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熱回路網を用いたPM(Permanent Magnet)モータ熱設計のすすめ

CAEのあるものづくり |公開日:2020年09月
目次
- はじめに
- 熱回路とパラメータ
- Ansys Motor-CADを用いた熱回路の導出
- 熱回路の活用
- 最後に
はじめに
家電製品やハイブリッド電気自動車(HEV)パワートレインで多く使用されているPMモータを設計する上で性能を左右する重要な要素が熱の問題です。モータでは電気エネルギーを機械エネルギーに変換する際に生じた損失が熱となってモータの温度が上昇しますが、その大きな要因である銅損は巻き線の電気抵抗により失われるジュール損、鉄損は材料内部での誘導起電力で生じる渦電流による渦電流損と交流で鉄心が磁化されるときに生じるヒステリシス損に分けられます。ここでPMモータでは回転子に永久磁石を使用していますが、永久磁石は温度が上がるとその磁力が減ってしまうためにモータの特性に大きな影響を及ぼします。従って設計の初期の段階からPMモータの熱プロセスを考慮した対策を行うことが信頼性の確保と製品の早期リリースを行うための重要な課題になっています。モータの熱解析では3D形状を用いた電磁界解析と流体解析を組み合わせて熱流現象を解くことが広く行われていますが、モータ構造の複雑さや膨大なパラメータ量のために計算負荷が大きくて結果を得るまでに多大な時間を要してしまい、設計初期にこの手法を行おうとした場合ではモータの構造自体が定まっておらずに不確定な情報で長時間の解析を行わざるを得ません。設計初期に本当に必要なのは設計目標を条件としてそれらを満たす巻き線形状や磁石の配置検証、さらにハウジング形状や各構成要素の配置検討と合わせたモータの熱設計です。そこで効率的な熱設計の手法として挙げられるのが熱回路です。しかし、熱回路を構成するためにモータの熱伝導を評価する場合の課題として部品間や配線の繋ぎ目、コイルの巻かれている部分などは形状や部品間の配置状況の複雑さから物性値による伝熱特性の推定は非常に困難です。本資料では熱回路の基本的な考え方、モータのコンセプト設計に力を発揮するAnsys Motor-CADを用いた解析によりPMモータの各構成要素が相互接続された熱ネットワークとして熱回路を導出して熱設計への活用についてご提案致します。
熱回路とパラメータ
一見複雑そうな熱の現象をより単純に、より具体化して理解する方法がこの熱回路によるモデル化です。例えば、図1の円柱の物体で対面する2つの面に「温度差」が存在する場合には温度の高い方から低い方へ「熱」が伝搬しますが、この熱伝導の考え方は電気回路におけるオームの法則と同じ考え方で説明することが出来ます。
図1 熱の伝搬
このオーム法則の考え方で、熱伝導を電気回路の考え方で置き換えたものを熱回路と呼び、図1の熱の伝わりを熱回路に書き換えたものを図2(a)に示します。
図2 熱回路(a)と電気回路(b)
ここで熱抵抗とは熱の伝わりにくさを数値化したもので、図2(a)のように2点間の温度差がある場合にその温度差を2点間に流れる熱流で割ったものになります。例えば図1で同じ寸法の円柱でも熱を伝える物性値が異なれば伝搬する熱の大きさが変わりますが、この物性の違いによる熱の伝わりにくさを熱抵抗:Rとし、温度差をΔT、熱流をQとすれば、それぞれの関係は式(1)~(3)で表すことができます。
ここで図2(b)の電気回路でオームの法則から得られる抵抗、電位差、電流の関係式(4)~(6)と比較すると双方の考え方は同じように取り扱えることが分かります。
このように熱回路モデルは表1に示すように電気回路と熱回路を類似にとらえることが出来ます。
Ansys Motor-CADを用いた熱回路の導出
3.1 Ansys Motor-CAD
Ansys Motor-CADとはモータ設計専用の解析ツールで、以下の特長があります。
●テンプレートベースによるモデル作成を行います
●4つの解析ソルバーを利用してモータ設計を行います
●モータを構成する多くのパラメータをご検討いただけます
Ansys Motor-CADはテンプレートの構成要素に対して値を入力することで値が反映されたモデルが作成され、それぞれのソルバーを用いて解析が実行されます。
3.2 Ansys Motor-CADによる熱解析フロー
Ansys Motor-CADの熱解析フローを図3に示します。
図3 Ansys Motor-CAD熱解析フロー
それぞれのフロー内容をご説明いたします。
3.2.1 モデル作成
Ansys Motor-CADでは下の図4のようにテンプレートGUIに対して構成要素のパラメータ入力を行うことでモデル作成を行います。その際、入力するパラメータとして主なものはロータ径・ステータ径やシャフト径、モータ長さやスロット数等のモータ構成要素、さらにPMモータの場合は永久磁石を表面に設定するか埋め込み型にするかを選択し、さらに巻き線(コイル)に対しても巻き線径やターン数や巻き線の種類からリッツ線や単線などを選択することができます。
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