解析事例 IoTのエンジニアリング

IoTのエンジニアリング

公開日:2019年4月

私たちの周囲には、コネクテッドデバイスが急増しています。毎日のように革新的な製品が新たに出現し、慣れ親しんだ製品も、より新しくスマートな機能を利用できるようになってきています。これらの展開によって、私たちがより健康で安全になるだけでなく、より効率的、革新的になり、競争力および利益が向上すると見込まれています。大きな可能性を秘めたInternetofThings(IoT)は、デバイスの構築を担うエンジニアに新たな課題も提示しています。本資料では、最も重要な課題を特定し、最善のIoT製品の設計に役立つ、堅牢なアプリケーションによってサポートされたプラットフォームソリューションについて説明します。

目次

アナリストの見積もりでは、2025年までに、全世界で200〜300億台のコネクテッドデバイスが存在するようになり、11兆ドル近い市場機会がもたらされるとされています[1]。ファクトリーオートメーション、スマートシティ、家電、およびヘルスケアにおける革新が突出していますが、実際にはグローバル経済のあらゆる局面がIoTの「収集-接続-相関」の価値から影響を受けます。

調査会社であるGartner社は、IoTなどのデジタルテクノロジーによって、ビジネスモデルが変わり、すべての産業において従来の枠組みが崩れつつあり、たとえば、コネクテッドカーを製作することで車とスマートフォンのあいだの従来の業界の垣根が崩されていると指摘しています。その結果、市場における既存の勢力は、技術に精通したスタートアップ企業および従来は異業種だった業界からの新たな参入者による脅威に対抗しようとしており、技術の習得を加速しています。一方、機敏なIoT先駆者は、デジタル技術への投資を加速させており、明確な競争優位を手に入れつつあります。GeneralElectric社のCEOであるJeffImmelt氏は、「昨晩、製造業者として眠りについたのに、今朝、目が覚めたらソフトウェアおよび分析業者になっている」と述べて、IoTのインパクトを総括しました。

組織の技術リーダーは、おそらく自社製品に対するIoT戦略の構築をすでに任されているか、近い将来任されるでしょう。技術リーダーは多くの同業者と同様に、「製品」から、従来の専門分野ではない技術やスキルを必要とする「スマートなコネクテッドプロダクト」への旅をどのように始めたらよいのか奮闘している最中かもしれません。

IoTの3つの要素

最も単純な形では、IoTは以下の図に示すように3つの要素(モノ、ネットワークまたはゲートウェイ、クラウド)で構成されています。

IoTの3つの要素の相互作用
IoTの3つの要素の相互作用

モノ

自動車、電話、ロボット、産業用機械などの製品、さらには住宅までがスマートになり、つながりつつあります。加速度、方向または接触の測定に使用できるセンサーなどのように、モノに追加される処理能力はますます増えています。モノには、Wi-FiやBluetoothなどそれらをネットワークに接続する通信システムも含まれます。このホワイトペーパーでは、主に、IoTによってもたらされる機会と複雑さの両方に対処するためにエンジニアリングシミュレーションを使用したモノの設計に重点を置いて説明します。

ネットワーク

ネットワークは、クラウドとモノのあいだに位置し、IoTインフラストラクチャに不可欠です。ネットワークがなければ、コネックテッドデバイスは存在できません。堅牢で信頼性の高いネットワークには、高速ルーター、スイッチ、およびゲートウェイテクノロジーが含まれています。これらの各コンポーネントは、それ自体が「モノ」であるとみなすことができ、エンジニアリングシミュレーションの恩恵を受けられる場合があります。ネットワーク設計およびプロトコルはIoTにとって重要な課題ですが、このホワイトペーパーでは取り上げません。

クラウド

クラウドは、データセンターと、IoTのビジネスロジックの大部分を実行するソフトウェアで構成されています。データセンターには、サーバーとともに、基盤となるネットワーク機器、環境制御システム、信頼性の高い送電網などのインフラストラクチャテクノロジーが配置されています。多くの注目を集めているのはクラウドインフラストラクチャですが、モノを設計するエンジニアが特別な関心を寄せているのはIoTデバイスを運用管理するクラウドソフトウェアです。

専門家の見解は、モノから収集されたデータの分析によってIoTの価値が完全に実現されるということで一致しています。たとえば、タービンエンジンの振動は、運用についてより適切な意思決定を行うために役立つ極めて重要な見識を提供できます。GEやPTCなどの大手企業は、現場資産のパフォーマンスを最適化し、将来の革新を推進するためにシミュレーションツールに接続できるプラットフォームを開発済みです。

