性能に関する詳細な感度データを提供することにより、従来の流れソルバーの適用範囲を拡張する特殊なツールです。このセクションでは、その技術の概要について説明します。計算の詳細については、巻末のREFERENCESに示した[1、2]の説明をご覧ください。

流れソルバーを使用してシミュレーションを実行するには、システムのジオメトリを解析用メッシュの形式で提供し、問題、物理現象、および境界条件を指定します。従来の流れソルバーから、指定した流れ物理現象の影響を受ける流れの状態を説明する詳細なデータセットが提供されるので、さまざまなポストプロセス手順を使用してシステムの性能を評価することができます。

問題を定義する入力を変更すると、計算結果が変わる可能性があります。この変化の度合は、調整対象の特定のパラメータに対するそのシステムの感度に応じて異なります。実際、該当のパラメータに関する解データを微分することにより、この感度が1次精度にまで数値化されます。これらの微分係数を決定すると、それが感度解析の定義域になります。

入力データセットが大量に必要な上、流体データが大量に生成されることを考慮すると、計算可能な膨大な微分データが流体システム用に存在していることになります。入力データに対する出力データの微分の行列は莫大になる可能性がありますが、解析の目的によっては、この微分データのほんの一部しか対象にならない可能性があります。

アジョイントソルバーは、大量の入力パラメータについて、また同時に1回の計算で、1つの工学的観測の微分を計算するという偉業を達成しています。工学的観測は、物体に対する揚力や抗力、サーフェスからの熱流束、またはシステム内での全圧の低下などのシステム性能の尺度になり得ます。ただし、ソルバーがシステムの幾何学的形状に関する微分係数を検出し、感度を評価できるようにすることが重要な原則となっています。

流体システムのこれらの感度を理解すると、非常に貴重な工学的洞察を提供できるようになります。感度が非常に高いシステムは、ジオメトリのわずかな変化や流れ条件の変化が原因で、性能に強い変動性を示す可能性があります。さらに、流体システムの感度を計算すると、勾配ベースの形状最適化の中心的なニーズが満たされることから、アジョイントソルバーが設計最適化の強力な一意のエンジニアリングツールになります。

随伴解を計算すると、ジオメトリサーフェス上のあらゆるポイントの位置に関する観測量を微分できるようになるため、特定の境界条件設定に対する観測の感度を検出できます。

同一の情報を集めるための代替案を検討する際に、この方法の力が明らかになります。翼表面のポイントを移動させる一連の流れの計算を考え、面法線方向に短い距離を設定してから、流れと抗力を再計算してみます。サーフェス上にN個のポイントがある場合は、データセットの構築には、N個の流れの計算が必要です。同じデータを1つの随伴計算で得られることを考えると、随伴法に大きな強みがあります。というのは、少量の三次元流れを計算する場合でも、サーフェス上に数千個以上のポイントがある場合があるからです。

図1-随伴最適化ワークフロー
図1-随伴最適化ワークフロー

その後、計算された随伴感度を使用して、システムに対するインテリジェントな設計変更を誘導できます。随伴感度データから、ジオメトリのサーフェス全体のマップが提供されるからです。設計変更が高感度領域で行われる場合、少しの変更でも、興味の対象となっている工業量に対して大きな影響を与えるため、最も効果的になる可能性があります。図1に示すように、局所感度に比例してシステムに変更を加えるというこの原則を繰り返し適用することが、設計最適化用の単純な勾配アルゴリズムの基本です。このワークフローは、次の点で従来の最適化ワークフローに比べて優れています。パラレルソルバーによって完全に実行できるため、ジオメトリの変更、再メッシュ、および各種ステージ間でのファイルの読み取り/書き込みのオーバーヘッドがないという点です。

二次元シリンダーの例

直交流にさらされ、対称平面によって上下が囲まれた円柱の二次元解析について考えてみます。流れは非圧縮性の層流で、レイノルズ数は円筒の直径に基づき40とします。図2に示す速度プロットからわかるように、問題は、定常流れのレイノルズ数で解析しました。

図2-速度の大きさのコンター図 図2-速度の大きさのコンター図
図3-体積力Xコンポーネントに対する随伴感度のコンター図 図3-体積力Xコンポーネントに対する随伴感度のコンター図

円柱のX方向の抗力に対応する随伴解を考慮した場合、図3に示すように、円柱にかかる抗力の感度は、流れのX方向に働く体積力に応じて異なります。ここで、図は、円柱の下流に体積力が働く場合、効果が最小になることを示しています。ただし、体積力が円柱の上流に直接働く場合は、乱された流れが円柱に影響し、円柱が受ける力を変更します。

図4-二次元の円柱の形状に対する随伴感度のベクトル
図4-二次元の円柱の形状に対する随伴感度のベクトル

図4は、サーフェスの形状の変化に対する、円柱にかかる抗力の感度を示しています。下流側ではなく、上流側で円柱が変形された場合に、抗力はより大きな影響を受けます。この簡単な例から予測できるように、クロスストリーム方向に円柱を細くすると、最大の効果を得ることができます。

Y方向の揚力に対する感度を抗力に続く2つ目の目標と見なした上、抗力を下げて揚力を上げるために必要な設計変更を計算できる場合は、図5に示すように、円柱のサーフェスをモーフィングしてこれらの目標を改善できます。

近年の進歩

過去、アジョイントソルバーは、モータースポーツ分野で主に使用されていました[3〜5]。この技術の自動車業界への採用が遅々としていたのは、主に、高度に分離された後流領域の不安定性の増加という問題について、随伴解で収束を得ることが困難だったことによります。ただし、アジョイントソルバー技術の近年の数多くの進歩により、このクラスの流れの状況は改善されました。

安定化

最近開発された方法が散逸法です。これは、…

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