シミュレーションを使用してパフォーマンスを最適化する方法の1つとして、「デジタルツイン」の使用があります。デジタルツイン[2]のアイデアは、シミュレーションに始まり、シミュレーションで終わります。物理的なモノそれぞれに、付随するそっくりの仮想のモノ(デジタルツイン)を用意します。モノから収集される実際のパフォーマンスデータは、リアルタイムでデジタルツインのモデル予測と比較され、潜在的なパフォーマンス上の問題を特定し、防止するためのメンテナンスを実行します。同じデータを、次世代製品の設計およびシミュレーションに役立てることもできます。

IoT戦略全体にとっては業務データおよび技術的データの分析が重要ですが、このペーパーでは、モノ、ネットワーク、およびクラウドのハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントを作成するエンジニアが直面する設計上の課題に重点を置いて説明します。ここでは電子機器コンポーネントおよび組み込みソフトウェアの設計について説明しますが、通信プロトコルおよび分析システムおよび手法については取り上げません。

スマートにつながるモノを設計する際の5つの重要課題

研究によれば、製品設計サイクルの早い段階にシミュレーションベースの手法を取り入れた最高クラスの企業は、「そのプロセス全体にわたってより優れた意思決定を行える。これによって、これらの大手企業はより高品質な製品をより低コストで生産できるようになるだけでなく、彼らの製品を差別化する革新と機能を提供できるようになっている。最終的には、これによって、新製品の利幅が15%向上し、それは同業者が達成する利幅の3倍にあたる。」とされています。[3]

IoT製品の開発にシミュレーションが不可欠なのはなぜでしょうか。メカニカルシステムから数百万行ものソフトウェアを含む電子的システムに移行したことで、複雑さが一層高まりました。この電子システムへの移行によって多くの面で製品の信頼性が高まりましたが、無線接続、トランジスタ、およびソフトウェアの密度によって別の課題が発生しました。シミュレーションは、数十年にわたってコンポーネントの設計に使用されてきました。しかし、IoTインフラストラクチャを構築する企業は、より低いコストでより高い信頼性、精度、ロバスト性、および革新のすべてを必要とする多面的な課題に取り組んでいます。これらの目標を達成するために、企業はサイロ化して設計することも従来のビルドアンドテスト手法に頼ることもできないため、ほかの誰よりも革新的になっていくでしょう。

シミュレーションによって、中小企業が大手企業と競争できる公平な競争が可能になります。シミュレーションを使用すると、数人のエンジニアで彼らのアイデアから実際にプロトタイプを作成して調整することができ、従来のエンジニアリング手法の限界を越えて、マルチドメインおよびマルチフィジックス解析を使用できます。Boston Consulting Group[4]は最近のレポートで、コネクテッド・エコノミーの重要な成功要因としてシミュレーションを挙げています。

私たちの業務は、世界中の複数の産業部門にわたっていますが、IoTの技術的問題に対処している企業との取り組みの中で、5つの技術的課題が浮き彫りにされました。これらの課題は、経験豊富な専門家にとって新しいものではありませんが、IoTがもたらす機会と競争力の規模の大きさから1つの結論が導き出されます。IoTエコノミーの勝者と敗者の分かれ目は、これらの課題に迅速に一貫して取り組めるかどうかにかかっています。

SWAP-C (Size, Weight, Power and Cooling、サイズ、重量、電力、放熱)

飛行機、自動車、スマートフォンのいずれを設計しているのかに関係なく、エンジニアは、サイズ、重量、およびエネルギー効率について製品を最適化する必要があります。さもなければ、その製品は競合他社に遅れをとる可能性があります。広く普及した接続やセンシングなどIoTテクノロジーの増加に伴って電子機器コンポーネントの密度の増加が、新たなサイズ、重量、エネルギーおよび温度の課題を招きます。たとえば、最新の補聴器はスマートフォンに接続されたデバイスであり、その機能は前世代のデバイスより大幅に増えています[5]。

これには、フレキシブルプリント回路基板、バッテリー、レシーバー、アンテナ、そして多くの場合、テレコイルが組み込まれています。フレキシブルプリント回路基板には、60個を超えるさまざまなコンポーネントおよび集積回路が含まれています。設計者は、限られたスペース内にこれらすべてのコンポーネントを収容するとともに、最高のパフォーマンスを引き出す必要があります。信頼性のある無線接続の提供に十分な電力を使用し、デバイスを低温に保ち、長いバッテリー寿命を確保し、デバイスの重量、サイズ、ほかの電子機器との干渉を最小限に抑える必要があります。

センシングと接続

スマートなコネクテッドプロダクトが「スマート」である理由は、それが置かれている環境を感知でき、ほかの電子機器と通信し、意思決定を可能にし、結果を出せることにあります。たとえば、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems、先進運転支援システム)を備えた最新の自動車には、多数のセンシングおよび通信技術が使用されています。今後4年間で、ADAS市場は、84億ドルから300億ドルに成長する可能性があります[6]。アダプティブ・クルーズ・コントロール機能は、バンパーに組み込まれたレーダーとレーザーを基にしたセンサーを活用して、特定の速度で安全車間距離を確保します。死角モニターおよび車線逸脱警報システムによって、ドライバーは安全に彼らの車線内に留まることができます。自動車は、道路の混雑状況を観察およびレポートし、GPSを装備したほかの車に通知し、それらの車のドライバーに警告し、代わりのルートを推奨できます。前世代の自動車エンジニアとは異なり、ADASを装備した最新の自動車を設計するエンジニアは、電子機器に大きな障害を発生させる可能性がある電磁干渉を抑制するためにさらに注意を払う必要があります。常にシグナルおよびパワーインテグリティを保つことが不可欠です。ドライバーはこれらのシステムに依存して意思決定するため、誤ったレポートは、良くない結果を招くことがあります。

信頼性と安全性

今後数年間で膨大な数のつながるモノが出現すると予想されているため、コネクテッドプロダクトのメリットに関する経済的な議論が、メンテナンスコストや市場への浸透不足より勝る場合、信頼性が不可欠です。自動車産業、航空宇宙産業、医療分野など多くの製品が、安全性が最重視される環境にあり、関連する信頼性と安全性の基準を満たすことが必要になります。このことが特によく当てはまるのは、IoTの統合メカトロニクス製品を運用するために必要な組み込み制御および表示ソフトウェア領域です。コネクテッドカーや航空機システムなどの最も複雑な製品では、数千万行からなる、安全性が最重視される組み込みソフトウェアコードの検証が、クリティカルパスの1つになります。

統合

製品が年々複雑になるのに従って、エンジニアは、設計プロセスを小さいピースに分解してきました。このコンポーネントレベルのボトムアップ設計手法では、コンポーネントレベルの徹底的な検証が可能ですが、コンポーネントを組み合わせてシステムを作成するときの遅い段階で大きな問題が持ち上がります。このシステムとサブシステムレベルの統合作業によって、過大設計、費用超過になることがよくあり、製品リリースの納期に間に合わせるために設計が貧弱になることすらあります。たとえば、無線フィットネスバンドのアンテナを統合する場合、アンテナエンジニアには、アンテナが予想通りに機能していないことに気づくことがあります。アンテナの組み込み後の性能は、リストバンドの曲率、バイオメトリックスセンサーアンテナの存在、さらにはリストバンドを留める金属留め金によって異なる場合があります。IoTデバイスの複雑さとそれらが動作する環境によって、さらには高度な安全性と信頼性が必要とされることによって、エンジニアにとって後半段階の統合の課題は大幅に増加しています。

耐久性

IoTの魅力の1つは、数兆個のセンサーおよび通信システムが設置され、24時間365日有益な情報を収集し、共有できることです。これらのシステムは、意図された環境だけでなく、正確な条件を事前に定義することが困難な極端で厳しい環境でも信頼性を保って動作することが期待されています。たとえば、石油およびガス業界におけるドリルビットの先端にあるセンシングシステムや、好ましくない電磁場環境で動作する無人軍事システムのセンシングシステムを考えてみましょう。facebookによる野心的なAquilaプロジェクトは、Boeing737と同じ翼幅を持つドローンを利用します。ドローンはレーザーを使用して、開発途上世界の遠隔地域にインターネットをつなげます。この太陽光発電のドローンの設計仕様には、1回で最大3か月飛行することが求められています。これらの設計シナリオは、物理テストレジームを使用して予測したり、調査することが非常に困難で、さらに、予想では、その製品はこれらのミッションクリティカルな環境で動作する必要があります。

そして、すべての製品がこれらの極端な条件に耐える必要はないものの、それらを耐久性についてテストする必要があります。スマートフォンやタブレットなど家庭用電化製品のユーザーは、彼らのデバイスが小さい水滴や衝撃に耐えることを期待しています。さまざまな動作環境におけるパフォーマンスの調査および確保が主要な技術課題の1つです。

ソリューションとしての統合されたシミュレーションプラットフォーム

非常に複雑なIoT対応製品に対してコスト効率のよいソリューションをすばやく開発するには、…

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